青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
七言律詩。作者:杜甫(とほ)
風急ニ天高クシテ猿嘯哀シ
風急に天高くして猿嘯哀し
風は激しく吹き、空は高く(澄んでおり)、猿の鳴き声が悲しく響く。
渚清ク沙白クシテ鳥飛ビ廻ル
渚清く沙白くして鳥飛び廻る
(長江の)渚は清く砂は白く、鳥が飛び回っている。
無辺ノ落木ハ蕭蕭トシテ下リ
無辺の落木は蕭蕭として下り
見わたす限り広がっている枯れ木からは落葉がさらさらと落ち、
不尽ノ長江ハ滾滾トシテ来タル
不尽の長江滾滾として来たる
尽きることのない長江の水は、盛んに流れている。
万里悲秋常ニ作レリ客ト
万里悲秋常に客と作り
故郷から遠く離れて悲しい秋に、いつも(私は)旅人の身で、
百年多病独リ登レル台ニ
百年多病独り台に登る
生涯病気がちで、たったひとりで高台に登る。
艱難苦ダ恨ム繁霜ノ鬢
艱難苦だ恨む繁霜の鬢
(たび重なる)苦難のために霜が降りたように白くなった髪の毛がひどく恨めしいと思う。
潦倒新タニ停ム獨酒ノ杯
潦倒新たに停む獨酒の杯
年老いやつれた私は、(病のために)近頃は濁り酒を飲むことをやめた。
韻=哀・廻・来・台・杯
※七言詩は原則として第一句末と偶数句末で韻を踏む。
対句=第一句と第二句・第三句と第四句・第五句と第六句・第七句と第八句が対句となっている。首聯・頷聯・頸聯・尾聯、の四聯すべてが対句となっている。
※律詩は原則として第三句と第四句(頷聯)・第五句と第六句(頸聯)が必ず対句となる。