古文

源氏物語『御法(紫の上の死・萩の上露)』品詞分解のみ(1)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

源氏物語『御法(紫の上の死・萩の上露)』まとめ

 

 

=名詞

待ちつけ=カ行下二段動詞「待ちつく」の連用形

=接続助詞

世の中=名詞

すこし=副詞

涼しく=シク活用の形容詞「涼し(すずし)」の連用形

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

=接続助詞

=係助詞

御心地(みここち)=名詞

=係助詞

いささか=副詞

さはやぐ=ガ行四段動詞「さはやぐ」の連体形

やう(様)=名詞、様子。わけ、理由。様式、手本。形、姿。方法。

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

秋待ちつけて、世の中すこし(すず)しくなりては、御心地もいささかさはやぐやうなれど、

待っていた秋になって、世の中が少し涼しくなってからは、ご気分も少しは良くなる様子であるけれど、

 

 

なほ=副詞、やはり。さらに。それでもやはり。

ともすれば=副詞、どうかすると、ややもすると。

かごとがまし=シク活用の形容詞「託言がまし(かごとがまし)」の終止形、言い訳めいている、恨み言を言うようだ、ぐちっぽい。

託つ(かこつ)=タ行四段動詞、不平・不満を言う、恨み嘆く。他のせいにする、口実にする、かこつける。

 

なほともすれば、かごとがまし。

やはりどうかすると、(病状について)恨み言を言いたくなる。

 

 

さるは=接続詞、そうではあるが、そのくせ。そうであるのは、それというのは。それは、その上、さらに。

=名詞

=格助詞

しむ=マ行四段動詞「染む・浸む(しむ)」の連体形

ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。

思さ=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の未然形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=自発の助動詞「る」の終止形、接続は未然形。「る・らる」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。

自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

秋風=名詞

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

さるは、身にしむばかり思さるべき秋風ならねど、

そうではあるが、身にしみるほどにお思いにならずにはいられないほどの秋風ではないけれど、

 

 

露けき=ク活用の形容詞「露けし」の連体形、涙がちである、露に濡れて湿っぽい。

折がちに=ナリ活用の形容詞「折がちなり」の連用形

折(おり)=名詞、時、場合、機会、季節。

=接続助詞

過ぐし=サ行四段動詞「過ぐす」の連用形

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

露けき折がちにて過ぐし給ふ。

(露でぬれるように)涙でしめりがちな日々を過ごしなさる。



 

中宮=名詞

=係助詞

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語。動作の対象である天皇を敬っている。作者からの敬意。

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる。

=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

=格助詞

する=サ変動詞「す」の連体形、する。

=格助詞

 

中宮は参り給ひなむとするを、

中宮は(宮中に)参内なさろうとするのを、

※中宮=明石の姫君。光源氏が須磨で出会った明石の入道の娘(=明石の君)との間に生まれた子。都に引っ越すことに気おくれする明石の君に代わって、紫の上が養女として育てた。

 

 

=副詞

しばし=副詞

=係助詞

御覧ぜよ=サ変動詞「御覧ず(ごらんず)」の命令形、ご覧になる。動作の主体である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

=格助詞

=係助詞

聞こえ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の未然形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

まほしう=希望・願望の助動詞「まほし」の連用形が音便化したもの、接続は未然形

思せ=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の已然形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

今しばしは御覧ぜよとも、聞こえまほしう思せども、

今しばらくは(私の容体を)御覧くださいとも、申し上げたくお思いになるけれども、

 

 

さかしき=シク活用の形容詞「賢し(さかし)」の連体形、利口ぶっている、小賢しい。しっかりしている。利口だ、優れている。

やう(様)=名詞、わけ、理由。様式、手本。形、姿。方法。

=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

=係助詞

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

内裏(うち・だいり)=名詞、天皇。宮中、内裏(だいり)。  宮中の主要な場所としては紫宸殿(ししんでん:重要な儀式を行う場所)や清涼殿(せいりょうでん:天皇が普段の生活を行う場所)などがある。

=格助詞

御使ひ=名詞

=格助詞

隙なき=ク活用の形容詞「隙なし(ひまなし)」の連体形、絶え間ない、頻繁だ。

=係助詞

わづらはしけれ=シク活用の形容詞「煩はし(わづらはし)」の已然形、面倒だ。不愉快だ、いやだ。複雑だ

=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

さかしきやうにもあり、内裏の御使ひの隙なきもわづらはしければ、

さしでがましいようでもあり、(中宮に参内を促す)天皇の使いの者が絶え間ないのもわずらわしいので、

 

 

=副詞、そう、その通りに、そのように。

=強調の係助詞

聞こえ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の未然形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=接続助詞

 

さも聞こえ給はぬに、

そのようにも申し上げなさらないが、

 

 

あなた=代名詞

=格助詞

=係助詞

=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

渡り=ラ行四段動詞「渡る」の連用形

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

=名詞

=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

渡り=ラ行四段動詞「渡る」の連用形

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

あなたにもえ渡り給はねば、宮ぞ渡り給ひける。

(紫の上は)あちら(=中宮のいるに二条院東の対)にもお渡りになることができないので、中宮が(紫の上がいる西の対へ)お渡りになった。



 

かたはらいたけれ=ク活用の形容詞「傍痛し(かたはらいたし)」の已然形、恥ずかしい、きまりが悪い。はたで見ていて苦々しい、いたたまれない。

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に。

=マ行上一段動詞「見る」の連用形

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」の未然形、謙譲語。動作の対象である中宮(=明石の姫君)を敬っている。作者からの敬意。

