青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
有下リ献二ズル不死之薬ヲ於荊王一ニ者上。
不死の薬を荊王に献ずる者有り。
※於=置き字(対象・目的)
不死の薬を荊王に献上した者がいた。
謁者操レリテ之ヲ以テ入ル。
謁者之を操りて以て入る。
取り次ぎ役がそれを受け取って(宮中に)入った。
中射之士問ヒテ曰ハク、「可レキ食ラフ乎ト。」
中射の士問ひて曰はく、「食らふべきか。」と。
※可=様々な意味がある。ここでは、「可能」と「許可」の意味のどちらかが用いられている。ここは「食べても良いのか。」と「許可」の意味で訳してもよいと思われる。ですがテストでは念のため学校の指示に従ってください。
側近の者が尋ねて、「食べることができるのか。」と言った。
曰ハク、「可ナリト。」因リテ奪ヒテ而食レラフ之ヲ。
曰はく、「可なり。」と。因りて奪ひて之を食らふ。
※可=ここでは「可能」と「許可」の意味のどちらか。よってここは「(食べても)良いです。」と「許可」の意味で訳してもよいと思われる。ですがテストでは念のため学校の指示に従ってください。
※而=置き字(順接・逆接)
取り次ぎ役は、「食べられます。」と言った。そこで(側近の者は)奪ってこの薬を食べた。
王大イニ怒リ、使三メントス人ヲシテ殺二サ中射之士一ヲ。
王大いに怒り、人をして中射の士を殺さしめんとす。
※使=使役「使二ムAヲシテB一(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」
荊王は大いに怒り、人に命じてその側近の者を殺させようとした。
中射之士使二メテ人ヲシテ説一レカ王ニ曰ハク、
中射の士の人をして王に説かしめて曰はく、
その側近の者が人を介して王に弁解させて言うことには、
「臣問二フ謁者一ニ。謁者曰ハク、『可レシト食ラフ。』臣故ニ食レラフ之ヲ。
「臣謁者に問ふ。謁者曰はく、『食らふべし。』と。臣故に之を食らふ。
※可=「許可」の意味で用いられている。
「私は取り次ぎ役に尋ねました。(すると)取り次ぎ役は、『食べても良い。』と言いました。だから私はこの薬を食べたのです。
是レ臣ニ無レクシテ罪而罪ハ在二ル謁者一ニ也。
是れ臣に罪無くして罪は謁者に在るなり。
※而=置き字(順接・逆接)
これはつまり私に罪はなく、罪は取り次ぎ役にあるのです。
且ツ客献二ジ不死之薬一ヲ、臣食レラヒテ之ヲ、而王殺レサバ臣ヲ、是レ死薬也。
且つ客不死の薬を献じ、臣之を食らひて、王臣を殺さば、是れ死薬なり。
また、客人が不死の薬を献上し、私がその薬を食べて、王が私を殺したとすれば、これは死の薬だったということになります。
是レ客欺レク王ヲ也。
是れ客王を欺くや。
これはつまり客人が王をだましたということになります。
夫レ殺二シテ無レキ罪之臣一ヲ、而明二ラカニスル人之欺一レクヲ王ヲ也。
夫れ罪無きの臣を殺して、人の王を欺くを明らかにするなり。
そもそも、罪のない私を殺して、人が王をだましたことを明らかにすることになります。
不レト如レカ釈レスニ臣ヲ。」
臣を釈すに如かず。」と。
私を許した方が良いかと思われます。」と。
※「~(に)如かず」=「~に及ばない」
私を許すという選択肢は私を殺すという選択肢に及ばない。つまり私を許した方が良い。なぜなら私を殺せば、王が罪のない人間を殺した上に、だまされたということになってしまうから。
王乃チ不レ殺サ。
王乃ち殺さず。
王はそこで殺さなかった。