「青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等」
問題はこちら和泉式部日記『夢よりもはかなき世の中・薫る香に』(同じ枝に~の和歌前後)問題
まだ端に①おはしましけるに、この童隠れの方に気色ばみけるけはひを、御覧じつけて、「いかに。」と問はせ給ふに、御文をさし出でたれば、御覧じて、
同じ枝に 鳴きつつをり②し ほととぎす 声は変わら③ぬ ものと知らずや
と書か④せ給ひて、⑤賜ふとて、「⑥かかること、ゆめ人に言ふな。⑦すきがましきやうなり。」とて、入らせ給ひ⑧ぬ。もて来たれば、⑨をかしと見れど、常はとて御返り⑩聞こえさせず。
問題1.①おはします、⑤賜ふ、⑨をかし、⑩聞こえさす、のここでの意味を答えよ。(※左記の用言は終止形で表記してある。終止形のものとして意味を考えよ。)
①いらっしゃる・おられる
おはしまし=サ行四段動詞「おはします」の連用形。「あり」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である帥宮を敬っている。敬語を使った作者からの敬意。
⑤お与えになる
賜ふ=ハ行四段動詞「賜ふ」の終止形、「与ふ」の尊敬語。お与えになる。動作の主体である帥宮を敬っている。作者からの敬意
⑨面白い・趣がある・趣深い
をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形、面白い、趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。
⑩申し上げる
聞こえさせ=サ行下二動詞「聞こえさす」の未然形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である帥宮を敬っている。作者からの敬意。
問題2.②し、③ぬ、④せ、⑧ぬ、の文法的説明として、次の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。(注:意味だけ書かれているものは全て助動詞である)
ア.過去 イ.使役 ウ.尊敬 エ.受身 オ.打消 カ.完了 キ.強意 ク.動詞の一部 ケ.形容詞の一部
②ア.過去
し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形
③オ.打消
ぬ=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形
④ウ.尊敬
せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。すぐ下に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ひ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である帥宮を敬っている。敬語を使った作者からの敬意。
⑧カ.完了
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
問題3.①おはしまし、⑤賜ふ、⑩聞こえさせ、のそれぞれの動詞における主語と敬意の対象(誰を敬っているか)を答えよ。
※尊敬語は動作の主体を敬う
※謙譲語は動作の対象を敬う
※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。
どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。
①主語:帥宮
①敬意の対象:帥宮
おはしまし=サ行四段動詞「おはします」の連用形。「あり」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である帥宮を敬っている。敬語を使った作者からの敬意。
⑤主語:帥宮
⑤敬意の対象:帥宮
賜ふ=ハ行四段動詞「賜ふ」の終止形、「与ふ」の尊敬語。お与えになる。動作の主体である帥宮を敬っている。作者からの敬意
⑩主語:和泉式部(作者)
⑩敬意の対象:帥宮
聞こえさせ=サ行下二動詞「聞こえさす」の未然形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である帥宮を敬っている。作者からの敬意。
問題3.「⑥かかること、ゆめ人に言ふな」、「⑦すきがましきやうなり」、の現代語訳を答えよ。
⑥このようなことを、決して人に言ってはならないよ
斯(か)かる=連体詞、このような、こういう
ゆめ~な=けっして~するな。
ゆめ=副詞、(打消し・禁止の語を下に伴って)決して、必ず、つとめて
な=終助詞、強い禁止を表す。~(する)な
⑦好色めいているようだ
すきがましき=シク活用の形容詞「好きがまし」の連体形、浮気っぽい、好色めいている
やうなり=比況の助動詞「やうなり」の終止形。接続は連体形・格助詞の「の」。ようである
問題4.『同じ枝に 鳴きつつをりし ほととぎす 声は変わらぬ ものと知らずや』の和歌における「ほととぎす」とは何に例えられているか答えよ。また、この和歌の現代語訳を答えよ。
ほととぎす:帥宮
現代語訳:同じ枝に鳴いていたほととぎすのようなものです。(亡き兄と私の)声は変わらないものと(あなたは)知らないのか。
をり=ラ変動詞「居(を)り」の連用形。
し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形
ず=打消しの助動詞「ず」の終止形、接続は未然形
や=疑問の係助詞
和泉式部日記『夢よりもはかなき世の中・薫る香に』解説・品詞分解・試験対策