青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
操少クシテ機警、有二リ権数一。任侠放蕩ニシテ、不レ治二メ行業一ヲ。
操少くして機警、権数有り。任侠放蕩にして、行業を治めず。
曹操は、若いころから機転がきいて察しがよく、人を巧みに欺くはかりごとが得意であった。男気があって気ままにふるまい、節操と学問を身につけようとはしなかった。
汝南ノ許劭、与二従兄ノ靖一有二リ高名一。共ニ覈-二論ス郷党ノ人物一ヲ。
汝南の許劭、従兄の靖と高名有り。共に郷党の人物を覈論す。
汝南の許劭は、従兄の靖とともに有名であった。二人で郷里の人物についてよく調べて評論をしていた。
毎月輒チ更二ム其ノ題品一ヲ。故ニ汝南ノ俗ニ有二リ月旦ノ評一。
毎月輒ち其の題品を更む。故に汝南の俗に月旦の評有り。
毎月初めに、批評を改めていた。そのため、汝南では「月旦評(=毎月初めに行われる人物評)」として知られていた。
操往キテ問レヒテ劭ニ曰ハク、「我ハ何如ナル人ゾト。」
操往きて劭に問ひて曰はく、「我は如何なる人ぞ。」と。
(その評判を聞いて、)曹操が(汝南に)行って許劭に尋ねて、「私はどのような人物か。」と言った。
劭不レ答ヘ。劫レカス之ヲ。
劭答へず。之を劫かす。
許劭は答えなかった。(なので曹操は、)許劭を脅した。
乃チ曰ハク、「子ハ治世之能臣、乱世之姦雄ナリト。」
乃ち曰はく、「子は治世の能臣、乱世の姦雄なり。」と。
そこで(許劭が答えて)言いうことには、「あなたは治世にあっては有能な家臣で、乱世にあっては悪知恵に富む英雄です。」と。
操喜ビテ而去ル。至レリ是ニ以レツテ討レツヲ賊ヲ起コル。
操喜びて去る。是に至り賊を討つを以つて起こる。
※而=置き字(順接・逆接)
曹操は喜んで立ち去った。こうして(曹操は、)賊を討つことを理由に立ち上がったのである。