「青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等」
問題はこちら徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』問題(単語・用言・助動詞)
筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなるものの①ありけるが、土大根をよろづに②いみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひ③けること、年④久しくなり⑤ぬ。
ある時、館の内に人も⑥なかりける隙を⑦はかりて、敵襲い⑧来たりて囲み攻めけるに、館の内に兵二人⑨出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆追ひ返してげり。
いと不思議に⑩おぼえて、「⑪日ごろここに⑫ものし⑬給ふとも⑭見⑭ぬ人々の、かく戦ひ⑮し給ふは、⑯いかなる人ぞ。」と問ひければ、「⑰年ごろ⑱頼みて、朝な朝な⑲召し⑳つる土大根らに㉑候ふ。」と言ひて㉒失せ㉓にけり。深く信を致し㉔ぬれば、㉕かかる徳もありける㉖にこそ。
問題1.⑪日ごろ、⑯いかなる、⑰年ごろ、⑱頼む、⑲召す、㉑候ふ、㉕かかる徳、のここでの意味を答えよ。(※左記の用言は終止形で表記してある。終止形のものとして意味を考えよ。)
⑪普段
日ごろ=名詞、ふだん。数日間。
⑯どのような・どういう
いかなる=ナリ活用の形容動詞「いかなり」の連体形。どのようだ、どういうふうだ。
⑰長年・長年の間
年ごろ=名詞、長年、長年の間
⑱頼みに思う・あてにする
頼み=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の連用形。頼みに思う、あてにする。
※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。
⑲召し上がる・お食べになる
召し=サ行四段動詞「召す」の連用形、尊敬語、召し上がる、お食べになる。呼び寄せる。
㉑です・ございます
候ふ=補助動詞ハ行四段「候ふ(さうらふ)」の未然形、丁寧語。
※「候ふ」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の意味である。
㉕このようなご利益
かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう
徳=名詞、ご利益、恵み、功徳
問題2.①あり、②いみじき、④久しく、⑥なかり、⑦はかり、⑧来たり、⑨出で来、⑩おぼえ、⑫ものし、⑬給ふ、⑭見、⑮し、⑯いかなる、⑱頼み、⑲召し、㉑候ふ、㉒失せ、の活用の種類と活用形をそれぞれ答えよ。(解答例:言ふ:㊿ハ行四段活用・連用形)
①あり:ラ行変格活用・連用形
あり=ラ変動詞「あり」の連用形、直後に接続が連用形の助動詞「ける」が来ているため連用形となっている。
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
②いみじき:シク活用・連体形
いみじき=シク活用の形容詞「いみじ」の連体形、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても。ちなみに、直後に体言(ここでは「薬」)があるため連体形(体言に連なる形)となっている。
④久しく:シク活用・連用形
久しく=シク活用の形容詞「久し」の連用形。ちなみに、直後に用言(ここでは「なり」)があるため連用形(用言に連なる形)となっている。
⑥なかり:ク活用・連用形
なかり=ク活用の形容詞「無し」の連用形、直後に接続が連用形の助動詞「ける」が来ているため連用形となっている。
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
⑦はかり:ラ行四段活用・連用形
はかり=ラ行四段動詞「計る」の連用形。直後に接続助詞「て」が着たら連用形となる。
⑧来たり:ラ行四段活用・連用形
来たり=ラ行四段動詞「来たる」の連用形。直後に接続助詞「て」が着たら連用形となる。
⑨出で来:カ行変格活用・連用形
出で来(き)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形。直後に接続助詞「て」がきたら連用形となるため、「出で来(き)」と読む。
⑩おぼえ:ヤ行下二段活用・連用形
おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の連用形、自然に思われる、感じる、思われる。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。
⑫ものし:サ行変格活用・連用形
ものし=サ変動詞「物す(ものす)」の連用形、代動詞、「~する」、ある、いる、行く、来る、生まれる、などいろいろな動詞の代わりに使う。
⑬給ふ:ハ行四段活用・終止形
給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語
⑭見:マ行上一段活用・未然形
見=マ行上一段活用「見る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。直後に接続が未然形形の助動詞「ぬ」が来ているため未然形形となっている。
ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形
⑮し:サ行変格活用・連用形
し=サ変動詞「す」の連用形、する。
⑯いかなる:ナリ活用・連体形
いかなる=ナリ活用の形容動詞「いかなり」の連体形。どのようだ、どういうふうだ。
⑱頼み:マ行四段活用・連用形
頼み=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の連用形。頼みに思う、あてにする。
※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。
⑲召し:サ行四段活用・連用形
召し=サ行四段動詞「召す」の連用形、尊敬語、召し上がる、お食べになる。呼び寄せる。直後に接続が連用形の助動詞「つる」が来ているため連用形となっている。
つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形
㉑候ふ:ハ行四段活用・終止形
候ふ=補助動詞ハ行四段「候ふ(さうらふ)」の終止形、丁寧語。
㉒失せ:サ行下二段活用・連用形
失せ=サ行下二段動詞「失す」の連用形。直後に接続が連用形の助動詞「に」が来ているため連用形となっている。
に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形
問題3.③ける、⑤ぬ、⑭ぬ、⑳つる、㉓に、㉔ぬれ、㉖に、の文法的説明として、次の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。(注:意味だけ書かれているものは全て助動詞である)
ア.打消 イ.完了 ウ.強意 エ.過去 オ.詠嘆 カ.断定 キ.動詞の一部 ク.形容動詞の一部 ケ.助詞
③エ.過去
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
⑤イ.完了
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
⑭ア.打消
ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形
⑳イ.完了
つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形
㉓イ.完了
に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形
㉔イ.完了
ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形
㉕カ.断定
に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形
文法・読解などの問題はこちら徒然草『筑紫に、なにがしの押領使』問題(文法・読解・現代語訳)