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宇治拾遺物語『絵仏師良秀』品詞分解のみ

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 宇治拾遺物語『絵仏師良秀』まとめ

 

 

 

これ=代名詞

=係助詞

=名詞

=係助詞

=名詞

絵仏師良秀(りょうしゅう)=名詞

=格助詞

いふ=ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連体形。ちなみに、直後に体言(ここでは「者」)が省略されているため連体形(体言に連なる形)となっている。

あり=ラ変動詞「あり」の連用形。直後に接続が連用形の助動詞「けり」が来ているため連用形となっている。

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続(直前に置かれる活用形)は連用形

 

これも今は昔、絵仏師(りょう)(しゅう)といふありけり。

これも今は昔のことだが、絵仏師良秀という者がいた。

 

 

=名詞

=格助詞

=名詞

より=格助詞、(起点)~から。(手段・用法)~で。(経過点)~を通って。(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや。

=名詞

出で来(いでき)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形

=接続助詞

=名詞

おしおほひ=ハ行四段動詞「おしおほふ」の連用形

=接続助詞

せめ=マ行下二段動詞「迫む(せむ)」の連用形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

逃げ出で=ダ行下二段動詞「逃げ出づ(にげいづ)」の連用形

=接続助詞

大路=名詞

=格助詞

出で=ダ行下二段動詞「出づ」の連用形

=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形。

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。

 

家の隣より火出で来(き)て、風おしおほひてせめければ、逃げ出でて大路へ出でにけり。

隣の家から火が出てきて、風がおおうように吹いて火が迫って来たので、(良秀は)逃げ出して、大通りへ出た。

 

 

=名詞

=格助詞

書か=カ行四段動詞「書く」の未然形

する=使役の助動詞「す」の連体形、接続は未然形。「す」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

=名詞

=係助詞

おはし=サ変動詞「おはす」の連用形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。仏(の絵)を敬っている

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

また=接続詞

(きぬ)=名詞

=カ行上一段動詞「着る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

妻子(めこ)=名詞

など=副助詞

=係助詞

さながら=副詞、そのまま、もとのまま。すべて、全部

=名詞

=格助詞

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

人の書かする仏もおはしけり。また衣着ぬ妻子なども、さながら内にありけり。

(良秀の家の中には、)人が(良秀に依頼して)描かせている仏の絵もおありであった。また、衣服も着ていない妻子なども、そのまま家の中にいた。

 

それ=代名詞

=係助詞

知ら=ラ行四段動詞「知る」の未然形

=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

ただ=副詞

逃げ出で=ダ行下二段動詞「逃げ出づ」の連用形

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

=格助詞

=名詞

=格助詞

=サ変動詞「す」の連用形、する。

事にす=良い事とする、それに満足する。「事(名詞)/に(格助詞)/し(サ変動詞の連用形)」

=接続助詞

向かひ=名詞

=格助詞

つら(面)=名詞

=格助詞

立て=タ行四段動詞「立つ」の已然形。「立つ」は下二段動詞でもあり、その時は「立たせる」と言う意味になる。

=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

それも知らず、ただ逃げ出でたるを事にして、向かひのつらに立てり。

それも気にせず、ただ(自分が)逃げ出したのを良い事にして、(自分の家の)向かいの側に立っていた。

 

 

見れ=マ行上一段動詞「見る」の已然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

すでに=副詞

=代名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

移り=ラ行四段動詞「移る」の連用形

=接続助詞

=名詞

=名詞

くゆり=ラ行四段動詞「くゆる」の連用形。くすぶる、くすぶって煙やにおいが立ちのぼる

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。直後に体言(ここでは「ところ・時」など)が省略されているため連体形となっている。

まで=副助詞

おほかた=副詞、だいたい、およそ。一般に

向かひ=名詞

=格助詞

つら(面)=名詞

=格助詞

立ち=タ行四段動詞「立つ」の連用形

=接続助詞

眺め=マ行下二段動詞「眺む」の連用形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは原因・理由①「~なので、~だから」の意味で使われている。

 

見れば、すでに我が家に移りて、煙、炎くゆりけるまで、おほかた向かひのつらに立ちて眺めければ、

見ると、すでに我が家に(火が)移って、煙、炎がくすぶり燃え出したところまで、だいたい向かい側に立って(良秀は)眺めていたので、

 