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=係助詞

かひなし=ク活用の形容詞「甲斐なし(かひなし)」の終止形、どうしようもない、効果がない、むだだ。

=格助詞

=接続助詞

 

かたはらいたけれど、げに見奉らぬもかひなしとて、

(紫の上は、病気の身で)恥ずかしいけれど、本当にお会いしないのもかいがないと思って、

 

 

こなた(此方)=代名詞、こちら。以後。以前。

=格助詞

御しつらひ=名詞

=格助詞

ことに(殊に)=副詞、特に、とりわけ。その上、なお。

=サ変動詞「す」の未然形、する。

させ=使役の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語がくると「尊敬」の意味になることが多いが、今回のように「使役」の意味になることもあるので、やはり文脈判断が必要である。直後に尊敬語が来ないときは必ず「使役」の意味である。

給ふ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

 

こなたに御しつらひをことにせさせ給ふ。

こちら(=西の対)に御座所を特別に用意させなさる。

 

 

こよなう=ク活用の形容詞「こよなし」の連用形が音便化したもの、(優劣にかかわらず)違いがはなはだしいこと、この上なく

痩せ細り=ラ行四段動詞「痩せ細る」の連用形

給へ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=存続の助動詞「り」の已然形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

こよなう()せ細り給へれど、

(紫の上は、)この上なく痩せ細っていらっしゃるけれど、

 

 

かくて=副詞、このようにして、こうして

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

あてに=ナリ活用の形容動詞「貴なり(あてなり)」の連用形、身分が高い、高貴である。上品だ、優雅だ。

なまめかしき=シク活用の形容詞「なまめかし」の連体形。優美である、上品である。若く美しい。「なま」は未熟であるという意味。

こと=名詞

=格助詞

限りなさ=名詞

=係助詞

まさり=ラ行四段動詞「増さる・勝る(まさる)」の連用形、すぐれる、勝る。増える、強まる。

=接続助詞

めでたかり=ク活用の形容詞「めでたし」の連用形、みごとだ、すばらしい。魅力的だ、心惹かれる。

けれ=詠嘆の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

=格助詞

 

かくてこそ、あてになまめかしきことの限りなさもまさりてめでたかりけれと、

こうして、高貴で優美であることの限りなさも勝ってすばらしいなあと(感じられて)、

 

 

来し方(きしかた)=名詞、過去、過ぎ去った時。

来(き)=カ変動詞「来(く)」の未然形。

し=過去の助動詞「き」の連体形。接続は連用形だが、直前にカ変動詞を置くときは、例外的に未然形にする。ただし「来(き)し方」と言う時は「来」を連用形にする。「来し方」の意味は「過去、過ぎ去った時」である。

あまり=副詞

匂ひ(におい)=名詞、色が美しく映えること、艶のある美しさ。嗅覚ではなく視覚的なことを意味しているので注意。

多く=ク活用の形容詞「多し」の連用形

あざあざと=副詞

おはせ=サ変動詞「おはす」の未然形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=過去の助動詞「き」の連体形。接続は連用形だが、直前にサ変動詞・カ変動詞を置くときは、例外的に未然形にする。

盛り=名詞

=係助詞

 

来し方、あまり匂ひ多く、あざあざとおはせし盛りは、

かつて、あまりにも(つや)やかで美しく、(はな)やかでいらっしゃった女盛りの頃は、



 

なかなか(中中)=副詞、かえって、むしろ。

=代名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

薫り・香り(かおり)=名詞、(見た目での)艶やかな美しさ。(嗅覚的に)よいにおい。

=格助詞

=係助詞

よそへ=ハ行下二段動詞「寄そふ・比そふ(よそふ)」の未然形、なぞらえる、比べる。関係づける、かこつける。

られ=受身の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

給ひ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

=接続助詞

 

なかなかこの世の花の薫りにもよそへられ給ひしを、

むしろこの世の花の美しさにもたとえられていらっしゃったが、

 

 

限り=名詞

=係助詞

なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形

らうたげに=ナリ活用の形容動詞「らうたげなり」の連用形、かわいらしい様子

をかしげなる=ナリ活用の形容動詞「をかしげなり」の連体形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。美しい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容動詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

御さま=名詞

=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

=接続助詞

いと=副詞

かりそめに=ナリ活用の形容動詞「かりそめなり」の連用形

=名詞

=格助詞

思ひ=ハ行四段動詞「思ふ」の連用形

給へ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である紫の上を敬っている。作者からの敬意。

=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

気色(けしき)=名詞、様子、状態。ありさま、態度、そぶり。

 

限りもなくらうたげにをかしげなる御さまにて、いとかりそめに世を思ひ給へる気色、

この上もなくかわいらしい様子で美しいご様子で、とてもかりそめの世とお思いになっている様子は、

 

 

似る=ナ行上一段動詞「似る」の連体形

もの=名詞

なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形

心苦しく=シク活用の形容詞「心苦し」の連用形、気の毒だ。心配だ。

すずろに=ナリ活用の形容動詞「すずろなり」の連用形、なんとなく、わけもなく。むやみやたらである。意に反して、意に関係なく。何の関係もないさま。

もの悲し=シク活用の形容詞「もの悲し」の終止形

 

似るものなく心苦しく、すずろにもの悲し。

並ぶものがないほど気の毒で、なんとなくもの悲しい。

 

 

続きはこちら源氏物語『御法(紫の上の死・萩の上露)』品詞分解のみ(2)

 

源氏物語『御法(紫の上の死・萩の上露)』まとめ

 

 

 

-古文

© 2024 フロンティア古典教室 Powered by AFFINGER5