古文

徒然草『花は盛りに』(前半)問題の解答

「青字=解答」「※赤字=注意書き、解説等」

問題はこちら徒然草『花は盛りに』(前半)問題

 

花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。雨に向かひて月を恋ひ、垂れ込めて春の行方知らも、なほあはれに情け深し。咲きべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ見どころ多けれ。

 

歌の詞書にも、「花見にまかれけるに、早く散り過ぎにければ。」とも、「障ることありてまからで。」なども書けるは、「花を見て。」と言へ劣れることかは

 

花の散り、月の傾くを慕ふならひはさることなれど、ことにかたくななる人、「この枝かの枝、散りけり。今は見どころなし。」などは言ふめる

 

 

問題1.⑦まかる、⑩障ること、⑭さること、のここでの意味を答えよ。(※左記の用言は終止形で表記してある。終止形のものとして意味を考えよ。)

 

参る

まかれ=ラ行四段動詞「まかる」の已然形、謙譲語。退出する。参る。 ※基本的には「退出する」の意味になることが多い

さしつかえること

障る=ラ行四段動詞「障る(さはる)」の連体形、さしつかえる、さしさわりがある、邪魔になる

もっともなこと

さること=もっともなこと

さる=連体詞あるいはラ変動詞「然り(さり)」の連体形、そうだ、そうである。適切である、ふさわしい、しかるべきだ。

 

 

問題2.⑥こそ、⑯ぞ、における係助詞の結びを抜き出しなさい。

 

多けれ

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

多けれ=ク活用の形容詞「多し」の已然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。「こそ」は強調なので無視して訳す。要するに「庭などこそ見どころ多けれ。」→「庭など見どころ多し。」と考える。

める

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

める=婉曲の助動詞「めり」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

 

問題3.②ぬ、④ぬ、⑤たる、⑧り、⑫る、⑰に、⑱める、の文法的説明として、次の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。(注:意味だけ書かれているものは全て助動詞である)

ア.受身  イ.尊敬  ウ.自発  エ.可能  オ.過去  カ.完了  キ.存続  ク.強意  ケ.打消  コ.推定  サ.婉曲  セ.動詞の一部

 

ケ.打消

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続(直前の活用形)は未然形

ク.強意

ぬ=強意の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

べき=推量の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

キ.存続

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

カ.完了

り=完了の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

キ.存続

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

カ.完了

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

サ.婉曲

める=婉曲の助動詞「めり」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。婉曲とは遠回しな表現。「~のような」と言った感じで訳す。

 

 

問題4.「①隈なきをのみ見るものかは」、「③なほあはれに情け深し」、「⑨散り過ぎにければ」、「⑪まからで」、「⑬劣れることかは」、「⑮ことにかたくななる人」、の現代語訳を答えよ。

 

かげりなく輝いているものだけを見るものだろうか。(いや、そうではない。)

隈なき=ク活用の形容詞「隈なし(くまなし)」の連体形、暗い所がない、陰になる所がない、届かない所がない、余す所がない

 

ものかは=終助詞、①反語、②感動、ここでは反語。

 

やはりしみじみと感じられて趣が深い

なほ=副詞、やはり。さらに。それでもやはり。

 

あはれに=ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。しみじみと思う、しみじみとした情趣がある

 

情け=名詞、趣、風流を理解する心、風流な心。人情、思いやりの気持ち。男女の情愛、恋愛、情事。

 

散ってしまっていたので

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

(花見に)参りませんで

まから=ラ行四段動詞「まかる」の未然形、謙譲語。退出する。参る。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

劣っていることがあろうか。(いや、ない。)

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

か=反語の係助詞、結びは連体形となるが、ここでは省略されている。係り結びの省略。「あらむ」などが省略されていると考えられる。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~かは・~やは」とあれば反語の可能性が高い。

 

特に物の情趣を理解しない人

ことに(殊に)=副詞、特に、とりわけ。その上、なお

 

かたくななる=ナリ活用の形容動詞「かたくななり」の連体形、頑固だ、物の情趣を理解しない。教養がない、愚かである

 

  

徒然草『花は盛りに』解説・品詞分解

 

徒然草『花は盛りに』まとめ

 

 

 

-古文

© 2024 フロンティア古典教室 Powered by AFFINGER5