青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
守株(株を守る)=いつまでも古い習慣・方法などにとらわれて、進歩しないこと
宋人ニ有二リ耕レス田ヲ者一。田中ニ有レリ株。
宋人に田を耕す者有り。田中に株有り。
宋の国の人で、田んぼを耕している者がいました。畑の中に切り株があった。
兎走リテ触レレ株ニ、折レリテ頸ヲ而死ス。
兔走りて株に触れ、頸を折りて死す。
ウサギが走って切り株にぶつかり、首を折って死んでしまった。
因リテ釈二テテ其ノ耒一ヲ而守レリ株ヲ、冀二フ復タ得一レンコトヲ兎ヲ。
因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兎を得んことを冀ふ。
そこで、その農夫は(農作業のための農具である)すきを放り出して、切り株を見張り、再びウサギ手に入れたいと願った。
兎不レシテ可二カラ復タ得一、而身ハ為二ル宋国ノ笑一ヒト。
兎復た得べからずして、身は宋国の笑ひと為る。
※「不二復タ ~一(セ)」=部分否定、「復た~(せ)ず」、「決して~しない/二度とは~しない」
参考:「復タ不二 ~一(セ)」=全部否定、「復た~(セ)ず」、「今度もまた~しない」
(しかし、)ウサギは二度とは手に入れることはできず、その人は宋の国じゅうの笑い者となった。
今欲下スルハ以二ツテ先王之政一ヲ治中メント当世之民上ヲ、
今先王の政を以つて当世の民を治めんと欲するは、
今の世に、昔の先王の政治の仕方で現代の国民を治めたいと思うのは、
皆守レル株ヲ之類也。
皆株を守るの類なり。
皆この『株を守る』の話と同類なのである。