 

あさましき=シク活用の形容詞「あさまし」の連体形、驚きあきれる、意外でびっくりすることだ

=名詞

=格助詞

=接続助詞

人ども=名詞

(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に用言(とぶらひ)がきているため連用形(用言に連なる形)になっているので、「き」と読む

とぶらひ=ラ行四段動詞「訪ふ(とぶらふ)」の連用形、見舞う、訪れる

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

=逆接の接続助詞、直前には已然形が来る

騒が=ガ行四段動詞「騒ぐ」の未然形

=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

「あさましき事。」とて、人ども来(き)とぶらひけれど、騒がず。

「大変なことだ。」と言って、人々が見舞いにやって来たが、動じてない。

 

 

いかに=副詞、どうした。どのように。なぜ。おい。

=格助詞

=名詞

言ひ=ハ行四段動詞「言ふ」の連用形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

向かひ=名詞

=格助詞

立ち=タ行四段動詞「立つ」の連用形

=接続助詞

=名詞

=格助詞

焼くる=カ行下二段動詞「焼く」の連体形

=格助詞

=マ行上一段動詞「見る」の連用形

=接続助詞

うちうなづき=カ行四段動詞「うちうなづく」の連用形。「うち」は接頭語、「ちょっと・すこし」などの意味があるが、あまり気にしなくてもよい。

=接続助詞

時々=副詞

笑ひ=ハ行四段動詞「笑ふ」の連用形

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

「いかに。」と人いひければ、向かひに立ちて、家の焼くるを見て、うちうなづきて、時々笑ひけり。

「どうした。」と(ある)人が言ったところ、(良秀は家の)向かい側に立って、家の焼けるのを見て、少しうなづいて、時々笑った。

 

あはれ=感動詞、ああ。「あはれ」とは感動したときに口に出す言葉であることから、心が動かされるという意味を持つ名詞や形容詞、形容動詞として使われるようにもなった。

=サ変動詞「す」の連用形、する

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

せうとく(所得)=名詞、得をすること、うまくいくこと

かな=詠嘆の終助詞、~だなあ、~であることよ。

年ごろ=名詞、長年、長年の間

=係助詞

わろく=ク活用の形容詞「悪し(わろし)」の連用形、良くない、普通とは劣るさま。下手だ、ぱっとしない。対義語は「よろし」。「わろし」は相対的に悪い状態。「悪し(あし)」は絶対的に悪い状態。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

書き=カ行四段動詞「書く」の連用形

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

もの=名詞

かな=詠嘆の終助詞、~だなあ、~であることよ。

=格助詞

言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の連体形

=名詞

=格助詞

 

「あはれ、しつるせうとくかな。年ごろはわろく書きけるものかな。」といふ時に、

「ああ、もうけものをしたことだなあ。長年の間(火炎を)下手に描いてきたものだよ。」と(良秀が)言う時に、

 

 

とぶらひ=ハ行四段動詞「訪ふ(とぶらふ)」の連用形

=格助詞

(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

者ども=名詞

=代名詞

=係助詞

いかに=副詞、どのように、どう

かくて=副詞、このようにして、こうして

=係助詞

立ち=タ行四段動詞「立つ」の連用形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。補助動詞とは、英語の助動詞みたいなもの。意味は尊敬。

=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=強調の係助詞

あさましき=シク活用の形容詞「あさまし」の連体形、驚きあきれる、意外でびっくりすることだ

こと=名詞

かな=詠嘆の終助詞、~だなあ、~であることよ。

=名詞

=格助詞

つき=カ行四段動詞「憑く(つく)」の連用形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。

=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=疑問の係助詞

=格助詞

言ひ=ハ行四段動詞「言ふ」の連用形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

とぶらひに()たる者ども、「こはいかに、かくては立ち給へるぞ。あさましき事かな。物の()き給へるか。」といひければ、

見舞いに来た人々が、「これはどうして、このようにしてお立ちになっているのか。あきれたことだ。霊が取りつきなさっているのか。」と言ったところ、

 

 

なんでふ=副詞、反語。どうして~か。(いや~ない。)

もの=名詞

=格助詞

つく=カ行四段動詞「憑く(つく)」の終止形

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変は連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある

