青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
星墜チ、木鳴ル。
星隊ち、木鳴る。
星が落ちたり、木が音を立てたりすることがある。
国人皆恐レテ曰ハク、「是レ何ゾ也ト。」
国人皆恐れて曰はく、「是れ何ぞや。」と。
国中の人々がみな恐れて言うことには、「これはどうしたことなのか。」と。
曰ハク、「無レキ何モ也。
曰はく、「何も無きなり。
(荀子が)言うことには、「何でもないことだ。
是レ天地之変、陰陽之化、物之罕ニ至ル者也。
是れ天地の変、陰陽の化、物の罕に至る者なり。
これは天地の変化、陰陽の交流によって、まれに起こる現象なのである。
怪レシムハ之ヲ可ナルモ也、而畏レルルハ之ヲ非也。
之を怪しむは可なるも、之を畏るるは非なり。
※而=置き字(順接・逆接)
これを不思議に思うのはよいが、これを恐れるのは間違っている。
夫レ日月之有レリ蝕、風雨之不レ時ナラ、怪星之党リニ見ル、是レ無三シ世トシテ而不二ルハ常ニ有一レラ之レ。
夫れ日月の蝕有り、風雨の時ならず、怪星の党りに見る、是れ世として常に之れ有らざるは無し。
※「無レシ不二ル(ハ) ~一(セ)」=二重否定(強い肯定)、「 ~(せ)ざる(は)無し」、「~しないことはない」
そもそも日食や月食が起こり、天候が不順であり、見慣れない星がしきりに現れるのは、いつの世にも常にあることである。
上明ニシテ而政平ラカナレバ、則チ是レ雖二モ並レビテ世ニ起一コルト、無レキ傷ツクル也。
上明にして政平らかなれば、則ち是れ世に並びて起こると雖も、傷つくる無きなり。
君主が賢明で政治が安定していれば、これらの現象が世に連続して起こったとしても、害を与えることはない。
上闇ニシテ而政険ナレバ、則チ是レ雖レモ無二シト一ノ至ル者一、無レキ益也。
上闇にして政険なれば、則ち是れ一の至る者無しと雖も、益無きなり。
君主が暗愚で政治が危うい状態であれば、これらの現象が一度も起らなかったとしても、利益になることはない。
夫レ星之隊チ、木之鳴ルハ、是レ天地之変、陰陽之化、物之罕ニ至ル者也。
夫れ星の隊ち、木の鳴るは、是れ天地の変、陰陽の化、物の罕に至る者なり。
そもそも星が落ちたり、木が音を立てたりするのは、天地の変化、陰陽の交流によって、まれに起こる現象なのである。
怪レシムハ之ヲ可ナルモ也、而畏レルルハ之ヲ非也ト。」
之を怪しむは可なるも、之を畏るるは非なり。」と。
これを不思議に思うのはよいが、これを恐れるのは間違っているのだ。」と。