フロンティア古典教室

項王の最期(3)原文・書き下し文・現代語訳

   

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

 史記『項王の最期』まとめ

 

項王自()ルヲスルコトヲ、謂ヒテハク

(こう)(おう)(みずか)(だっ)することを()ざるを(はか)り、()()()ひて()はく、

 

項王は脱出することはできないと判断し、自軍の騎兵に向かって言うことには、

 

 

「吾起コシテヨリルマデ、八歳ナリ矣。

(われ)(へい)()こしてより(いま)(いた)るまで、(はっ)(さい)なり。

※矣=置き字(断定・強調)

「私が兵を挙げてから今に至るまで、八年になる。

 

 

ヅカラ七十余戦、所タル、所(いま/ず)敗北、遂セリ天下

()づから(しち)(じゅう)()(せん)し、()たる(ところ)(もの)(やぶ)り、()(ところ)(もの)(ふく)し、(いま)(かつ)(はい)(ぼく)せず、(つい)(てん)()()(ゆう)せり。

 

自らも七十余り戦い、当たる敵は破り、攻撃した相手は服従し、いまだかつて敗北したことはなく、そうして遂には天下を制覇した。

 

 

レドモ今卒シム於此。此()ボスニシテ、非ザル()(なり)

(しか)れども(いま)(つい)(ここ)(くる)しむ。()(てん)(われ)(ほろ)ぼすにして、(たたか)ひの(つみ)(あら)ざるなり。

※於=置き字(場所)

しかし今、最終的にはここで苦戦している。これは天が私を滅ぼすのであって、戦い方に非があるのではない。



今日固ヨリ

(こん)(にち)(もと)より()(けっ)す。

 

今日は初めから死を覚悟している。

 

 

ハクハ諸君快戦、必タビタン

(ねが)はくは(しょ)(くん)(ため)(かい)(せん)し、(かなら)()たび(これ)()たん。

 

願わくば諸君のために快く戰い、必ず三回敵に勝ちたい。

 

 

諸君ヤシミヲ、斬()メン諸君ヲシテボスニシテ、非ザルコトヲ()。」

(しょ)(くん)(ため)(かこ)みを(つい)やし、(しょう)()(はた)()り、(しょ)(くん)をして(てん)(われ)(ほろ)ぼすにして、(たたか)ひの(つみ)(あら)ざることを()らしめん。」と。

※令=使役「令ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

諸君のために敵の囲みを、敵将を斬り、旗をなぎ倒し、諸君に天が私を滅ぼすのであって、戦い方に非があるのではないことを示そう。」

 

 

カチテ、以四隊、四カハシム。漢軍囲ムコト数重ナリ

(すなわ)()()()かちて、(もっ)()(たい)()し、(よも)()かはしむ。(かん)(ぐん)(これ)(かこ)むこと(すう)(ちょう)なり。

※使役=「~(セ)シム。」→「~させる。」 文脈から判断して使役の意味でとらえることがある。

そこで自軍の騎兵を分けて、四つの隊とし、四方に向かわせた。漢軍はこれを何重にも取り囲んだ。

 

 

項王謂ヒテハク、「吾為一将

(こう)(おう)()()()ひて()はく、「(われ)(こう)(ため)()(いっ)(しょう)()り、

 

項王が自軍の騎兵に向かって言うことには、「私は君たちのために、あの敵将を一人討ち取り、

 

 

()四面ヲシテ、期スト山東ランコトヲ三処。」

()(めん)()をして()(くだ)らしめ、(さん)(とう)(さん)(しょ)()らんことを()す。」と。

※令=使役「令ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

四方に向かっている騎兵に命じて馬を走らせて下らせ、山の東側に三か所に分かれて集まることを約束しよう。

 

 

イテ、項王大イニビテ。漢軍皆披靡。遂一将

(ここ)()いて、(こう)(おう)(おお)いに()びて()(くだ)る。(かん)(ぐん)(みな)()()す。(つい)(かん)(いっ)(しょう)()る。

※「於イテ」=そこで。こうして。

こうして、項王は大声で叫んで馬を走らせて下った。漢軍は皆(その気迫に)なびいた。とうとう項王は漢の敵将の一人を斬った。

 

 

時、赤泉侯為騎将、追項王。項王瞋ラシテ而叱

()(とき)(せき)(せん)(こう)()(しょう)()り、(こう)(おう)()ふ。(こう)(おう)()(いか)らして(これ)(しっ)す。

※而=置き字(順接・逆接)

この時、赤泉侯は(漢軍の)騎将となっており、項王を追いかけた。項王は目を大きく見ひらいて赤泉侯をどなりつけた。



赤泉侯、人馬倶、辟易スルコト数里ナリ()シテ三処

(せき)(せん)(こう)(じん)()(とも)(おどろ)き、(へき)(えき)すること(すう)()なり。()()(かい)して(さん)(しょ)()る。

 

赤泉侯は、人と馬も共に驚き、数里も避け退いた。(項王は)自軍の騎兵と合流して三か所に分かれた。

 

 

漢軍()項王一レ。乃カチテ、復

(かん)(ぐん)(こう)(おう)()(ところ)()らず。(すなわ)(ぐん)()かちて(さん)()し、()(これ)(かこ)む。

 

(そのため、)漢軍は項王の居場所が分からない。そこで軍を三つに分け、再び項王の軍を取り囲んだ。

 

 

項王乃、復一都尉、殺数十百人

(こう)(おう)(すなわ)()せ、()(かん)(いち)()()()り、(すう)(じゅう)(ひゃく)(にん)(ころ)す。

 

そこで項王は馬を走らせ、再び漢の一都尉を斬り、数十人から百人ほどを殺した

 

 

ムルニ、亡ヘル両騎(のみ)

()()()(あつ)むるに、()(りょう)()(うしな)へるのみ。

※「~ 耳」=限定「~ のみ」「~ だけだ」

(項王は)再び自軍の騎兵を集めたところ、自軍の二騎を失っただけであった。

 

 

ヒテハク、「何。」

(すなわ)()()()いて()はく、「何如(いかん)。」と。

※何如=疑問・反語、「何如(いかん)」、「~はどうであるか。

そこで(項王が)自分の騎兵に向かって言うことには、「(私の戦いぶりは)どうであるか。」と。

 

 

騎皆伏シテハク、「(ごと)シト大王。」

()(みな)()して()はく、「(だい)(おう)(げん)のごとし。」と。

 

騎兵たちが皆敬服して言うことには、「大王のお言葉の通りです。」と。

 

 

続きはこちら項王の最期(4)『我何面目見之』原文・書き下し文・現代語訳「是に於いて項王乃ち東して烏江を渡らんと欲す。~」

 

 史記『項王の最期』まとめ

 

 

 

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