「黒=原文」・「青=現代語訳」
解説・品詞分解はこちら堤中納言物語『虫めづる姫君』(3)解説・品詞分解
この虫どもとらふる童べには、をかしきもの、かれが欲しがるものを賜へば、
この虫どもを捕まえる子供達には、趣のある物や、その子が欲しがる物をお与えになるので、
さまざまにおそろしげなる虫どもをとりあつめて奉る。
(子供達は)さまざまに恐ろしそうな虫を採集して(姫君に)差し上げる。
「かは虫は、毛などはをかしげなれど、おぼえねば、さうざうし。」とて、
「毛虫は、毛などは趣深くて良いけれど、(毛虫に関する故事や詩歌が)思い浮かばないので、物足りない。」と(姫君は)言って、
いぼじり、かたつぶりなどをとりあつめて、歌ひののしらせて聞かせ給ひて、
カマキリやカタツムリなどを採集して、(子供たちに)大声で歌い騒がせてお聞きになって、
われも声をうちあげて、「かたつぶりの、つのの、あらそふや、なぞ。」といふことをうち誦じ給ふ。
姫自身も声を上げて、「カタツムリの、角の、争うのは、なぜなのか。」というようなことを歌いなさった。
童べの名は、例のやうなるはわびしとて、
子供達の名前は、よくあるありきたりな名前なのはつまらないと言って、
虫の名をなむつけ給ひたりける。
虫の名前をお付けになった。
けらを、ひきまろ、いなかたち、いなごまろ、あまひこなどなむつけて、召し使ひ給ひける。
けらお、ひきまろ、いなかたち、いなごまろ、あまひこ、などと名付けて、召し使いなさった。
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