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『人虎伝』(4.3)原文・書き下し文・現代語訳

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

まとめはこちら『人虎伝』まとめ

 

傪覧キテハク、「君才行、我知レリ矣。

(さん)(これ)()(おどろ)きて()はく、「(きみ)(さい)(こう)(われ)(これ)()れり。

※矣=置き字(断定・強調)

傪はこれ(=李徴の詩)を見て、驚いて言うことには、「君の才知と品行について、私はよく知っている。

 

 

レル於此者、君平生得キヲムコト()。」

(しか)(きみ)(ここ)(いた)れるは、(きみ)(へい)(ぜい)(みずか)(うら)むこと()()きを()んや。」と。

※於=置き字(場所)

しかし君がこんなことになったのは、君が普段から自分自身で残念なことがあるのではないだろうか。」と。

 

 

虎曰ハク、「二儀ルヤ、固ヨリカラン親疎厚薄()

(とら)()はく、「()()(もの)(つく)るや、(もと)より(しん)()(こう)(はく)(あいだ)()からん。

※親疎厚薄=親しいことと疎遠なこと、待遇が厚いことと薄いこと。

虎が言うことには、「陰と陽の二つが万物が創造することについては、もともと親疎厚薄の隔たりなどなかったであろう。

 

 

(ごと)キハ()時、所()、吾又()(なり)

()()(ところ)(とき)()(ところ)(すう)のごときは、(われ)(また)()らざるなり。

 

その出会う時代や、巡り合う運命などのようなものは、私はまた知るよしもない。

 

 

噫、顔子()不幸、冉有疾、尼父常ゼリ矣。

(ああ)(がん)()()(こう)(ぜん)(ゆう)()(やまい)()()(かつ)(ふか)(これ)(たん)ぜり。

※顔回と冉有=二人とも孔子の弟子であった。

ああ、顔回の不幸(=早死)、冉有の病気などを、かつて孔子は深く嘆いたのだった。

 

 

-セバ、則矣。

()()(みずか)(うら)(ところ)(はん)(きゅう)せば、(すなわ)(われ)()()()り。

※「() ~」=仮定、「もし ~ならば」

もしも自分自身で悔やまれることを振り返って考えるならば、私もまた思い当たることがある。

 

 

()ランメテ一レルヲ()

(さだ)めて(これ)()るを()らざらんや。

※「 ~ (セ)ンや(哉・乎・邪など)」=反語、「 ~ (せ)んや」、「 ~ だろうか。(いや、~ない。)」

きっとそれに起因するに違いない。

 

 

吾遇ヘバ故人、則(なり)

(われ)()(じん)()へば、(すなわ)(みずか)(かく)(ところ)()きなり。

 

私は旧友に会ったのだから、何も隠すことはない。

 

 

吾常

(われ)(つね)(これ)()す。

 

私にはずっと記憶していることがある。

 

 

イテ南陽郊外、嘗一孀婦

(なん)(よう)(こう)(がい)()いて、(かつ)(いっ)(そう)()(わたし)す。

 

南陽の郊外で、かつて夫に先立たれたある女性と、ひそかに交際していた。

 

 

家窃カニ、常スル

()(いえ)(ひそ)かに(これ)()り、(つね)(われ)(がい)する(こころ)()り。

 

その家族がひそかにこの事を知り、いつも私の邪魔をしようと思っていた。



孀婦、由リテ()フヲ

(そう)()は、(これ)()りて(ふたた)()ふを()ず。

※「不 ~(スル)ヲ」=不可能、「 ~(する)を得ず」、「(機会がなくて) ~できない。」

その女性は、こういうことが原因で、再び会うことができなくなった。

 

 

吾因リテジテ、一家数人、尽-シテ而去

(われ)()りて(かぜ)(じょう)じて()(はな)ち、(いっ)()(すう)(にん)(ことごと)(これ)(ふん)(さつ)して()る。

※而=置き字(順接・逆接)

私はそこで風に乗じて火を放ち、その一家数人を、全員焼き殺して立ち去った。

 

 

ミト(のみ)。」

(これ)(うら)みと()すのみ。」と。

※「~ (のみ)」=限定「~ のみ」「~ だけだ」

このことが残念でならない。」と。

 

 

続きはこちら『人虎伝』(5)原文・書き下し文・現代語訳

 

『人虎伝』まとめ

 

 

 

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