フロンティア古典教室

西鶴諸国ばなし『大晦日は合はぬ算用』(1)解説・品詞分解

      2019/02/21

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

①武士道とは、お金を失くしても友人を疑わないこと。

原文・現代語訳のみはこちら西鶴諸国ばなし『大晦日は合はぬ算用』(1)(2)現代語訳

 

 

(かや)・かち(くり)・神の松・やま草の売り声もせはしく、(もち)つく宿の隣に、(すす)をも払は、二十八日まで(ひげ)もそら(しゆ)(さや)の反りを返して、

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形。もう一つの「ず」も同じ。

 

(かや)、かち栗、神の松、やま草の売り声も(せわ)しく、餅をつく家の隣で、煤払い(などの大掃除)もせず、二十八日まで(ひげ)もそらず、朱塗りの鞘の刀の反りを返して、

 

 

「春まで待てと言ふに、是非(ぜひ)に待た 。」と、米屋の若い者をにらみつけて、(すぐ)なる今の世を、横に渡る男あり。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

か=疑問の係助詞

 

「(支払いは)春まで待てと言うのに、どうして待たないのか。」と、(代金を取り立てにきた)米屋の若い者をにらみつけて、まっすぐな(正しい)政治が行われている今の世を、世間に迷惑をかけて暮らす男がいる。

※対句:「直なる」⇔「横にわたる」

 

 

名は(はら)()(ない)(すけ)と申して、かくれもなき浪人。

 

名は(はら)()(ない)(すけ)と申して、よく知られた浪人(である)。

 

 

広き江戸にさへ住みかね、この四、五年、品川の(ふじ)(ちゃ)()のあたりに棚借りて、(あした)(たきぎ)にことを欠き、夕べの(あぶら)()をも見

 

さへ=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ)。

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

広い江戸にさえ住めなくなり、この四、五年は、品川の藤茶屋の辺りに借家を借りて、朝の(炊事用の)(たきぎ)にも不自由し、夜の灯火の油もない。

 

 

これはかなしき年の暮れに、女房の兄、(なから)()(せい)(あん)と申して、神田の明神の横町(よこまち)(くす)()あり。

 

こんなかなしい年の暮れに、(原田内助には)女房の兄で、(なから)()(せい)(あん)と申して、神田明神の横町に(住んでいる)医者がいた。

 

このもとへ、無心の状を遣はし けるに、たびたび迷惑ながら、見捨てがたく、

 

遣はし=サ行四段動詞「遣はす(つかはす)」の連用形、「遣る」・「与ふ」・「贈る」の尊敬語。派遣する、使いを送る。(物を)お与えになる。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

ながら=接続助詞、次の③の意味で使われている。

①そのままの状態「~のままで」例:「昔ながら」昔のままで

②並行「~しながら・~しつつ」例:「歩きながら」

③逆接「~でも・~けれども」 例:「敵ながら素晴らしい」

④そのまま全部「~中・~全部」例:「一年ながら」一年中

 

(原田内助は)この(義理の兄である医者の半井清庵)もとへ、金品をねだる手紙を送ったところ、(半井清庵にとっては)たびたびのことで迷惑ではあるけれども、見捨てにくく、

 

 

(きん)()十両包みて、上書きに、「貧病の妙薬、金用丸(きんようがん)よろづによし。」と記して、(ない)()の方へおくら ける

 

よろづ(万)=名詞、すべてのこと、あらゆること。

 

内儀(ないぎ)=名詞、他人の妻の敬称

 

れ=尊敬の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味がある。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

金子十両を包んで、上書きに、「貧乏という病に効く妙薬、金用丸、あらゆる病気に効く。」と記して、(原田内助の)妻のところへ送った。

 

 

内助喜び、日ごろ別して語る浪人仲間へ、「酒一つ盛ら。」と、呼びに遣はし

 

ん=勧誘の助動詞「む」の終止形が音便化したもの、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

遣はし=サ行四段動詞「遣はす(つかはす)」の連用形、「遣る」・「与ふ」・「贈る」の尊敬語。派遣する、使いを送る。(物を)お与えになる。

 

内助は喜び、ふだん特に親しくしている浪人仲間へ、「酒をちょっと盛ろう。」と、呼びにやり、

 

 

(さいわ)ひ雪の夜のおもしろさ、今までは崩れ次第の(しば)の戸を開けて、「さあ、これへ。」と言ふ。

 

幸い雪の夜で(おもむき)(もあり)、今までは崩れたままになっていた柴の戸を開けて、「さあ、こちらに。」と言う。

 

 

以上七人の客、いづれも(かみ)()(そで)をつらね、時なら (ひと)()()(おり)、どこやら昔を忘れ

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

全員で七人の客は、いずれも紙子(=粗末な着物)を着て、季節外れの一重羽織(であるが)、どことなく昔(のたしなみ)を忘れていない。

 

 

常の礼儀すぎてから、亭主まかり出でて、「私、仕合はせの(こう)(りょく)()けて、思ひままの正月をつかまつる。」と申せ 

 

まかり出で=ダ行下二段動詞「まかり出づ」の連用形

罷る(まかる)=ラ行四段動詞、謙譲語。退出する。参る。

 

合力(こうりょく)=名詞、金銭などの援助

 

つかまつる=ラ行四段動詞「仕奉る(つかまつる)」の終止形、(謙譲語)お仕えする、~し申し上げる、いたす。

 

申せ=サ行四段動詞「申す」の已然形、「言ふ」の謙譲語

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

型どおりのあいさつが済んでから、亭主(=原田内助)が参上して、「私は、運の良い援助を受けて、思い通りの正月をいたします。」と申すと、

 

 

おのおの、「それは、あやかりもの。」と言ふ。

 

それぞれ、「それは(良いことだ)、あやかりたいものだ。」と言う。

 

 

「それにつき、上書きに一作あり。」と、くだんの小判を出だせ

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

(原田内助が、)「それについて、この上書きに(おもしろい)一作があります。」と(言って)、例の小判を出すと、

 

 

さても軽口なる御事。」と、見て回せ、杯も数かさなりて、

 

さても=感動詞、なんともまあ、それにしてもまあ。副詞、そういう状態でも、それにしても、そのままでも、そうであっても。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

(客たちは、)「なんともまあ、軽妙な事。」と、見て回すうちに、杯の数も重なって、

 

「よい年忘れ、ことに長座。」と、千秋楽を(うた)ひ出し、燗鍋(かんなべ)塩辛壺(しおからつぼ)を手ぐりにしてあげさせ

 

させ=使役の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

「よい年忘れで、ことさらに長居(をしてしまった)。」と、千秋楽の句をうたい出し、燗鍋(かんなべ)(しお)(から)(つぼ)を手渡しして片付けさせ、

※千秋楽=謡曲「高砂」の終わりの部分。宴会などの終わりのあいさつとしてうたわれたりする。

 

 

「小判もまづ、御しまひ候へ。」と集むるに、十両ありうち、一両足ら

 

候へ=補助動詞ハ行四段「候ふ(さうらふ)」の命令形、丁寧語

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

「小判もまず、おしまいください。」と(言って、)集めたところ、十両あったうち、一両が足りない。

 

 

()(ちゅう)()(なお)り、(そで)などふるひ、前後を見れども、いよいよないに(きわ)まりける

 

ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

その場の皆座り直し、袖などをふるい、前後を見るけれども、いよいよ無いという結論になった。

 

 

続きはこちら西鶴諸国ばなし『大晦日は合はぬ算用』(2)解説・品詞分解

 

西鶴諸国ばなし『大晦日は合はぬ算用』まとめ

 

 

 

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