古文

枕草子『すさまじきもの』解説・品詞分解(2)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

枕草子『すさまじきもの』まとめ

 

(げん)()の、物の()調(ちょう)ずとて、いみじう したり顔に、()()()()など持た

 

調ず=サ変動詞「調ず(ちょうず)」の終止形、(悪霊などを)追い払う、調伏する。作る。料理する。

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

したり顔=名詞、得意顔、自慢げな顔つき。

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

修験者が物の怪を調伏すると言って、たいそう得意顔で独鈷や数珠などを(よりましに)持たせ、

※よりまし=物の怪などが取りつくためのよりしろになる役のこと。ここでは護法童子のこと。

 

 

(せみ)の声しぼり出だして読み() たれ 

 

居=ワ行上一段動詞「居る(ゐる)」の連用形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

たれ=存続の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

蝉のような声をしぼり出して(お経を)読んでいたが、

 

 

いささか さりげもなく、()(ほう)もつか 

 

いささか=副詞、わずか、ほんの少し

 

然りげ=名詞、そのような様子、そんな気配。

去りげ=名詞、退散しそうな気配。

 

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

少しも(物の怪が)退散しそうな気配もなく、護法童子も(よりましに)つかないので、

 

 

集り居念じ たるに、男も女もあやしと思ふに、時のかはるまで読み困じて、

 

念じ=サ変動詞「念ず(ねんず)」の連用形、祈願する、お祈りする。我慢する、耐え忍ぶ。

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

あやし=シク活用の形容詞「あやし」の終止形、不思議だ、変だ。身分が低い、卑しい。見苦しい、みすぼらしい。

 

困じ=サ変動詞「困ず(こうず)」の連用形、苦しむ。疲れる。

 

(家の者たちが)集まり座ってお祈りしていたが、男も女も妙だなと思っていると、(修験者は)時が変わるまで読み疲れて、

 

 

さらにつか。立ち」とて、数珠取り返して、

 

さらに=副詞、下に打消語を伴って、「まったく~ない、決して~ない」。ここでは「ず」が打消語

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

ね=完了・強意の助動詞「ぬ」の命令形、接続は連用形。命令形の時には「強意」の意味で用いられることがある。ここは微妙なところ。

 

「まったく(護法童子がよりましに)つかない。立ちなさい。」と言って、数珠を取り返して、



 

あな、いと(げん)なし」とうち言ひて、(ぬか)より(かみ)ざまにさくり上げ、あくびおのれより うちして、寄り臥しぬる

 

あな=感動詞、ああ、あら、まあ

 

験(げん)=名詞、効き目、効能。霊験、ご利益。目印。

 

や=詠嘆の間投助詞、詠嘆の意味の他に呼びかけや語調を整える意味などがある。

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

うちし=サ変動詞「うちす」の連用形

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

「ああ、まったく効き目がない」とつぶやいて、額から上の方に髪をかき上げ、(こともあろうに)あくびを自分から先にして、寄りかかって寝てしまったこと(は興ざめだ)。

 

 

いみじう ねぶたしと思ふに、いと しも おぼえ 人の、

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

ねぶたし=ク活用の形容詞「眠たし」の終止形

 

いと=副詞、下に打消語を伴って「それほど( ~ない)」、「たいして( ~ない)」。たいそう、とても、たいへん。

 

しも=強意の副助詞。訳す際にはあまり気にしなくてもよい。

 

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の未然形、自然に思われる、感じる、思われる。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

ひどく眠たいと思っている時に、それほどにも思っていない人が、

 

 

押し起こして、せめてもの言ふこそいみじう すさまじけれ

 

せめて=副詞、強いて、無理に。痛切に、切実に、非常に。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

すさまじけれ=シク活用の形容詞「すさまじ」の已然形、その場にそぐわず面白くない、興ざめだ。もの寂しい、寒々とした感じだ。

 

揺り起こして、無理矢理に話しかけてくるのは、非常に興ざめだ。

 

 

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枕草子『すさまじきもの』まとめ

 

 

 

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