「黒＝原文」・「赤＝解説」・「青＝現代語訳」
こ＝代名詞
の＝格助詞
児（ちご）＝名詞
養ふ＝ハ行四段動詞「養ふ」の連体形
ほど＝名詞
に＝格助詞
すくすくと＝副詞
大きに＝ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連用形
なりまさる＝ラ行四段動詞「なりまさる」の終止形。ますます～となっていく。
増さる（まさる）＝ラ行四段動詞、増える、強まる
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。
この子は、育てるにつれて、すくすくと大きく成長していく。
三月＝名詞
ばかり＝副助詞、（程度）～ほど・ぐらい。（限定）～だけ。
に＝格助詞
なる＝ラ行四段動詞「成る」の連体形
ほど＝名詞
に＝格助詞
よき＝ク活用の形容詞「良し」の連体形
ほど＝名詞
なる＝断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形
人＝名詞
に＝格助詞
なり＝ラ行四段動詞「成る」の連用形
ぬれ＝完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形
ば＝接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「～なので、～から」②偶然条件「～ところ・～と」③恒常条件「（～する）といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし～ならば」である。
髪上げ＝名詞
など＝副助詞
さうし＝サ変動詞「相す」の連用形、あれこれ手配する
て＝接続助詞
髪＝名詞
上げ＝ガ行下二段動詞「上ぐ」の未然形
させ＝使役の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。
裳＝名詞
着す＝サ行下二段動詞「着す」の終止形
三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。
三か月ほど経つうちに、人並みの背丈である人になってしまったので、髪上げなどの儀式をあれこれと手配して、髪を結い上げさせ、裳を着せる。
※成人式をしたということ
帳＝名詞
の＝格助詞
内＝名詞
より＝格助詞、（起点）～から。（手段・用法）～で。（経過点）～を通って。（即時：直前に連体形がきて）～するやいなや。
も＝係助詞
出ださ＝サ行四段動詞「出だす」の未然形
ず＝打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形
いつき＝カ行四段動詞「傅く（いつく）」の連用形、神に仕えるように大切に育てる
養ふ＝ハ行四段動詞「養ふ」の終止形
帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。
几帳の中からも出さず、大切に育てる。
こ=代名詞
の＝格助詞
児＝名詞
の＝格助詞
かたち＝名詞、姿、外形、顔つき
けうらなる＝ナリ活用の形容動詞「清らなり」の連体形、美しい
こと＝名詞
世＝名詞
に=格助詞
なく＝ク活用の形容詞「無し」の連用形
世になし＝この世にいない。この上ない、またとない。身分が低い。
屋＝名詞
の＝格助詞
内＝名詞
は＝係助詞
暗き＝ク活用の形容詞「暗し」の連体形
所＝名詞
なく＝ク活用の形容詞「無し」の連用形
光＝名詞
満ち＝タ行四段動詞「満つ」の連用形
たり＝存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
この児のかたちけうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。
この子の容貌の清らかで美しいことはこの世に比べるものもないほどで、家の中は暗い所もないぐらい光が満ちている。
翁＝名詞
心地＝名詞
あしく＝シク活用の形容詞「悪し」の連用形。悪い。「よし＞よろし≧普通≧わろし＞あし」みたいなイメージ。
苦しき＝シク活用の形容詞「苦し」の連体形
時＝名詞
も＝係助詞
こ＝代名詞
の＝格助詞
子＝名詞
を＝格助詞
見れ＝マ行上一段動詞「見る」の已然形
ば＝接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「～ところ・～と」の意味で使われている。
苦しき＝シク活用の形容詞「苦し」の連体形
事＝名詞
も＝係助詞
止み＝マ行四段動詞「止む（やむ）」の連用形
ぬ＝完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
腹立たしき＝シク活用の形容詞「腹立たし」の連体形
こと＝名詞
も＝係助詞
慰み＝マ行四段動詞「慰む」の連用形
けり＝過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形
翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しき事も止みぬ。腹立たしきことも慰みけり。
翁は、気分が悪く苦しい時も、この子を見ると、苦しい気持ちもおさまってしまう。腹立たしい気持ちも慰むのだった。
翁＝名詞
竹＝名詞
を＝格助詞
取る＝ラ行四段動詞「取る」の連体形
こと＝名詞
久しく＝シク活用の形容詞「久し」の連用形
なり＝ラ行四段動詞「成る」の連用形
