青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
病膏肓に入る(やまいこうこうにいる)=病気がひどくなり、治しようがなくなること。何かに熱中しすぎて、どうにも抜け出せなくなること。
晋ノ景公疾病ナリ。求二ム医ヲ于秦一ニ。
晋の景公疾病なり。医を秦に求む。
※于=置き字(場所)
晋の景公は病気が重かった。(そこで)医者を秦に(派遣するよう)求めた。
秦伯使二ム医ノ緩ヲシテ為一レメ之ヲ。未レダ/ルニ至ラ、公ノ夢ニ、
秦伯医の緩をして之を為めしむ。未だ至らざるに、公の夢に、
※使=使役「使二ムAヲシテB一(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」
※「未ニダ ~ 一(セ)」=再読文字、「未だ ~(せ)ず」、「まだ ~(し)ない」
秦伯(=秦の君主)は緩を派遣して景公を治療させることにした。まだ(緩が)到着しないうちに、景公の夢に、
疾為二リテ二竪子一ト曰ハク、「彼ハ良医也。懼レル傷ツケンコトヲ我ヲ。焉クニカ逃レレント之ヲ。」
疾二竪子と為りて曰はく、「彼は良医なり。我を傷つけんことを懼る。焉くかに之を逃れん。」と。
※「焉クニ(カ) ~」=疑問、「どこに ~か」
病気が二人の子供になって、言うことには、「彼(=緩)は良い医者である。我々を傷つけるだろう。どこに治療を逃れようか。」と。
其ノ一曰ハク、「 居二ラバ肓之上、膏之下一ニ、若レ我ヲ何セント。」
其の一曰はく、「盲の上、膏び下に居らば、我を若何せん。」と。
※「若ニ ~一ヲ何セン」=反語・疑問、「 ~を若何せん」、「 ~をどうしたらよいか。(いや、どうしようもない。)」
もう一人の子供が言うことには、「肓の上、膏の下にいれば、我々をどうすることができるだろうか。(いや、できないだろう。)」と。
医至リテ曰ハク、「疾不レル可レカラ為ム也。在二リ肓之上、膏之下一ニ、攻レムルハ之ヲ不可ナリ。
医至りて曰はく、「疾為むべからざるなり。盲の上、膏の下に在り、之を攻むるは不可なり。
医者が到着して言うことには、「病気を治すことはできません。肓の上、膏の下にあり、これを治療することは不可能です。
達レセントスルモ之ニ不レ及バ、薬不レ至ラ焉。不レル可レカラ為ム也ト。」
之に達せんとするも及ばず。、薬至らず。為むべからざるなり。」と
※焉=置き字(断定・強調)
針を打っても届かず、薬もいきわたりません。治療することができません。」と。
公曰ハク、「良医也ト。」 厚ク為二シテ之ガ礼一ヲ而帰レラシム之ヲ。
公曰はく、「良医なり」と。厚く之が礼を為して之を帰らしむ。
※使役=「~(セ)シム。」→「~させる。」 文脈から判断して使役の意味でとらえることがある。
景公が言うことには、「良い医者だ」と。厚く診察の礼をして緩を帰らせた。