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『人虎伝』(5)原文・書き下し文・現代語訳

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字 

『人虎伝』まとめ

 

虎又日ハク、「使ヒシテ日、幸ヒニ他郡、無カレブコト

(とら)(また)()はく「使(つか)ひして(かえ)()(さいわ)ひに(みち)()(ぐん)()(ふたた)()(みち)(あそ)こと()かれ。

※「無カレスル(コト)」=禁止、「Aしてはならない」

虎がまた言うことには、「使者としての仕事を終えて帰る日には、他の郡の道を選んで、二度とこの道を通ってはならない。

 

 

吾今日尚ムルモ、一日郡ハバ

(われ)(こん)(にち)()()むるも(いち)(じつ)(ずべ)()はば、

 

私は今日は心がはっきりしていたが、いつか完全に(虎の心に)酔いしれれば、

 

 

君過グルトキ、吾既()(まさ/し)カント足下於歯牙、終サン士林之笑ヒヲ焉。

(すなわ)(きみ)(ここ)()ぐるとき(われ)(すで)(せい)せず、(まさ)(そっ)()()()(かん)(くだ)かんとし、(つい)()(りん)(わら)ひを()ん。

※将=再読文字、「将(まさ)に~んとす」、「~しようとする・~するつもりだ」   ※焉=置き字(断定・強調)

君がここを過ぎても、もう思い出せず、君を牙でかみ砕こうとし、最後には教養人の仲間で笑い者になるだろう

それを成し遂げて笑うだろう。

 

 

()切祝(なり)

()(われ)(せっ)(しゅく)なり。

 

これは私の切実な願いだ。

 

 

君前ルコト百余歩、上小山下視スレバエン

(きみ)(すす)()ること(ひゃく)()()(しょう)(ざん)(のぼ)()()すれば(ことごと)()えん。

 

君が百歩余り先に進み、小山に登って見下ろしたならば、すべて見尽くせるだろう。

 

 

()メントヲシテ一レ焉。

(ここ)(まさ)(きみ)をして(われ)()しめんとす。

※将=再読文字、「将(まさ)に~んとす」、「~しようとする・~するつもりだ」

※令=使役「令ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

そこで君に私の姿を見せようと思う。

 

 

スルニラント()メントスレバナリヲシテ()一レ

(ゆう)(ほこ)らんと(ほっ)するに(あら)ず、(きみ)をして()()(ふたた)(ここ)()ぎざらしめんとすればなり。

※令=使役「令ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

勇猛さを誇りたいのではなく、君に私を見てもらい、二度とここを通らないようにさせたいと思うからだ。



ラン吾待ツコト故人()上レルヲカラ。」

(すなわ)(われ)()(じん)()つことの(うす)から()()()らん。」と。

 

そうすれば、私の旧友に対する待遇が厚かったことを理解するだろう。」と。

 

 

スルコトレヲ

(わか)れを(じょ)すること(はなは)(ひさ)し。

 

別れの言葉を長い間述べ合った。

 

 

傪乃再拝シテ、回-スレバ草茅、悲泣所アリ()クニ

(さん)(すなわ)(さい)(はい)して(うま)(のぼ)り、(そう)(ぼう)(うち)(かい)()すれば()(きゅう)()くに(しの)びざる(ところ)あり。

 

傪はそこで丁寧に挨拶して馬に乗り、草むらの中を見回すと、悲しく泣く声が聞くに耐えられないぐらい悲しいものだった。

 

 

イニ、行クコト数里、登リテレバ

(さん)()(おお)いに(なげ)き、()くこと(すう)()(みね)(のぼ)(これ)()れば、

 

傪もまた大いに嘆き、数里ほど進み、峰に登って先程までいた辺りを見たところ

 

 

虎自林中デテ咆哮、巌谷皆震ヘリ

(すなわ)(とら)(りん)(ちゅう)より(おど)()でて(ほう)(こう)し、(がん)(こく)(みな)(ふる)へり

 

虎が林の中から躍り出て大きく吠え、険しい谷を皆震わせるようだった。

 

 

『人虎伝』まとめ

 

 

 

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