古文

源氏物語『葵』品詞分解のみ(2)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

源氏物語『葵』『葵(葵の上と物の怪)』まとめ

 

 

あな心憂=「ああ、つらい。」

あな+形容詞の語幹=感動文「ああ、~」

あな=感動詞

心憂=ク活用の形容詞「心憂し(こころうし)」の語幹、いやだ、不愉快だ。情けない、つらい。残念だ、気にかかる。

=詠嘆の間投助詞

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に。

=名詞

=格助詞

棄て=タ行下二段動詞「棄つ」の連用形

=接続助詞

=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

往に=ナ変動詞「往ぬ(いぬ)」の連用形、行ってしまう、去る。ナ行変格活用の動詞は「死ぬ・往(い)ぬ・去(い)ぬ」

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」。

=格助詞

 

「あな、心憂や。げに、身を棄ててや、往にけむ。」と、

(六条の御息所は、)「ああ、つらいことよ。なるほど、身体を捨てて、出て行ってしまったのだろうか。」と、

 

 

現し心(うつしごころ)=名詞、正気な心、平常な状態の心。

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の連用形、自然に思われる、感じる、思われる。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である六条の御息所を敬っている。作者からの敬意。

折々(おりおり)=名詞、その時々、機会がある時ごと

=係助詞

あれ=ラ変動詞「あり」の已然形

=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

うつし心ならずおぼえ給ふ折々もあれば、

正気でなくお感じになられる時も度々あるので、

 

 

=副詞、そう、その通りに、そのように。

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

こと=名詞

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。

=名詞

=格助詞

御ため=名詞

=格助詞

=係助詞

 

「さならぬことだに、人の御ためには、

「そうでもないことでさえ、(わざわざ)他人のためには、

 

 

よさま=ナリ活用の形容動詞「好様なり・善様なり(よさまなり)」の語幹、よい様子だ。 形容動詞の語幹+格助詞「の」=連体修飾語

=格助詞

こと=名詞

=格助詞

しも=強意の副助詞。訳す際にはあまり気にしなくてもよい。

言ひ出で=ダ行下二段動詞「言ひ出づ」の未然形

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=名詞

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

よさまのことをしも言ひ出でぬ世なれば、

良いようなことは言い出さない世の中なので、



 

まして=副詞

これ=代名詞

=係助詞

いと=副詞

よう=ク活用の形容詞「良し(よし)」の連用形が音便化したもの、対義語は「悪し(あし)」。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

言ひなし=ハ行四段動詞「言ひなす」の連用形

=強意の助動詞「つ」の終止形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる。

べき=可能の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

たより(頼り・便り)=名詞、良い機会、事のついで。頼りどころ、縁故。便宜、手段。消息、手紙、訪れ。ぐあい、配置。

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

ましてこれは、いとよう言ひなしつべきたよりなり。」

ましてこれは、たいそう上手く噂を立てることができる良い機会だ。」

 

 

=格助詞

思す=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の連体形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である六条の御息所を敬っている。作者からの敬意。

=接続助詞

いと=副詞

名立たしう=シク活用の形容詞「名立たし(なだたし)」の連用形が音便化したもの、評判になりそう、うわさになりそう。

 

と思すに、いと名立たしう、

とお思いになると、たいそう噂になりそうで、

 

 

ひたすら=副詞、一途に、ひたむきに。

=名詞

=格助詞

亡くなり=ラ行四段動詞「亡くなる」の連用形

=接続助詞

=名詞

=格助詞

怨み=名詞

残す=サ行四段動詞「残す」の連体形

=係助詞

=名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

こと=名詞

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

「ひたすら世に亡くなりて後に怨み残すは世の常のことなり。

「一途に、この世からいなくなって後に怨みを残すのは世間でよくある事だ。

 

 

それ=代名詞

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。

=名詞

=格助詞

=名詞

にて=格助詞

=係助詞

=名詞

深う=ク活用の形容詞「深し」の連用形が音便化したもの

ゆゆしき=シク活用の形容詞「忌々し(ゆゆし)」の連体形、触れてはならない神聖なことが原義。(良くも悪くも)程度がはなはだしい。恐れ多い、不吉だ、縁起が悪い。おそろしい、気味が悪い。

=接続助詞

うつつ(現)=名詞、現実、現世。生きている状態、目が覚めている状態。

=格助詞

=代名詞

=格助詞

=名詞

ながら=接続助詞、次の①の意味で使われている。

①そのままの状態「~のままで」例:「昔ながら」昔のままで

②並行「~しながら・~しつつ」例:「歩きながら」

③逆接「~でも・~けれども」 例:「敵ながら素晴らしい」

④そのまま全部「~中・~全部」例:「一年ながら」一年中

 

