青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
沛公旦日従二ヘ百余騎一ヲ、来タリテ見二エントシ項王一ニ、至二ル鴻門一二。
沛公旦日百余騎を従へ、来たりて項王に見えんとし、鴻門に至る。
沛公は翌朝、百余騎を従え、やって来て項王にお目にかかろうとして、鴻門に到着した
謝シテ曰ハク、「臣与二将軍一戮レセテ力ヲ而攻レム秦ヲ。
謝して曰はく、「臣将軍と力を戮せて秦を攻む。
※而=置き字(順接・逆接)
(沛公が項王に)謝罪して言うことには、「私は将軍(=項王)と力を合わせて秦を攻めました。
将軍ハ戦二ヒ河北一二、臣ハ戦二フ河南一二。
将軍は河北に戦ひ、臣は河南に戦ふ。
将軍は河北で戦い、臣は河南で戦いました。
然レドモ不二リキ自ラ意一ハ、
然れども自ら意はざりき、
しかしながら自分では思いもしなかったことです、
能ク先ニ入レリテ関ニ破レリ秦ヲ、得三ントハ復タ見二ユルヲ将軍二於此一二。
能く先に関に入りて秦を破り、復た将軍に此に見ゆるを得んとは。
※能ク= ~できる ※於=置き字(場所)
自分が先に関中に入って秦を破り、再び将軍にここでお目にかかる事ができようとは。
今-者有二リ小人之言一、令二ムト将軍ヲシテ与レ臣有一レラ郤。」
今者小人の言有り、将軍をして臣と郤有らしむ。」と。
※令=使役「令二ムAヲシテB一(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」
近ごろ、つまらない人間が言っていることがありまして、(それは)将軍に私(=沛公)との仲たがいをさせようとしているのです。」と。
項王曰ハク、「此レ沛公ノ左司馬曹無傷言レヘリ之ヲ。
項王曰はく、「此れ沛公の左司馬曹無傷之を言へり。
項王が言うことには、「それは沛公の左司馬曹無傷が言ったことである。
不レンバ然ラ、籍何ヲ以テカ至レラント此二。」
然らずんば、籍何を以てか此に至らん。」と。
※「不レンバ然ラ」=「然らずんば」、「そうしなければ・そうでなければ」
※「何ヲ以テ(カ) ~ (セ)ン(ヤ)」=反語、「何を以て(か) ~(せ)ん(や)」、「どうして ~(する)だろうか。(いや、~ない)」
そうでなければ、私はどうしてこのようなこと(=沛公を殺そうとしたこと)になろうか。」と。
続きはこちら鴻門之会(史記)(3)原文・書き下し文・現代語訳「項王即日因りて沛公を留めて~」