漢文

鴻門之会(史記)(1)原文・書き下し文・現代語訳

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

 史記『鴻門之会』まとめ

 

楚軍行略-、至函谷関

()(ぐん)(ゆくゆく)(しん)()(りゃく)(てい)し、(かん)(こく)(かん)(いた)る。

 

楚軍は進みながら秦の地を攻略し平定して、函谷関に着いた。

 

 

兵守()ルヲ

(へい)()(かん)(まも)り、()るを()ず。

※「不 ~(スル)ヲ」=不可能、「 ~(する)を得ず」、「(機会がなくて) ~できない。」

(しかし、そこには沛公の)兵がいて関を守っていて、入ることができなかった。

 

 

又聞沛公已ルト咸陽、項羽大イニ使()当陽君等ヲシテ一レ

(また)(はい)(こう)(すで)(かん)(よう)(やぶ)ると()き、(こう)()(おお)いに(いか)り、(とう)(よう)(くん)()をして(かん)()たしむ。

※使=使役「使ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

また、沛公がすでに咸陽を破ったと聞いて、項羽は大いに怒り、当陽君らに関を攻撃させた。

 

 

項羽遂リテ、至于戯西

(こう)()(つい)()りて、()西(せい)(いた)る。

※于=置き字(場所)

項羽はそのまま(関に)入って、戯西にまで行った。

 

 

沛公軍覇上、未()項羽相見ユルヲ

(はい)(こう)()(じょう)(ぐん)し、(いま)(こう)()(あい)(まみ)ゆるを()ず。

※「(いま/ざ) ~ (セ)」=再読文字、「未だ ~(せ)ず」、「まだ ~(し)ない」

※「不 ~(スル)ヲ」=不可能、「 ~(する)を得ず」、「(機会がなくて) ~できない。」

沛公は覇水のほとりに陣し、まだ項羽と会見することができないでいた。

 

 

沛公左司馬曹無傷、使()メテヲシテ於項羽ハク

(はい)(こう)()()()(そう)()(しょう)(ひと)をして(こう)()()はしめて()はく、

※使=使役「使ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

沛公の軍政官である曹無傷が、人を遣わして項羽に対して言わせたことには、

 

 

「沛公欲タラント関中使()子嬰ヲシテ一レ相、珍宝尽スト。」

(はい)(こう)(かん)(ちゅう)(おう)たらんと(ほっ)し、()(えい)をして(しょう)()らしめ、(ちん)(ぽう)(ことごと)(これ)(ゆう)す。」と。

※使=使役「使ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

「沛公は関中の王になりたいと思っており、子嬰(=秦の始皇帝の孫)を丞相にして、(秦の)すばらしい宝をすべて自分のものとしてしまった。」と。



項羽大イニリテハク、「旦日饗セヨ士卒。為サント-スルコトヲ沛公。」

(こう)()(おお)いに(いか)りて()はく、「(たん)(じつ)()(そつ)(きょう)せよ。(はい)(こう)(ぐん)(げき)()することを()さん。」と。

 

項羽が大いに怒って言うことには、「明朝、(士気を上げるために)兵士たちにごちそうしてもてなせ。沛公の軍を討ち破ってしまおう。」と。

 

 

タリ、項羽四十万、在新豊鴻門

()(とき)()たり、(こう)()(へい)()(じゅう)(まん)(しん)(ぽう)(こう)(もん)()り。

 

この時、項羽の兵は四十万で、新豊の鴻門に陣していた。

 

 

沛公十万、在覇上

(はい)(こう)(へい)(じゅう)(まん)()(じょう)()り。

 

沛公の兵は十万で、覇水のほとりに陣していた。

 

 

范増説キテ項羽ハク、「沛公居リシ山東時、貪於財貨、好メリ美姫

(はん)(ぞう)(こう)()()きて()はく、「(はい)(こう)(さん)(とう)()りし(とき)(ざい)()(むさぼ)り、()()(この)めり。

※於=置き字(対象・目的)

范増が項羽に説いて言うことには、「沛公は山東にいた時、財貨を貧り、美人を好んでいた。

 

 

今入リテ、財物無、婦女無スル。此()

(いま)(かん)()りて、(ざい)(ぶつ)()(ところ)()く、()(じょ)(こう)する(ところ)()し。()()(こころざし)(しょう)()らず。

 

今、函谷関に入って、財宝を奪い取ることもなく、婦人を寵愛することもない。これは沛公の志が小さなものではないということです。

 

 

()ムルニヲシテ、皆為竜虎、成五采

(われ)(ひと)をして()()(のぞ)ましむるに、(みな)(りゅう)()()し、()(さい)()す。

※令=使役「令ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

私が人をやって沛公の体から立ちのぼる気を遠くから見て来させたところ、みな竜や虎の形となり、五色の模様をしていました。

 

 

天子(なり)。急、勿カレトスルコト。」

()(てん)()()なり。(いそ)()ち、(しっ)すること()かれ。」と。

※「勿カレスル(コト)」=禁止、「Aしてはならない」

これは天子の気です。急いで攻撃を仕掛け、取り逃がすことのないようにしなければなりません。」と。

 

 

続きはこちら鴻門之会(史記)(2)原文・書き下し文・現代語訳「沛公旦日百余騎を従へ、~」

 

史記『鴻門之会』まとめ

 

 

 

-漢文

© 2024 フロンティア古典教室 Powered by AFFINGER5