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伊勢物語『筒井筒』解説・品詞分解(2)

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 伊勢物語『筒井筒』まとめ

 

さて年ごろ 経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに

 

さて=接続詞、(話題を変えるときに、文頭において)さて、そして、ところで、それで

 

年ごろ=名詞、長年、数年間、長い間

 

経る(ふる)=ハ行下二段動詞「経(ふ)」の連体形

 

頼り・便り(たより)=名詞、頼りどころ、縁故。良い機会、事のついで。便宜、手段。消息、手紙、訪れ。ぐあい、配置。

 

ままに=~にまかせて、思うままに。~するとすぐに。(原因・理由)…なので。「まま(名詞/に(格助詞)」

 

そして、数年たつうちに、女は親を亡くし、生活の頼りとなるところを失うにつれて、

 

 

もろともに 言ふかひなくあら   とて、

 

もろともに=副詞、いっしょに

 

言ふかひなく=ク活用の形容詞「言ふかひなし」の連用形、言っても仕方がない、言っても何にもならない、どうしようもない。(幼く)わきまえがない、聞き分けがない。

 

あら=ラ変動詞「あり」の未然形

 

む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

や=反語・疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

(男は、女と)一緒に、どうしようもなくみじめに暮らしていられようか(、いや、よくない、)と思って、

 

 

河内(こうち)の国高安(たかやす)(こおり)に、行き通ふ所出で来  けり

 

出で来(き)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形。

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

河内の国の高安の郡に、通って行く(女の)所ができてしまった。



 

さり けれ 

 

さり=ラ変動詞「然り(さり)」の連用形、そうだ、そうである。適切である、ふさわしい、しかるべきだ。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく

 

そうではあったけれど、

 

 

このもとの女、悪しと思へ けしきもなくて、出だしやり けれ 

 

悪し=ク活用の形容詞「悪し(あし)」の終止形、悪い。対義語は「良し(よし)」。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然家・四段なら已然形

 

気色(けしき)=名詞、様子、状態。ありさま、態度、そぶり。

 

出だしやり=ラ行四段動詞「出だし遣る(いだしやる)」の連用形、送り出す。

遣る(やる)=ラ行四段動詞、行かせる。送る、与える。(気分を)晴らす。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

このもとの女は、(男が河内へ行くのを)嫌だと思っている様子もなくて、(男を)送り出していたので、

 

 

男、異心ありてかかる   あら と思ひ疑ひて、

 

異心(ことごころ)=名詞、他の事を思う心、浮気心。

 

かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

あら=ラ変動詞「あり」の未然形

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

男は、(妻も)浮気心があってこのよう(な様子)であるのではないだろうかと思い疑って、

 

 

前栽の中に隠れゐて、河内へ往ぬる顔にて見れ

 

前栽(せんざい)=名詞、庭の植え込み、庭の木などを植えてある所

 

隠れゐ=ワ行上一段動詞「隠れ居る」の連用形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

 

往ぬる=ナ変動詞「往ぬ(いぬ)」の連体形、行ってしまう、去る。ナ行変格活用の動詞は「死ぬ・往(い)ぬ・去(い)ぬ」

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

庭の植え込みの中に隠れていて、河内へ行ったふりをして見ていると、

 

 

この女、いとよう 化粧じて、うちながめて、

 

よう=ク活用の形容詞「良し(よし)」の連用形が音便化したもの、対義語は「悪し(あし)」。「よし>よろし≧普通≧わろし>あし」みたいなイメージ。

 

化粧じ=サ変動詞「化粧ず(けしょうず)」の連用形、化粧をする。  「名詞+す(サ変動詞)」で一つのサ変動詞になるものがいくらかある。例:「音す」、「愛す」、「ご覧ず」

 

ながめ=マ行下二段動詞「眺む(ながむ)」の連用形、じっとみる、眺める。物思いに沈む。「詠む(ながむ)」だと詩歌などを読む、つくるといった意味もある。

「うち」は接頭語。

 

この女は、たいそう美しく化粧をして、(物思いに沈んで)外を眺めて、



 

風吹けば  (おき)(しら)(なみ)  たつた山  夜半(よは)にや君が  ひとり越ゆらむ

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

つ=格助詞。連体修飾語を作る役割をする。

「沖つ白波」→「沖の白波」

 

や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

越ゆ=ヤ行下二段動詞「越ゆ(こゆ)」の終止形

 

らむ=現在推量の助動詞「らむ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。基本的に「らむ」は文末に来ると「現在推量・現在の原因推量」、文中に来ると「現在の伝聞・現在の婉曲」

 

※序詞…ある語句を導き出すために前置きとして述べることば

風吹けば沖つ白波(一句・二句)=「たつ」を導き出す序詞。序詞は前置きなので、作者の言いたいことは三句以降の部分である。たいてい序詞の最後は「~のように」と訳す。

序詞を探すときのポイント(あくまで参考)。今回の和歌では下記の①に当てはまる。

①掛詞の直前 

例:春日野の/若紫の/すりごろも(ここまでが序詞)/しのぶの乱れ/かぎりしられず(しのぶ=掛詞、しのぶずりの「しのぶ」と恋い偲ぶ「偲ぶ」が掛けられている。)

②句の末尾が「の」 

例:あしびきの/山鳥の尾の/しだり尾の(ここまでが序詞)/ながながし夜を/ひとりかも寝む

③同じ言葉が繰り返して使われている部分 

例:多摩川に/さらす手作り(ここまでが序詞)/さらさらに/なにぞこの児(こ)の/ここだかなしき

 

※掛詞…同音異義を利用して、一つの語に二つ以上の意味を持たせたもの。読者に意味を一つに限定されない配慮としてひらがなとして書かれることが多い。

掛詞を探すときのポイント(いずれも例外有り)

①ひらがなの部分

②和歌に至るまでの経緯で出て来た単語

③地名などの固有名詞

今回の和歌では①②が当てはまる。

 

たつ=波が立つの「立つ」と龍田山の「龍(たつ)」が掛けられている。

 

風吹けば  沖つ白波  たつた山  夜半にや君が  ひとり越ゆらむ

風が吹くと沖の白波が立つという、その龍田山を、夜中にあなたはたった一人で越えているのだろうか。

 

 

とよみけるを聞きて、かぎりなくかなしと思ひて、河内へも行か なり  けり

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

かなし=シク活用の形容詞「愛し/悲し・哀し(かなし)」の終止形。かわいい、いとおしい/かわいそうだ、心が痛む。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

と詠んだのを聞いて、(男は)この上なくいとおしいと思って、河内(の女の所)へも行かなくなってしまった。

 

 

続きはこちら伊勢物語『筒井筒』解説・品詞分解(3)

 

伊勢物語『筒井筒』まとめ

 

 

 

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