=強調の係助詞

年ごろ=名詞、長年、長年の間

不動尊=名詞

=格助詞

火炎=名詞

=格助詞

悪しく=シク活用の形容詞「悪し(あし)」の連用形、悪い。不都合だ。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

書き=カ行四段動詞「書く」の連用形

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

「なんでふものの憑くべきぞ。年ごろ不動尊の火炎を悪しく書きけるなり。

「どうして霊が取りつくはずがあろうか。(いや、ない。)長年不動尊の火炎を下手に描いていたのだ。

 

 

=名詞

見れ=マ行上一動詞「見る」の已然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

かう(斯う)=副詞、こう、このように。  「斯く(かく)」が音便化したもの。

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。ここの結びは「けれ」。係り結び。意味は強調なので気にせず「かう燃えけり」と元の形に戻して訳を考えると良い。

燃え=ヤ行下二段動詞「燃ゆ」の連用形

けれ=詠嘆の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断

=格助詞

心得(こころえ)=ア行下二段動詞「心得(こころう)」の連用形。心得る、(事情などを)理解する。ア行下二段動詞は「得・心得・所得」だけのはずなので覚えておいた方がよい。

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

これ=代名詞

こそ=強調の係助詞

せうとく(所得)=名詞、得をすること、うまくいくこと

=詠嘆の終助詞

 

今見れば、かうこそ燃えけれと、心得つるなり。これこそせうとくよ。

今見ると、(火炎とは)こう燃えるものだったなぁと、理解したのだ。これこそもうけものよ。

 

=代名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

立て=タ行下二段動詞「立つ」の連用形

=接続助詞

=名詞

=格助詞

あら=ラ変動詞「あり」の未然形

世にあり=生きている、この世にいる。

=仮定の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。

=格助詞

=係助詞

 

この道を立てて世にあらむには、

この(絵仏師としての)道を職業として生きて行こうとするには、

 

 

=名詞

だに=副助詞、~さえ、せめて~だけでも

よく=ク活用の形容詞「良し」の連用形、対義語は「悪(あ)し」。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

書き=カ行四段動詞「書く」の連用形

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」未然形、謙譲語。~し申し上げる

=接続助詞、直前に未然形が来ているため④仮定条件「もし~ならば」。直前が已然形だと①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれか。直前が未然形なら④仮定条件「もし~ならば」である。

百千=名詞

=格助詞

=名詞

=係助詞

出で来(いでき)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形

=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

仏だによく書き(たてまつ)らば、百千の家も()()なむ。

仏さえうまく描き申し上げたら、百や千軒の家もきっと出来るだろう。

 

 

わたうたち=名詞、おまえら、おまえたち

わたう=(同等か目下の物に対して)おまえ、おまえら

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

させる=連体詞、これという、それほどの

=名詞

=係助詞

おはせ=サ変動詞「おはす」の未然形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。

=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

=接続助詞、直前には未然形か已然形の活用形が付く。ここでは①原因・理由「~なので、~だから」の意味で使われている。

=名詞

=格助詞

=係助詞

惜しみ=マ行四段動詞「惜しむ」の連用形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

=格助詞

言ひ=ハ行四段動詞「言ふ」の連用形

=接続助詞

 

わたうたちこそ、させる能もおはせねば、物をも惜しみ給へ。」といひて、

お前たちこそ、これという才能もおありでないから、物を惜しみなさるのだ。」と言って、

 

 

あざ笑ひ=ハ行四段動詞「あざ笑ふ」の連用形

=接続助詞

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

立て=タ行四段動詞「立つ」の已然形

=存続の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

=代名詞

=格助詞

=名詞

=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

=疑問の係助詞、結びは連体形となるが、直後に「あら(ラ変動詞)/む(推量の助動詞)」が省略されている。係り結びの省略。

「にや(あらむ)。」→「~であろうか。」

良秀=名詞

=格助詞

よぢり不動=名詞

=格助詞

=接続助詞

=名詞

=格助詞

人々=名詞

愛で合へ=ハ行四段動詞「愛で合ふ(めであふ)」の已然形、褒め合う

=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

あざ笑ひてこそ立てりけれ。その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々()で合へり。

あざ笑って立っていた。その後であろうか、良秀のよじり不動といって、今でも人々が(その良秀の絵を)褒め合っている。

 

 

 宇治拾遺物語『絵仏師良秀』まとめ

 

 

 

 

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