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徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』問題の解答(文法・読解・現代語訳)

青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等

問題はこちら徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』問題(文法・読解・現代語訳)

 

筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなるもののありけるが、土大根をよろづにいみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひけること、年久しくなりぬ。

 

ある時、館の内に人もなかりける隙をはかりて、敵襲い来たりて囲み攻めけるに、館の内に兵二人出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆追ひ返してげり

 

いと不思議におぼえて、「日ごろここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞ。」と問ひければ、「年ごろ頼みて、朝な朝な召しつる土大根らに候ふ。」と言ひて失せにけり。深く信を致しぬれば、かかる徳もありけるにこそ

 

 

問題1.③問ひ、④頼み、⑤召し、⑥失せ、の主語を次の記号の中からそれぞれ答えよ。

ア.なにがしの押領使  イ.兵二人

 

ア.なにがしの押領使

ア.なにがしの押領使

頼み=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の連用形。頼みに思う、あてにする。

※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。

ア.なにがしの押領使

召し=サ行四段動詞「召す」の連用形、尊敬語、召し上がる、お食べになる。呼び寄せる。

イ.兵二人

 

 

問題2.「①皆追ひ返してげり」、「②日ごろここにものし給ふとも見ぬ人々」、の現代語訳を答えよ。

 

皆追い返してしまった

てげり=下記の「て」と「けり」が合わさったもので、強調して「てんげり」、「てげり」などと言うことがある。

て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形

げり=過去の助動詞「けり」の終止形が濁ったもの、接続は連用形

 

普段はここにいらっしゃるとも見えない方々

日ごろ=名詞、ふだん。数日間。

 

ものし=サ変動詞「物す(ものす)」の連用形、代動詞、「~する」、ある、いる、行く、来る、生まれる、などいろいろな動詞の代わりに使う。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語

 

見=マ行上一段活用「見る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

 

問題3.「⑦深く信を致しぬれば、かかる徳もありけるにこそ」、において、

ⓐ係助詞「こそ」の用法として適切なものを次のア~ウの中から選びなさい。『ア.係り結び  イ.係り結びの消滅(流れ)  ウ.係り結びの省略』

ⓑ係助詞「こそ」について、係り結びが起きた際の結びの活用形は何になるか答えよ。

「深く信を致しぬれば、かかる徳もありけるにこそ」の現代語訳を答えよ。

 

ウ.係り結びの省略

已然形

深く信じきっていたので、このようなご利益もあったのだろう

ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう

 

徳=名詞、ご利益、恵み、功徳

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となるはずだが、ここでは省略されている。「あら(ラ変・未然形)め(推量の助動詞・已然形)」、「あり(ラ変・連用形)けめ(過去推量の助動詞・已然形)」などが省略されていると考えられる。係り結びの省略。

※今回のように係助詞の前に「に(断定の助動詞)」がついている時は「あり(ラ変動詞)」などが省略されている。場合によって敬語になったり、助動詞がついたりする。

「にや・にか」だと、「ある・侍る(「あり」の丁寧語)・あらむ・ありけむ」など

「にこそ」だと、「あれ・侍れ・あらめ・ありけめ」など

 

 

問題4.⑦の「深く信を致す」、とは、何をどう信じて具体的にどういう行動をとったことを指し示しているのか答えよ。

 

答え:大根を、あらゆることによく効く薬だと信じて、毎朝二つずつ焼いて食べることを、長年にわたって続けたこと。

 

 

問題5.⑦の「かかる徳」、とはこの話において何を指しているのか具体的に答えよ。

 

答え:敵が押領使の屋敷を襲ってきた時に、大根の精が現れて撃退し、押領使を救ったこと。

 

 

徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』解説・品詞分解

 

徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』まとめ

 

 

 

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