「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
原文・現代語訳のみはこちら枕草子『うつくしきもの』現代語訳
うつくしきもの。瓜にかきたる児の顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。
うつくしき=シク活用の形容詞「美し」の連体形、かわいらしい、いとおしい。美しい、きれい。
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
する=サ変動詞「す」の連体形、する。
来る(くる)=カ変動詞「来(く)」の連体形
かわいらしいもの。瓜に描いた幼い子供の顔。すずめの子が、ねずみの鳴きまねをすると飛び跳ねて寄って来る様子。
二つ三つばかり なる児の、急ぎてはひ来る道に、いと小さき塵のあり けるを目ざとに見つけて、
ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。
なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形
あり=ラ変動詞「あり」の連用形
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
2、3歳ぐらいの子どもが、急いで這って来る途中で、とても小さい塵があったのを目ざとく見つけて、
いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せ たる、いとうつくし。
をかしげなる=ナリ活用の形容動詞「をかしげなり」の連体形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。美しい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。
見せ=サ行下二段動詞「見す」の連用形、見せる。
たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
うつくし=シク活用の形容詞「美し」の終止形、かわいらしい、いとおしい。美しい、きれい。
とてもかわいらしい指でつかまえて、大人などに見せている様子は、たいそうかわいらしい。
頭は尼そぎなる児の、目に髪の覆へるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見 たるも、うつくし。
なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形
る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
は=強調の係助詞。強調なので訳す際には無視しても構わない。
で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。
うちかたぶき=カ行四段動詞「うち傾く」の連用形、ちょっと首を傾ける、小首をかしげる。「うち」は接頭語で、「少し・ちょっと」などの意味がある。
見=マ行上一段活用「見る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
頭の髪はおかっぱにしている子供が、目に髪がかぶさっているのを払いのけもしないで、小首をかしげて物など見ているのも、かわいらしい。
大きにはあらぬ殿上童の、装束きたて られてありくもうつくし。
大きに=ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連用形
ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形
装束きたて=タ行下二段動詞「装束(しょうぞ)きたつ」の未然形、装束を着せる、立派な着物を着せる。
装束(しょうぞく)=名詞、衣服、服装、恰好
られ=受身の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。
ありく=カ行四段動詞「歩く(ありく)」の連体形、歩き回る、うろつく。動き回る。
大きくはない殿上童が、立派な着物を着せられて歩きまわる様子もかわいらしい。
をかしげなる児の、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝 たる、いとらうたし。
をかしげなる=ナリ活用の形容動詞「をかしげなり」の連体形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。美しい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。
あからさまに=ナリ活用の形容動詞「離(あか)らさまなり」の連用形、ちょっとの間、かりそめ。急だ、突然だ。
うつくしむ=マ行四段動詞「美しむ」の連体形、かわいがる、いとおしむ。大切にする
寝(ね)=ナ行下二段動詞「寝(ぬ)」の連用形
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
らうたし=ク活用の形容詞「らうたし」の終止形、かわいい、いとおしい。
かわいらしい子供が、少しの間抱いて遊ばせてかわいがっているうちに、しがみついて寝てしまうのも、たいへんかわいらしい。
雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを、池より取り上げたる。
調度(ちょうど)=名詞、身の回りの道具・家具など
より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや、
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
人形遊びの道具。蓮の浮き葉のとても小さいのを、池から取り上げたもの。
葵のいと小さき。なにもなにも、小さきものはみなうつくし。
うつくし=シク活用の形容詞「美し」の終止形、かわいらしい、いとおしい。美しい、きれい。
葵のたいへん小さいもの。何もかも、小さいものは全部かわいらしい。
いみじう白く肥えたる児の二つばかり なるが、二藍の薄物など、
いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても
たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。
なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形
たいそう色白で太っている子で2歳ぐらいなのが、二藍の薄物などを、
衣長にてたすき結ひたるがはひ出でたるも、また、短きが袖がちなる着てありくも、みなうつくし。
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「たる」も同じ。
ありく=カ行四段動詞「歩く(ありく)」の連体形、歩き回る、うろつく。動き回る。
丈が長いのを着て、たすきで結んでいる子が這い出てきたのも、また、丈の短い着物で袖が目立つものを着て歩きまわるのも、みなかわいらしい。
八つ、九つ、十ばかりなどの男児の、声は幼げにて書読みたる、いとうつくし。
幼げに=ナリ活用の形容動詞「幼げなり(おさなげなり)」の連用形
たる=存続の係助詞「たり」の連体形、接続は連用形
8、9、10歳ぐらい男の子が、幼い声で(漢文の)書物を読んでいる様子も、たいへんかわいらしい。
鶏のひなの足高に、白うをかしげに、衣短なるさまして、
をかしげに=ナリ活用の形容動詞「をかしげなり」の連用形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。美しい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。
し=サ変動詞「す」の連用形、する。
鶏のひなが足長な様子で、白くかわいらしげで、着物が短いような感じで、
ひよひよとかしがましう鳴きて、人のしりさきに立ちてありくもをかし。
かしがましう=シク活用の形容詞「かしがまし」の連用形が音便化したもの、やかましい、うるさい。
しりさき(後前・尻先)=名詞、後と先、後ろと前。
ありく=カ行四段動詞「歩く(ありく)」の連体形、歩き回る、うろつく。動き回る。
をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。
ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後や前に立って歩きまわるのもかわいらしい。
また親の、ともに連れて立ちて走るも、みなうつくし。雁の子。瑠璃の壺。
うつくし=シク活用の形容詞「美し」の終止形、かわいらしい、いとおしい。美しい、きれい。
また親鳥が一緒に連れ立って走るのも、みなかわいらしい。雁の卵。瑠璃の壺。(なども皆かわいらしい。)
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