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徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』解説・品詞分解

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳のみはこちら徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』現代語訳

 

(つく)()に、なにがし(おう)(りょう)使()などいふやうなるもののあり けるが、

 

なにがし=だれそれ。どこそこ。何とか。

 

やうなる=比況の助動詞「やうなり」の連体形

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

筑紫に、なにがしの押領使とかいうような者がいたが、

 

 

(つち)(おお)()よろづに いみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひけること、年久しく なり 

 

よろづに=副詞、あれこれに、さまざまに

(万)よろづ=名詞、すべてのこと、あらゆること。

 

いみじき=シク活用の形容詞「いみじ」の連体形、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

久しく=シク活用の形容詞「久し」の連用形

 

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

大根を、あらゆることによく効く薬だと思って、毎朝二つずつ焼いて食べることが、長年にわたっていた。

 

 

ある時、(たち)の内に人もなかり ける 隙(ひま)をはかりて、(かたき)(おそ)来たりて囲み攻めけるに、

 

なかり=ク活用の形容詞「無し」の連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「ける」も同じ。

 

隙・暇(ひま)=名詞、すきま、油断。物と物との間。余暇。

 

来たり=ラ行四段動詞「来たる」の連用形

 

ある時、屋敷の中に人のいなかったすきを見計らって、敵が襲い来て囲んで攻めた時に、

 

 

館の内に(つわもの)二人出で来て、命を惜しま戦ひて、皆追ひ返してげり

 

出で来(き)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形。直後に接続助詞「て」がきたら連用形となるため、「出で来(き)」と読む。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

てげり=下記の「て」と「けり」が合わさったもので、強調して「てんげり」、「てげり」などと言うことがある。

て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形

げり=過去の助動詞「けり」の終止形が濁ったもの、接続は連用形

 

屋敷の内に武士が二人出て来て、命を惜しまず戦って、皆追い返してしまった。



 

いと不思議におぼえて、「日ごろここにものし 給ふとも 人々の、

 

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の連用形、自然に思われる、感じる、思われる。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。

 

日ごろ=名詞、ふだん。数日間。

 

ものし=サ変動詞「物す(ものす)」の連用形、代動詞、「~する」、ある、いる、行く、来る、生まれる、などいろいろな動詞の代わりに使う。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語

 

見=マ行上一段活用「見る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

たいそう不思議に思って、「普段はここにいらっしゃるとも見えない方々が、

 

 

かく戦ひ 給ふは、いかなる」と問ひけれ 

 

斯く(かく)=副詞、このように、こう

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語

 

いかなる=ナリ活用の形容動詞「いかなり」の連体形。どのようだ、どういうふうだ。

 

ぞ=強調の係助詞

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

このように戦いなさったのは、どういうお方ですか。」と尋ねたところ、

 

 

(とし)ごろ頼みて、朝な朝な召し つる土大根ら(そうろ)。」

 

年ごろ=名詞、長年、長年の間

 

頼み=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の連用形。頼みに思う、あてにする。

※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。

 

召し=サ行四段動詞「召す」の連用形、尊敬語、召し上がる、お食べになる。呼び寄せる。

 

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

候ふ=補助動詞ハ行四段「候ふ(さうらふ)」の終止形、丁寧語。

※「候ふ」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の意味である。

 

「(あなたが)長年頼みに思って、毎朝召し上がっていた大根たちでございます。」



 

と言ひて失せ  けり

 

失せ=サ行下二段動詞「失す」の連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

と言って(その二人の武士は)消えてしまった。

 

 

深く信を致しぬれ かかる徳もあり ける  こそ

 

ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう

 

徳=名詞、ご利益、恵み、功徳

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となるはずだが、ここでは省略されている。「あら(ラ変・未然形)め(推量の助動詞・已然形)」、「あり(ラ変・連用形)けめ(過去推量の助動詞・已然形)」などが省略されていると考えられる。係り結びの省略。

※今回のように係助詞の前に「に(断定の助動詞)」がついている時は「あり(ラ変動詞)」などが省略されている。場合によって敬語になったり、助動詞がついたりする。

「にや・にか」だと、「ある・侍る(「あり」の丁寧語)・あらむ・ありけむ」など

「にこそ」だと、「あれ・侍れ・あらめ・ありけめ」など

 

深く信じきっていたので、このようなご利益もあったのだろう。

 

 

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問題はこちら徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』問題(単語・用言・助動詞) 

 

徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』まとめ

 

 

 

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