古文

源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(1)(2)

「黒=原文」・「青=現代語訳

 解説・品詞分解はこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(1)

 

かくて、二月の十余日に、朱雀院の姫宮、六条院へ渡り給ふ。

 

こうして、二月の十日過ぎに、朱雀院の姫宮(=女三の宮)、六条院へお移りになる。

 

 

この院にも、御心まうけ世の常ならず。

 

この院(=光源氏)におかれても、ご準備は並ひととおりではない。

 

 

若菜参りし西の放ち出でに御帳立てて、そなたの一、二の対、(わた)殿(どの)かけて、女房の局々まで、こまかにしつらひ磨かせ給へり。

 

(光源氏が)若菜を召し上がった西の放ち出でに御帳台を立てて、そちらの一、二の対、渡殿にかけて、女房の各部屋に至るまで、念入りに飾りつけて磨かせなさった。

※放ち出で=名詞、几帳や障子などで仕切って応接用にした部屋

 

 

内裏に参り給ふ人の作法をまねびて、かの院よりも御調度など運ばる。

 

宮中に入内なさる人(=女三の宮)の儀式にならって、あちらの院(=朱雀院)からも御調度などが運ばれる。

※調度=名詞、身の回りの道具、調度品

 

 

渡り給ふ儀式、言へばさらなり。

 

お移りになる儀式(の盛大さ)は、今さら言うまでもない。

 

 

御送りに、上達部などあまた参り給ふ。

 

お見送りに、上達部などが大勢参上なさる。

 

 

かの家司望み給ひし大納言も、安からず思ひながら候ひ給ふ。

 

あの家司をお望みになった大納言も、心中穏やかでなく思いながらも伺候なさる。

 

 

御車寄せたる所に、院渡り給ひて、おろし奉り給ふなども、例には違ひたることどもなり。

 

お車を寄せている所に、院(=光源氏)がいらっしゃって、お降ろし申し上げなさることなども、通例とは違っていることなどである。

 

 

ただ人におはすれば、よろづのこと限りありて、内裏参りにも似ず、

 

(光源氏は)臣下でいらっしゃるので、あらゆることに制限があって、入内の儀式にも似ず、

 

 

婿の大君といはむにもこと違ひて、めづらしき御仲のあはひどもになむ。

 

婿の大君というようなこととも事情が違って、珍しいご関係の間柄である。

 



(2)

 

三日がほど、かの院よりも、主の院方よりも、いかめしくめづらしきみやびを尽くし給ふ。

 

三日の間は、あちらの院(=朱雀院)からも、主人の院(=光源氏)からも、厳かで珍しいほどの優雅をお尽くしになる。

 

 

対の上も事にふれて、ただにも思されぬ世のありさまなり。

 

対の上(=紫の上)も何かにつけて、普通にもお思いになれない夫婦仲の様子である。

 

 

げに、かかるにつけて、こよなく人に劣り消たるることもあるまじけれど、

 

実に、このようなこと(=光源氏と女三の宮との結婚)につけて、この上なく人(=女三の宮)にひけを取り圧倒されることもあるまいけれど、

 

 

また並ぶ人なくならひ給ひて、はなやかに生ひ先遠く、あなづりにくきけはひにてうつろひ給へるに、

 

また並ぶ人のいない状態に慣れていらっしゃっていたところに、(女三の宮が)華やかで年も若く、侮りがたい様子で移っていらっしゃったので、

※並ぶ人なくならひ給ひて=光源氏の寵愛を受ける競争相手が紫の上にはいなかった。光源氏から最も寵愛を受けていたのは紫の上だったということ。

 

 

なまはしたなく思さるれど、つれなくのみもてなして、

 

(紫の上は)何となくきまりが悪くお思いにならずにはいられないけれど、ただ平然とふるまって、

 

 

御渡りのほども、もろ心にはかなきこともし出で給ひて、いとらうたげなる御ありさまを、

 

お移りになる時も、(光源氏と)心を合わせてちょっとした事もしなさって、とてもかわいらしい(紫の上の)ご様子を、

 

 

いとどありがたしと思ひ聞こえ給ふ。

 

ますますめったにない(すばらしい人だ)と(光源氏は)思い申し上げなさる。

 

 

姫宮は、げにまだいと小さく、片なりにおはするうちにも、

 

姫宮は、実にまだとても小さく、未熟でいらっしゃる中でも、

 

 

いといはけなき気色して、ひたみちに若び給へり。

 

たいそう幼稚な様子をしていて、ひたすら幼くていらっしゃっる。

 

 

 続きはこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(3)(4)

 

源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(1)

 

源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(2)

 

 源氏物語『女三の宮の降嫁』まとめ

 

 

 

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