フロンティア古典教室

宇治拾遺物語『清水寺二千度参り』解説・品詞分解

   

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳のみはこちら宇治拾遺物語『清水寺二千度参り』現代語訳

 

 

今は昔、人のもとに宮仕えしてある(なま)(さぶらい)ありけり。する事のなきままに、清水へ、人まねして、(せん)(にち)(もう)を二度したり けり

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

ままに=~にまかせて、思うままに。~するとすぐに。(原因・理由)…なので。「まま(名詞/に(格助詞)」

 

たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

今となっては昔のことだが、(とある)人のもとに仕えている身分の低い若い侍がいた。する事がないのにまかせて、清水寺へ、人のまねをして、千日詣でを二度行った。

 

 

その後いくばくもなくして、主のもとにありける同じやうなる侍と双六を打ちけるが、

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「ける」も同じ。

 

やうなる=比況の助動詞「やうなり」の連体形

 

その後いくらもたたないで、主人のもとに(仕えて)いた(自分と)同じような侍と双六を打ったが、

 

 

多く負けて、渡すべき物なかりけるに、いたく責めけれ 思ひわびて、

 

べき=可能の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

いたく=ク活用の形容詞「いたし」の連用形、良い意味でも悪い意味でも程度がはなはだしい。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

思ひわび=バ行上二段動詞「思ひ侘ぶ」の連用形

侘ぶ(わぶ)=バ行上二段動詞、困る、つらいと思う、寂しいと思う。

 

たくさん負けて、渡せる物がなかったところ、(勝った方の侍が)ひどく責めたので、思い悩んで、

 

 

「我持ちたる物なし。ただいま(たくわ)たる物とては、清水に二千度参りたる事のみなむ ある。それを渡さ。」と言ひけれ 

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

ある=ラ変動詞「あり」の連体形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

「私は、持っている物は何もない。ただ今蓄えている物としては、清水に二千度お参りした事だけがある。それを渡そう。」と言ったので、

 

 

傍らにて聞く人は、謀るなりと、をこに思ひて笑ひけるを、

 

なり=推定の助動詞「なり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。直前に四段活用の終止形or連体形が来たときの「なり」は「断定・存在・伝聞・推定」の四つの可能性があるので注意。残念ながらここは文脈判断するしかない。

 

をこに=ナリ活用の形容動詞「痴なり(をこなり)」の連用形、ばからしい、あほらしい、みっともない。さしでがましい、出過ぎた様子だ。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

そばで(その会話を)聞く人は、だますようだと、ばからしく思って笑ったが、

 

この勝ちたる侍、「いとよきことなり。渡さ  。」と言ひて、

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

ば=接続助詞、直前が未然形であり、④仮定条件「もし~ならば」の意味で使われている。

 

得(え)=ア行下二段動詞「得(う)」の未然形。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

この勝った侍は、「とても良いことだ。渡すのならば受け取ろう。」と言って、

 

 

(いな)かくては受け取ら。三日して、この申して、おのれ渡す由の文書きて渡さ こそ、受け取ら。」と言ひけれ 

 

かくて=副詞、このようにして、こうして

 

じ=打消意志の助動詞「じ」の終止形、接続は未然形

 

由(よし)=名詞、旨、趣旨、事情

 

申し=サ行四段動詞「申す」の連用形、「言ふ」の謙譲語

 

ば=接続助詞、直前が未然形であり、④仮定条件「もし~ならば」の意味で使われている。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

め=意志の助動詞「む」の已然形、接続は未然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

「いや、このままでは受け取るまい。三日たって、(神仏に)このことを申し上げて、おまえが渡すという旨の証文を書いて渡すのならば、受け取ろう。」と言うので、

 

 

「よき事なり。」と契りて、その日より精進して、三日といひける日、「さは、いざ清水へ」と言ひけれ 

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

契り(ちぎり)=名詞、約束、ご縁

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

(負けた侍は、)「(それは)良いことだ。」と約束して、(勝った侍は)その日から心身を清めて、三日といった日に、「それでは、さあ清水寺へ。」と言ったので、

 

 

この負け侍、このしれ者に会ひたると、をかしく思ひて、喜びて連れて参り  けり

 

痴れ者(しれもの)=名詞、ばか者、愚か者。

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

をかしく=シク活用の形容詞「をかし」の連用形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

この負け侍は、(うまいことに)この愚か者に会ったことだと、おかしく思って、喜んで一緒に(清水寺へ)参った。

 

 

言ふままに文書きて、御前にて師の僧呼びて、事の 申さ て、

 

ままに=~にまかせて、思うままに。~するとすぐに。(原因・理由)…なので。「まま(名詞/に(格助詞)」

 

由(よし)=名詞、旨、趣旨、事情

 

申さ=サ行四段動詞「申す」の未然形、「言ふ」の謙譲語

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

言う通りに証文を書いて、(仏の)御前で師の僧を呼んで、事情を(仏に伝えるために)申し上げさせて、

 

 

「二千度参り つる事、それがし双六(すぐろく)に打ち入れ。」と書きて取ら けれ 

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語

 

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連体形

 

それがし(某)=名詞、(名前のはっきりしない人物のことなどを指して)だれそれ、だれだれ。(一人称の代名詞として)私。

 

つ=完了の助動詞「つ」の終止形、接続は連用形

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

「二千度お参りした事を、誰それに双六の賭け物として打ち入れた。」と書いて受け取らせたところ、

 

 

受け取りつつ喜びて、伏し拝みまかり出で  けり

 

つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、ここでは①反復「~しては~」の意味。

 

まかり出で=ダ行下二段動詞「まかり出づ」の連用形、謙譲語。退出する。

「まかる」=ラ行四段動詞、謙譲語。退出する。参る。

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

(勝った侍は)受け取りながら喜んで、伏し拝んで退出した。

 

その後、いくほどなくして、この負け侍、思ひかけことにて捕らへられて、人屋に居 けり

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

られ=受身の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

その後、いくらもたたないうちに、この負け侍は、思いがけないことで捕らえられて、牢獄に入ってしまった。

 

 

取りたる侍は、思いかけ たよりある妻まうけて、いとよくつきて、(つかさ)などなりて、頼もしくてありける

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

たより(便り・頼り)=名詞、良い機会、事のついで。手紙、消息。頼り所、縁故。便宜、手段。

 

まうけ=カ行下二段動詞「設く・儲く(まうく)」の連用形、得をする、思いがけない利益を得る。準備をする、用意をする。

 

徳(とく)=名詞、道徳。人徳。天性、長所。恩恵。財産、富。利益、もうけ。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

(証文を)受け取った侍は、思いがけないつてのある(裕福な)妻を得て、たいそうよく財産が身について、官職などを得て、裕福な暮らしになった。

 

 

「目に見えなれ 、まことの心をいたして受け取りけれ 

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

「目に見えない物であるけれど、誠実な心を尽くして受け取ったので、

 

 

仏、あはれ思し召し たり ける  めり。」と人は言ひける

 

あはれ=ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の語幹。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。しみじみと思う、しみじみとした情趣がある。

 

思し召し=サ行四段動詞「思し召す(おぼしめす)」の連用形、「思ふ」の尊敬語

 

たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

な=断定の助動詞「なり」の連体形が音便化して無表記になったもの、「なる」→「なん(音便化)」→「な(無表記化)」

 

めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変は連体形)。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

仏が、感心だとお思いになったのであるようだ。」と人々は言った。

 

 

宇治拾遺物語『清水寺二千度参り』現代語訳

 

 

 

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