ぬ＝完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
勢ひ＝名詞
猛（もう）＝ナリ活用の形容動詞「猛なり（もうなり）」の語幹
の＝格助詞
者＝名詞
に＝格助詞
なり＝ラ行四段動詞「成る」の連用形
に＝完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形
けり＝過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形
翁、竹取ること久しくなりぬ。勢ひ猛の者になりにけり。
翁は、竹を取ることが長く続いた。勢力の盛んな者になった。
こ＝代名詞
の＝格助詞
子＝名詞
いと＝副詞
大きに＝ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連用形
なり＝ラ行四段動詞「成る」の連用形
ぬれ＝完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形
ば＝接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「～なので、～から」の意味で使われている。
名＝名詞
を＝格助詞
三室戸斎部（みむろといむべ）＝名詞
の＝格助詞
秋田＝名詞
を＝格助詞
呼び＝バ行四段動詞「呼ぶ」の連用形
て＝接続助詞
つけ＝カ行下二段動詞「付く」の未然形
さす＝使役の助動詞「さす」の終止形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。
この子いと大きになりぬれば、名を三室戸斎部の秋田を呼びてつけさす。
この子がたいそう大きくなったので、名前を三室戸斎部の秋田を呼んで名付けさせる。
秋田＝名詞
なよ竹のかぐや姫＝名詞
と＝格助詞
つけ＝カ行下二段動詞「付く」の連用形
つ＝完了の助動詞「つ」の終止形、接続は連用形
秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。
秋田は、なよ竹のかぐや姫と名づけた。
こ＝代名詞
の＝格助詞
ほど＝名詞
三日＝名詞
うちあげ＝ガ行下二段動詞「うちあぐ」の連用形、宴会を開く
遊ぶ＝バ行四段動詞「遊ぶ」の終止形
よろづ（万）＝名詞、すべてのこと、あらゆること。
の＝格助詞
遊び＝名詞
を＝格助詞
ぞ＝強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
し＝サ変動詞「す」の連用形、する
ける＝過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。係り結びとなる係助詞は「ぞ・なむ・や・か・こそ」とあるが、「ぞ・なむ・や・か」の結びは連体形となり、「こそ」の結びは已然形となる。「ぞ・なむ・こそ」は強調の意味である時がほとんどで、訳す際には無視して訳す感じになる。「よろづの遊びをぞしける。」→「よろづの遊びをしけり。」
このほど三日うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。
この時三日間、宴会を開いて管弦の遊びをした。あらゆる管弦の遊びをした。
男＝名詞
は＝係助詞
うけきらは＝ハ行四段動詞「うけきらふ」の未然形
ず＝打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形
呼び集へ＝バ行四段動詞「呼び集ふ（つどふ）」の連用形
て＝接続助詞
いと＝副詞
かしこく＝ク活用の形容詞「畏し／賢し（かしこし）」の連用形。連用形だと「たいそう、非常に」の意味。その他の意味として、恐れ多い、尊い。もったいない、かたじけない。賢い、優れている。
遊ぶ＝バ行四段動詞「遊ぶ」の終止形
男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。
男はだれかれかまわず呼び集めて、たいそう盛大に管弦の遊びをする。
世界＝名詞
の＝格助詞
男＝名詞
あてなる＝ナリ活用の形容動詞「貴なり（あてなり）」の連体形、身分が高い、高貴である。上品だ、優雅だ。
も＝係助詞
いやしき＝シク活用の形容詞「卑し（いやし）」の連体形、身分が低い
も＝係助詞
いかで＝副詞、願望を表す、なんとかして、どうにかして
こ＝代名詞
の＝格助詞
かぐや姫＝名詞
を＝格助詞
得（え）＝ア行下二段動詞「得（う）」の連用形。ア行下二段活用の動詞は「得（う）」・「心得（こころう）」・「所得（ところう）」の３つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。
てしかな＝願望の終助詞、～たいなあ
見＝マ行上一段動詞「見る」の連用形
てしかな＝願望の終助詞、～たいなあ
と＝格助詞
音＝名詞
に＝格助詞
聞き＝カ行四段動詞「聞く」の連用形
音に聞く＝うわさに聞く。有名である。
めで＝ダ行下二段動詞「愛づ・賞づ（めづ）」の連用形、好む、かわいがる。ほめる、賞賛する
て＝接続助詞
惑ふ＝ハ行四段動詞「惑ふ」の終止形
世界の男、あてなるもいやしきも、いかでこのかぐや姫を得てしかな、見てしかなと、音に聞きめでて惑ふ。
世の中の男は、身分が高い者も低い者も、どうにかしてこのかぐや姫を妻にしたいものだ、見たいものだと、うわさに聞き、心惹かれて思いが乱れる。