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源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(2)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

  原文・現代語訳のみはこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(1)(2)

 

三日がほど、かのよりも、主の院方よりも、いかめしくめづらしきみやびを尽くし給ふ

 

彼の(かの)=あの、例の。「か(名詞)/の(格助詞)」と品詞分解する

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

いかめしく=シク活用形容詞「厳めし(いかめし)」の連用形。おごそかだ、威厳がある、立派だ。盛大だ。恐ろしい。

 

みやび=名詞、上品で優雅な事、風流、優雅

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である朱雀院と光源氏を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

三日の間は、あちらの院(=朱雀院)からも、主人の院(=光源氏)からも、厳かで珍しいほどの優雅をお尽くしになる。

 

 

対の上も事にふれて、ただに思さ  世のありさまなり

 

ただに=ナリ活用の形容動詞「直なり・徒なり(ただなり)」の連用形、普通だ、当たり前だ。直接だ、まっすぐだ。

 

思さ=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の未然形。「思ふ」の尊敬語。動作の主体である対の上(=紫の上)を敬っている。作者からの敬意。

 

れ=可能の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。「る」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。平安以前では下に打消が来て「可能」の意味で用いられることが多い。平安以前では「可能」の意味の時は下に「打消」が来るということだが、下に「打消」が来ているからといって「可能」だとは限らない。鎌倉以降は「る・らる」単体でも可能の意味で用いられるようになった。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

世=名詞、夫婦仲、男女の仲。世の中、世間。一生、生涯。時代。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

対の上(=紫の上)も何かにつけて、普通にもお思いになれない夫婦仲の様子である。

 

 

げにかかるにつけて、こよなく人に劣り消た るることもあるまじけれ 

 

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に。

 

かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう。

 

こよなく=ク活用の形容詞「こよなし」の連用形、(優劣にかかわらず)違いがはなはだしいこと、この上なく。

 

消た=タ行四段動詞「消つ(けつ)」の未然形、消す。けなす、そしる。圧倒する。

 

るる=受身の助動詞「る」の連体形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

まじけれ=打消推量の助動詞「まじ」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

実に、このようなこと(=光源氏と女三の宮との結婚)につけて、この上なく人(=女三の宮)にひけを取り圧倒されることもあるまいけれど、

 

 

また並ぶ人なくならひ給ひて、はなやかに生ひ先遠く、あなづりにくきけはひうつろひ 給へ に、

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

 

はなやかに=ナリ活用の形容動詞「華やかなり(はなやかなり)」の連用形、はなやかである、栄えている、きわだっている

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

うつろひ=ハ行四段動詞「移ろふ(うつろふ)」の連用形、移動する。色あせる、衰える。色が変わる。時間が過ぎる。

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である女三の宮を敬っている。作者からの敬意。

 

る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

また並ぶ人のいない状態に慣れていらっしゃっていたところに、(女三の宮が)華やかで年も若く、侮りがたい様子で移っていらっしゃったので、

並ぶ人なくならひ給ひて=光源氏の寵愛を受ける競争相手が紫の上にはいなかった。光源氏から最も寵愛を受けていたのは紫の上だったということ。



なまはしたなく 思さ るれ つれなくのみもてなして、

 

なまはしたなく=ク活用の形容詞「なまはしたなし」の連用形、なんとなくきまりが悪い

はしたなし=ク活用の形容詞、迷惑だ、不都合だ。中途半端だ。きまりが悪い。体裁が悪い。

 

思さ=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の未然形。「思ふ」の尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

 

るれ=自発の助動詞「る」の已然形、接続は未然形。「る・らる」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。

自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

つれなく=ク活用の形容詞「つれなし」の連用形、平然としている、素知らぬ顔だ。冷ややかだ、薄情だ、関心を示さない。「連れ無し」ということで、関連・関係がない様子ということに由来する。

 

もてなし=サ行四段動詞「もてなす」の連用形、取り扱う、処置する、ふるまう

 

(紫の上は)何となくきまりが悪くお思いにならずにはいられないけれど、ただ平然とふるまって、

 

 

御渡りのほども、もろ心にはかなきこともし出で 給ひて、いとらうたげなる御ありさまを、

 

はかなき=ク活用の形容詞「はかなし」の連体形、頼りない、むなしい。取るに足りない、つまらない。ちょっとした。

 

し出で=サ行四段動詞「為出づ(しいづ)」の連用形、作り出す、作り上げる。事を行う、成し遂げる。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

 

らうたげなる=ナリ活用の形容動詞「らうたげなり」の連体形、かわいらしい様子

 

お移りになる時も、(光源氏と)心を合わせてちょっとした事もしなさって、とてもかわいらしい(紫の上の)ご様子を、

 

 

いとど ありがたしと思ひ聞こえ 給ふ

 

いとど=副詞、いよいよ、ますます。その上さらに。

 

ありがたし=ク活用の形容詞「有り難し(ありがたし)」の終止形、めったにない、珍しい

 

聞こえ=補助動詞ヤ行下二「聞こゆ」の連用形、謙譲語。動作の対象である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

 

ますますめったにない(すばらしい人だ)と(光源氏は)思い申し上げなさる。

 

 

姫宮は、げにまだいと小さく、片なりに おはするうちにも、

 

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に。

 

片なりに=ナリ活用の形容動詞「片なりなり」の連用形、未熟だ。幼い、幼稚だ。

 

おはする=サ変動詞「おはす」の連体形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である姫宮(=女三の宮)を敬っている。作者からの敬意。

 

姫宮は、実にまだとても小さく、未熟でいらっしゃる中でも、

 

 

いといはけなき 気色して、ひたみちに若び給へ 

 

いはけなき=ク活用の形容詞「幼けなし(いはけなし)」の連体形、子供っぽい、あどけない。物心がつかない、無邪気だ。

 

気色(けしき)=名詞、様子、状態。ありさま、態度、そぶり。

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である女三の宮を敬っている。作者からの敬意。

 

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

たいそう幼稚な様子をしていて、ひたすら幼くていらっしゃっる。

 

 

 続きはこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(3)

 

源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(1)(2)

 

 源氏物語『女三の宮の降嫁』まとめ

 

 

 

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