フロンティア古典教室

伊勢物語『小野の雪』解説・品詞分解

      2016/09/12

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳のみはこちら伊勢物語『小野の雪』現代語訳

 

むかし、水無瀬(みなせ)に通ひ給ひ (これ)(たか)(のみ)() 狩りおはします供に、馬の(かみ)なる(おきな)仕うまつれ 

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

例(れい)=名詞、いつもの事、普段。当たり前の事、普通。

 

の=連用格の格助詞、「~のように」と訳す。

散文の場合は「例の+用言」と言う使い方で「いつものように~」と訳す。

韻文(和歌など)の場合は2句と3句の末尾に「の」来て、連用格として使われることがよくある。また、その場合序詞となる。

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

おはします=サ行四段動詞「おはします」の連体形。「あり・居り・行く・来」の尊敬語。「おはす」より敬意が高い言い方。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形

 

仕うまつれ=ラ行四段動詞「仕へまつる(つかへまつる)」の已然形が音便化したもの。「仕ふ」の謙譲語。お仕え申し上げる。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

り=完了の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

昔、水無瀬(の離宮)にお通いになった惟喬親王が、いつものように鷹狩りをしにいらっしゃるお供に、馬の頭である翁がお仕え申し上げていた。

 

 

日ごろ て、に帰り給う けり

 

日ごろ=名詞、数日間。ふだん

 

経=ハ行下二段動詞「経(ふ)」の連用形

 

宮(みや)=名詞、皇族。皇族の住居、皇居、宮中。

 

給う=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形が音便化したもの、尊敬語。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

数日ほど過ぎて、(京にある)宮中に(惟喬親王は)帰りなさった。

 

 

御送りして、とく 往な と思ふに、

 

とく(疾く)=副詞、早く

 

往な=ナ変動詞「往ぬ(いぬ)」の未然形、立ち去る、行ってしまう。ナ行変格活用の動詞は「死ぬ・往ぬ(いぬ)・去ぬ(いぬ)」

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

(翁は、惟喬親王を宮中まで)お送りして、早く帰ろうと思うのに、

 

 

(おお)()()給ひ 給は とて、遣はさ ざり けり

 

給ひ=ハ行四段動詞「給ふ・賜ふ(たまふ)」の連用形。「与ふ」・「授く」などの尊敬語。お与えになる、くださる。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

禄(ろく)=名詞、褒美(ほうび)、祝儀。給与、俸禄(ほうろく)

 

給は=ハ行四段動詞「給ふ・賜ふ(たまふ)」の未然形。上記の「給ひ」と同じ。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

遣はさ=サ行四段動詞「遣はす(つかはす)」の未然形、「遣る」・「与ふ」・「贈る」の尊敬語。派遣する、使いを送る。(物を)お与えになる。

 

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

(惟喬親王は翁に)お酒をお与えになり、褒美をお与えになろうとして、(翁を)お帰しにならなかった。

 

 

この馬の頭、心もとながりて、

 

心もとながり=ラ行四段動詞「心もとながる」の連用形。じれったく思う、待ち遠しく思う

 

この馬の頭である翁は、じれったく思って、

 

 

枕とて  草ひき結ぶ  ことも   秋の夜とだに  頼ま  なく

 

せ=サ変動詞「す」の未然形、する。

 

じ=打消意志の助動詞「じ」の終止形、接続は未然形。

 

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。

 

頼ま=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の未然形。頼みに思う、あてにする。

※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。

 

れ=可能の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。「る」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。平安以前では下に打消が来て「可能」の意味で用いられることが多い。平安以前では「可能」の意味の時は下に「打消」が来るということだが、下に「打消」が来ているからといって「可能」だとは限らない。鎌倉以降は「る・らる」単体でも可能の意味で用いられるようになった。

 

なく=連語。「な」+「く」。

「な」=打消の助動詞「ず」の古い未然形、接続は未然形

「く」=名詞形を作る接尾語

 

枕とて  草ひき結ぶ  こともせじ  秋の夜とだに  たのまれなくに

枕にしようとして草をひき結ぶこと(=旅の仮寝・野宿)もしますまい。(今は夜が短い春なので、)秋の(長い)夜だとさえ頼みに思うこともできないのに

※今は春で、夜も短いのでゆっくりしてはおられず、早く帰してほしいという旨。

 

 

と詠みける。時は三月(やよい)つごもり なり けり

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

つごもり=名詞、末ごろ、月の下旬・最終日。晦日(つごもり)。対義語は「朔日(ついたち)」

 