それだに、人の上にては、罪深うゆゆしきを、うつつのわが身ながら、

それでさえ、人の身の上においては、罪深く不吉であるのに、生きている状態の我が身のままで、

 

 

さる=連体詞あるいはラ変動詞「然り(さり)」の連体形、そうだ、そうである。適切である、ふさわしい、しかるべきだ。

うとましき=シク活用の形容詞「疎まし(うとまし)」の連体形、いやだ。気味が悪い。

こと=名詞

=格助詞

言ひつけ=カ行下二段動詞「言ひつく」の未然形

らるる=受身の助動詞「らる」の連体形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

宿世(すくせ)=名詞、宿命、前世からの因縁。前世。

=格助詞

憂き=ク活用の形容詞「憂し(うし)」の連体形、いやだ、にくい、気に食わない、つらい

こと=名詞

 

さるうとましきことを言ひつけらるる宿世の憂きこと。

そのようないやなことを噂される因縁のつらいことよ。

 

 

すべて=副詞

つれなき=ク活用の形容詞「つれなし」の連体形、冷ややかだ、薄情だ、関心を示さない。平然としている、素知らぬ顔だ。「連れ無し」ということで、関連・関係がない様子ということに由来する。

=名詞

=格助詞

いかで=副詞、どうであろうとも、なんとかして。どうして、どのようにして、どういうわけで。どうにかして。

=名詞

=係助詞

かけ=カ行下二段動詞「掛く・懸く(かく)」の連用形

聞こえ=補助動詞ヤ行下二「聞こゆ」の未然形、謙譲語。動作の対象である光源氏を敬っている。六条の御息所からの敬意。

=打消意志の助動詞「じ」の連体形、接続は未然形。「いかで」の「か(疑問の係助詞)」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

すべて、つれなき人にいかで心もかけ聞こえじ。」

もういっさい、薄情な方(=光源氏)に、どうあろうとも心をおかけ申すまい。」

 

 

=格助詞

思し返せ=サ行四段動詞「思し返す(おぼしかえす)」の已然形、「思ひ返す」の尊敬語。動作の主体である六条の御息所を敬っている。作者からの敬意。

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

思ふ=ハ行四段動詞「思ふ」の連体形

=係助詞

もの=名詞

=格助詞

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

と思し返せど、思ふもものをなり。

とお考え直しになるけれど、思うまいと思うのも物思いするということなのである。



 

おどろおどろしき=シク活用の形容詞「おどろおどろし」の連体形、恐ろしい、気味が悪い。おおげさだ。

さま=名詞

=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

=係助詞

あら=ラ変動詞「あり」の未然形

=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

そこはかとなく=ク活用の形容詞「そこはかとなし」の連用形、そこはかとない、これといった目的・方針もない、とりとめもない。どこかはっきりとしない。

=接続助詞

月日=名詞

=格助詞

過ぐし=サ行四段動詞「過ぐす」の連用形

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である葵の上を敬っている。作者からの敬意。

 

おどろおどろしきさまにはあらず、そこはかとなくて、月日を過ぐし給ふ。

(葵の上の方は、)ひどく苦しいという様子ではなく、特に悪いこともなく、月日を過ごしなさる。

 

 

大将殿=名詞

=係助詞

=名詞

=格助詞

とぶらひ=ラ行四段動詞「訪ふ(とぶらふ)」の連用形、見舞う、訪れる。

聞こえ=補助動詞ヤ行下二「聞こゆ」の連用形、謙譲語。動作の対象である葵の上を敬っている。作者からの敬意。

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

大将殿も、常にとぶらひ聞こえ給へど、

大将殿(=光源氏)も、いつもお見舞い申し上げなさるけれど、

 

 

まさる=ラ行四段動詞「増さる・勝る(まさる)」の連体形、増える、強まる。すぐれる、勝る。

=名詞

=格助詞

いたう=ク活用の形容詞「甚し(いたし)」の連用形が音便化したもの、(良い意味でも悪い意味でも)程度がひどい

わづらひ=ハ行四段動詞「煩ふ(わづらふ)」の連用形、苦しむ、悩む。病気になる。

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である葵の上を敬っている。作者からの敬意。

=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

御心=名詞

=格助詞

いとま=名詞、休み、余暇、ひま。別れ、別れの挨拶。

なげなり=ナリ活用の形容動詞「無げなり」の終止形、なさそうである

 

まさる方のいたうわづらひ給へば、御心のいとまなげなり。

さらに大事な方(=葵の上)がひどく患っていらっしゃるので、お気持ちの休む間もないようである。

 

 

続きはこちら源氏物語『葵(葵の上と物の怪)』品詞分解のみ(1)まださるべきほどにもあらずと、皆人もたゆみ給へるに、~

 

源氏物語『葵』『葵(葵の上と物の怪)』まとめ

 

 

 

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