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徒然草『家居のつきづきしく』解説・品詞分解(1)

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原文・現代語訳のみはこちら徒然草『家居のつきづきしく』現代語訳(1)(2)

 

家居(いえい)つきづきしく、あらまほしき こそ、仮の宿りとは思へ、興あるものなれ

 

つきづきしく=シク活用の形容詞「つきづきし」の連用形、似つかわしい、ふさわしい。調和している、ぴったりで好ましい。

 

あらまほしき=シク活用の形容詞「あらまほし」の連体形、そうありたい、好ましい。理想的である、望ましい。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

興(きょう)=名詞、面白さ、興趣、趣き

 

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

 

住まいが調和していて、好ましい(造りな)のは、無情なこの世の一時的な住まいとは思うけれど、趣深いものである。

 

 

よき人の、のどやかに 住みなし たる所は、さし入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆる かし

 

のどやかに=ナリ活用の形容動詞「のどやかなり」の連用形、ゆったりとしている。穏やかだ。

 

住みなし=サ行四段活用の動詞「住みなす」の連用形。意味:「~のように住む」

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「たる」も同じ。

 

見ゆる=ヤ行下二動詞「見ゆ」の連体形、見える、分かる。「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。

 

ぞ=強調の係助詞

 

かし=念押しの終助詞、文末に用いる、~よ。~ね。

 

身分も高く教養のある人が、ゆったりと穏やかに住んでいる所は、差し込む月の光も、ひときわ心にしみるように見えるものだよ。

 

 

今めかしく きららかなら  

 

今めかしく=シク活用の形容詞「今めかし」の連用形、現代風である

 

きららかなら=ナリ活用の形容動詞「きららかなり」の未然形

 

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

現代風に華やかではないけれど、

 

 

木だちもの()りて、わざと なら 庭の草も心あるさまに、

 

わざと=副詞、わざわざ、格別に、特別に。正式に、本格的に特に、特別に

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、絶族は未然形

 

「心(名詞)/ある(ラ変動詞の連体形)」

心あり=趣や風情がある。思いやりがある。物の道理が分かる。情趣を解する。思うところがある。

 

(庭の)木々はどことなく古めかしく、特別に手を入れていない庭の草も(おもむき)のある様子で、

 

 

簀子(すのこ)(すい)(がい)たより をかしく

 

簀子(すのこ)=名詞、縁側。板と板の間を透かせて縁側に作られた敷物

 

透垣(すいがい)=名詞、垣根。間を透かして作った、板や竹の垣根。

 

頼り・便り(たより)=名詞、ぐあい、配置。頼りどころ、縁故。消息、手紙、訪れ。便宜、手段。良い機会、事のついで。

 

をかしく=シク活用の形容詞「をかし」の連用形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

縁側と垣根の配置ぐあいも風情があり、

 

 

うちある 調度も昔覚えてやすらかなるこそ心にくし見ゆれ

 

うちある=ラ変動詞「うちあり」の連体形。「うち」は接頭語であり「ちょっと、少し」などといった意味がある。

 

調度(ちょうど)=名詞、身の回りの道具・家具など

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

心にくし=ク活用の形容詞「心にくし」の終止形、心惹かれる、奥ゆかしい、上品である

 

見ゆれ=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の已然形、見える、分かる。「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

 

ちょっと置いてある調度(=身の回りの道具・家具など)も古風に思えて落ち着いた感じなのは、奥ゆかしく見える。

 

 

多くの(たくみ)の心をつくしてみがきたて、唐の、大和の、めづらしく、えならぬ調度ども並べ置き、

 

えならず=何とも言いようがない、並々でない

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

なら=ラ行四段動詞「成る」の未然形

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形

 

(これに対して)多くの職人が心をつくして造り上げ、中国製の、日本製の、珍しく、なんとも言いようがない(ほど立派な)調度類を並べ置き、

 

 

前栽(せんざい)の草木まで心のままなら 作りなせは、見る目も苦しく、いとわびし

 

前栽(せんざい)=名詞、庭の植え込み、庭の木などを植えてある所

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

わびし=シク活用の形容詞「わびし」の終止形、つらい、苦しい、情けない、困ったことだ

 

庭の植え込みの草木まで自然のままでなく(不自然に手を加えて)作り上げているのは、見た目も見苦しく、本当に困ったことだ。



 

さても  、長らへ住むべき

 

さても=副詞、そういう状態でも、それにしても、そのままでも、そうであっても

 

や=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

べき=可能の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある

 

そういう状態でも、生き長らえて住むことができようか。(いや、できないだろう。)

 

 

また、時の間の煙ともなり 、うち見るより思はるる

 

な=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

 

む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

より=格助詞、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、

 

るる=自発の助動詞「る」の連体形、接続は未然形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。「る・らる」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。

自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

 

また、(火事などで)一瞬の間の煙ともなってしまうだろうと、ちょっと見るとすぐに思われる。

 

 

大方は、家居にこそ、ことざまはおしはからるれ

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

るれ=自発の助動詞「る」の已然形、接続は未然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

 

大体は、住まいによって、住む人の人柄は自然と推測される。

 

 

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