フロンティア古典教室

無名草子『清少納言』解説・品詞分解(1)

      2015/11/04

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちら無名草子『清少納言』(1)(2)現代語訳

 

 

「すべて、余りになりぬる人の、そのまま侍る(ためし)

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

侍り=ラ変動詞「侍り(はべり)」の連用形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手である聞き手を敬っている。話し手からの敬意。

※「候(さぶら)ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

総じて、あまりにも度が過ぎてしまった人が、そのままでいらっしゃる例は、

 

 

ありがたき わざ  こそ  めれ

 

ありがたき=ク活用の形容詞「有り難し」の連体形、めったにない、珍しい

 

わざ=名詞、こと、事の次第。おこなひ、動作、しわざ、仕事。仏事、法事、法会

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

あ=ラ変動詞「あり」の連体形が音便化して無表記になったもの、「ある」→「あん(音便化)」→「あ(無表記化)」

 

めれ=推定の助動詞「めり」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。

 

めったにないことであるようだ。

 

 

桧垣(ひがき)の子、清少納言は、一条院の位の御時、中関白(なかのくわんぱく)、世をしら  給ひ ける初め、

 

しら=ラ行四段動詞「知る/領る(しる)」の未然形、治める。領有する。知る、認識する。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ひ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である中の関白を敬っている。話し手からの敬意。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

桧垣の子である、清少納言は、一条院の在位の御代、中の関白(=藤原道隆)が、世の中を治めていらっしゃった初め、

 

 

皇太后宮の時めか  給ふ盛りに候ひ 給ひて、

 

時めか=カ行四段動詞「時めく」の未然形、時流に乗って栄える、もてはやされる。(天皇の)寵愛を受ける。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である皇太后宮(=中宮定子)を敬っている。話し手からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連体形、尊敬語。

 

候ひ=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連用形、謙譲語。お仕え申し上げる、お仕えする。動作の対象である皇太后宮(=中宮定子)を敬っている。話し手からの敬意。

※「候(さぶら)ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。動作の主体である清少納言を敬っている。話し手からの敬意。

 

皇太后宮(こうたいごうぐう)(=中宮(ちゅうぐう)定子(ていし))が帝の寵愛(ちょうあい)を受けていらっしゃる全盛期にお仕えになって、

 

 

人より優なる者とおぼしめさ  たり けるほどのことどもは、

 

おぼしめさ=サ行四段動詞「思し召す(おぼしめす)」の未然形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である皇太后宮(=中宮定子)を敬っている。

 

れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。「る」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

たり=存続の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

(清少納言が中宮定子に)他の人より優れている者と思われなさっていた頃のことなどは、

 

 

『枕草子』といふものに、自ら書きあらはして侍れ 、こまかに申すに及ば

 

侍れ=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連体形、丁寧語。言葉の受け手である聞き手を敬っている。話し手からの敬意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

申す=サ行四段動詞「申す」の連体形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である聞き手を敬っている。話し手からの敬意。

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

『枕草子』というものに、自分で書き表しておりますので、詳しく申し上げるには及びません。

 

 

歌詠みの(かた)こそ元輔(もとすけ)が娘て、さばかり なり けるほどよりは、

 

こそ=強調の係助詞。結びは已然形となるが、係り結びの消滅が起こっている。おそらく本来の結びは「に」の部分であるが、接続助詞「て」が来ているため、結びの部分が消滅してしまっている。これを「係り結びの消滅(流れ)」と言う。

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形。本来ならば係助詞「こそ」の結びとなるはずだが、接続助詞「て」が付いているせいで『係り結びの消滅』が起こっている。

 

さばかり=副詞、それほど、そのくらい。それほどまでに。「さ」と「ばかり」がくっついたもの。「さ」は副詞で、「そう、そのように」などの意味がある。

 

なり=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

歌を詠む方面では、(清原)元輔の娘であって、それほど(優れた歌人の娘)であったにしては、

 

 

すぐれざり ける おぼゆる

 

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

か=疑問の係助詞、結びは連体形となる。

 

や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。

 

おぼゆる=ヤ行下二段動詞「思ゆ(おぼゆ)」の連体形。係助詞「か」・「や」のどちらかを受けて連体形となっている。係り結び。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。訳:「(自然と)思われて」

 

優れていなかったのかと思われます。

 

 

()拾遺(しふゐ)』などにも、むげに少なう入りて侍る めり

 

むげに=ナリ活用の形容動詞「無下なり(むげなり)」の連用形、言いようもなくひどい、どうしようもない

 

侍る=補助動詞ラ変「侍り」の連体形、丁寧語。言葉の受け手である聞き手を敬っている。話し手からの敬意。

 

めり=婉曲の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。婉曲とは遠回しな表現。「~のような」と言った感じで訳す。

 

『後拾遺和歌集』などにも、ひどく少なく入っているようです。

 

 

みづからも思ひ知りて、申し請ひて、さやうのことには交じり侍ら ざり ける  

 

申し=サ行四段動詞「申す」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である皇太后宮(=中宮定子)を敬っている。話し手からの敬意。

 

さやう=ナリ活用の形容動詞「さやうなり」の語幹。そのよう、その通りだ。形容動詞の語幹+格助詞「の」=連体修飾語

 

侍ら=補助動詞ラ変「侍り」の連体形、丁寧語。言葉の受け手である聞き手を敬っている。話し手からの敬意。

 

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

や=疑問の係助詞

 

自分でも(和歌の才能がないことが)分かっていて、(中宮定子に)お願いして、そのような(和歌に関する)ことには関わらなかったのでしょうか。

 

 

さら は、いといみじかり けるもの こそ  めれ

 

さら=ラ変動詞「然り(さり)」の未然形、そうである

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

いみじかり=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

あ=ラ変動詞「あり」の連体形が音便化して無表記になったもの、「ある」→「あん(音便化)」→「あ(無表記化)」

 

めれ=推定の助動詞「めり」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。

 

そうでなくては、(入集された和歌が)たいそうひどく少なかったものであるようだ。

 

 

 続きはこちら無名草子『清少納言』(2)解説・品詞分解

 

問題はこちら無名草子『清少納言』(1)問題

 

  無名草子『清少納言』まとめ

 

 

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