古文

大鏡『競べ弓(弓争い・競射)』(導入・締めくくり)品詞分解のみ

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

大鏡『競べ弓(弓争い・競射)』まとめ

 

 

『導入』

 

世間=名詞

=格助詞

=名詞

=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

=接続助詞

おはします=サ行四段動詞「おはします」の連体形。「あり・居り・行く・来」の尊敬語。「おはす」より敬意が高い言い方。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である殿(=藤原道長)を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

殿=名詞

=格助詞

一年=名詞

ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。

もの=名詞

=格助詞

安から=ク活用の形容詞「安し」の未然形

=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

思し召し=サ行四段動詞「思し召す(おぼしめす)」の連用形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である殿(=藤原道長)を敬っている。作者からの敬意。

たり=存続の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形

=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

=詠嘆の終助詞・間投助詞

 

世間の光にておはします殿の、一年ばかり、ものを安からず(おぼ)()したりしよ。

世間の光でいらっしゃる殿(=藤原道長)が、一年ほど、(伊周よりも出世が遅れて)心中穏やかでなくお思いでいらっしゃったよ。

 

 

いかに=副詞、どんなに、どう。「いかに」の中には係助詞「か」が含まれていて係り結びが起こる。

天道=名詞

御覧じ=サ変動詞「御覧ず(ごらんず)」の連用形、ご覧になる。動作の主体である天道を敬っている。作者からの敬意。

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。「いかに」の「か」を受けて連体形となっている。係り結び。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」。

 

いかに天道(てんとう)()(らん)じけむ。

(このことを)どのように天帝はご覧になったのでしょうか。

 

 

さりながら=接続詞

=係助詞

いささか=副詞、わずか、ほんの少し

逼気し=サ変動詞「逼気す」の連用形

御心=名詞

=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

倒さ=サ行四段動詞「倒す」の未然形

=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給へ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である殿(=藤原道長)を敬っている。作者からの敬意。

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。

=完了の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

さりながらも、いささか逼気(ひけ)し、御心やは倒させ(たま)へりし。

しかしながら、(道長は)少しでも卑屈になったり、悲観なさったりしたでしょうか。(いや、そのようなことはありませんでした。)

 

 

朝廷ざま(おおやけざま)=名詞

=格助詞

公事(くじ・おおやけごと)=名詞、公務、宮中での仕事、宮中で行われる行事や儀式。

作法=名詞

ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。

=格助詞

=係助詞

ある=ラ変動詞「あり」の連体形

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

ほど=名詞

=格助詞

ふるまひ=ハ行四段動詞「振る舞ふ」の連用形

=名詞

違ふ=ハ行四段動詞「違ふ」の連体形

こと=名詞

なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形

勤め=マ行下二段動詞「勤む」の未然形

させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である殿(=藤原道長)を敬っている。作者からの敬意。

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。

=接続助詞

 

朝廷(おおやけ)ざまの公事(くじ)・作法ばかりにはあるべきほどにふるまひ、時違ふことなく勤めさせ給ひて、

朝廷の公務や儀式だけには分相応にふるまい、時間を間違えることなくお勤めになって、

 

 

内々=名詞

=格助詞

=係助詞

=名詞

=係助詞

置き=カ行四段動詞「置く」の連用形

聞こえ=補助動詞ヤ行下二「聞こゆ」の連用形、謙譲語。動作の対象であるを敬っている。作者からの敬意。

させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である殿(=藤原道長)を敬っている。作者からの敬意。

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の未然形、尊敬語。

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

=強調の係助詞

かし=念押しの終助詞、文末に用いる、~よ。~ね。

 

内々には、所も置き聞こえさせ給はざりしぞかし。

(一方)私生活では、全くご遠慮申し上げたりはなさいませんでしたよ。

 

 

 

大鏡『競べ弓(弓争い・競射)』(本編)品詞分解のみ

 

 

『締めくくり』

 

今日=名詞

=格助詞

見ゆ=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の終止形

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

こと=名詞

なら=ラ行四段動詞「成る」の未然形

=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

=名詞

=格助詞

御さま=名詞

=格助詞

言ひ出で=ダ行下二段動詞「言ひ出づ」の連用形

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である道長を敬っている。

こと=名詞

=格助詞

=名詞

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

今日に見ゆべきことならねど、人の御さまの、言ひ出で給ふことの趣より、

今日ただちに実現するはずのことではないけれど、人(=道長)のご様子や、言い出しなさったことの内容から、

 

 

かたへ=名詞、片側、片方。一部分。傍ら、そば。同僚、仲間。

=係助詞

臆せ=サ変動詞「臆す」の未然形

られ=自発の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形。「る・らる」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である「かたへ(そばにいる人)」を敬っている。

なん=断定の助動詞「なり」の連体形が音便化したもの、接続は体言・連体形

めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変は連体形)。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。

 

かたへは(おく)せられ給ふなんめり。

そばにいる人は自然と気おくれなさったことであるようだ。

 

 

大鏡『競べ弓(弓争い・競射)』まとめ

 

 

 

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