なり=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

と詠んだ。時は三月の末であった。

 

 

親王大殿籠ら 明かし給う  けり

 

大殿籠ら=ラ行四段動詞「大殿籠る(おおとのごもる)」の未然形、「寝る」の最高敬語。おやすみになる。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

給う=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形が音便化したもの、尊敬語。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

(結局、)親王はお休みにならないで、夜を明かしなさった。

 

 

かく  つつ 詣で 仕うまつり けるを、

 

斯く(かく)=副詞、こう、このように

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、ここでは①反復「~しては~」の意味。

 

詣で=ダ行下二段動詞「詣づ/参づ(もうづ)」の連用形、「行く」の謙譲語。参る、参上する。お参りする。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

仕うまつり=ラ行四段動詞「仕へまつる(つかへまつる)」の連用形が音便化したもの。「仕ふ」の謙譲語。お仕え申し上げる。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

このようにしては、(惟喬親王のもとに)参上してお仕え申し上げていたのに、

 

 

思ひのほかに()(ぐし)下ろし給う  けり

 

思ひのほかに=ナリ活用の形容動詞「思ひの他なり」の連用形、意外だ、思いがけないことだ。

 

給う=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形が音便化したもの、尊敬語。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

思いがけないことに、(惟喬親王は)御髪をお切りになって(出家して)しまった。

 

 

正月に(おが)奉ら とて、小野(おの)詣で たるに、()()の山の(ふもと)なれ 、雪いと高し。

 

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」の未然形、謙譲語。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

詣で=ダ行下二段動詞「詣づ/参づ(もうづ)」の連用形、「行く」の謙譲語。参る、参上する。お参りする。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

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なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

(翁は)正月にお会いしようと思って、小野に参上したところ、(そこは)比叡山の麓であるので、雪がたいそう高く積もっている。

 

 

()ひて御室に詣でて拝み奉るに、つれづれといともの悲しくておはしまし けれ 

 

詣で=ダ行下二段動詞「詣づ/参づ(もうづ)」の連用形、「行く」の謙譲語。参る、参上する。お参りする。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

奉る=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」の連体形、謙譲語。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

つれづれと=副詞、手持ちぶさたで、することがなく退屈で。しみじみともの寂しく。

 

おはしまし=サ行四段動詞「おはします」の連用形。「あり・居り・行く・来」の尊敬語。「おはす」より敬意が高い言い方。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

(雪の中を)強行して(惟喬親王がいる)御庵室に参上してお会いすると、(惟喬親王は)手持ちぶさたでたいそうもの悲しそうな様子でいらっしゃったので、

 

 

やや久しく候ひて、いにしへのことなど思ひ出で聞こえ けり

 

やや=副詞、しだいに、だんだん。ちょっと、いくらか。

 

候ひ=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連用形、謙譲語。お仕え申し上げる、おそばにいる。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

※「候ふ(さぶらふ)・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

聞こえ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

いくらか長い時間おそばにいて、昔のことなどを思い出して、お話し申し上げた。

 

 

さても 候ひ てしがなと思へ公事どもありけれ 

 

さても=副詞、そういう状態でも、それにしても、そのままでも、そうであっても

 

候ひ=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連用形、謙譲語。お仕え申し上げる、おそばにいる。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

てしがな=願望の終助詞

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

公事(おおやけごと)=名詞、公務、宮中での仕事、宮中で行われる行事や儀式。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

(翁は)そのままお仕えしたいと思うけれど、宮中での仕事などがあったので、

 

 

 候は 、夕暮に帰るとて、

 

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

 

候は=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の未然形、謙譲語。お仕え申し上げる、おそばにいる。動作の対象である惟喬親王を敬っている。作者からの敬意。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

お仕えすることができなくて、夕暮れに帰るということで、

 

 

忘れては  夢 思ふ  思ひ   雪ふみわけて  君を見とは

 

か=疑問の係助詞

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

思ふ=ハ行四段動詞「思ふ」の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

き=過去の助動詞「き」の終止形、接続は連用形

 

や=反語・疑問の係助詞

 

む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

忘れては  夢かとぞ思ふ  思ひきや  雪ふみわけて  君を見むとは

(現実を)忘れて夢ではないかと思います。(かつて)思ったでしょうか(、いえ、思いもしませんでした)、雪を踏み分けてあなたにお会いするだろうとは。

 

 

とてなむ泣く泣く  ける

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び

 

来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

と詠んで、泣く泣く帰って来たのであった。

 

 

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