青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
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※太公望=太公が待ち望んだ人。釣りをする人。釣り好きな人。
有二リ呂尚トイフ者一。東海ノ上ノ人ナリ。
呂尚というものあり。東海の上の人なり。
呂尚という者がいた。東海のほとりの人である。
窮困シテ年老イ、漁釣シテ至レル周ニ。
窮困して年老い、漁釣して周に至る。
貧しく年老いており、魚釣りをして周にやって来た。
西伯将レニ猟セント、卜レス之ヲ。曰ハク、
西伯将に猟せんとし、之をトす。曰はく、
※将=再読文字「将(まさ)に~んとす」「~しようとする・~するつもりだ」
(周の)西伯が猟に行こうとして、猟を占った。その占いの結果で出たことには、
「非レズ竜ニ、非レズ彲ニ、非レズ熊ニ、非レズ羆ニ、非レズ虎ニ、非レズ貔ニ。所レハ獲ル覇王之輔ナラント。」
「竜に非ず、彲に非ず、熊に非ず、羆に非ず、虎に非ず、貔に非ず、獲る所は覇王の輔ならん」と。
「竜でもなく、蛟(みずち)でもなく、熊でもなく、羆(ひぐま)でもなく、虎でもなく、豹でもなく、獲物は覇王の補佐となる者であろう。」と。
果タシテ遇二フ呂尚ニ於渭水之
陽一ニ。
果たして呂尚に渭水の陽に遇う。
果たして、呂尚に渭水の北岸で出会った。
与ニ語リ大イニ悦ビテ曰ハク、
与に語り大いに悦びて曰はく、
(西伯と呂尚は)ともに語り合い、大いに喜んで(西伯が)言うことには、
「自二リ吾ガ先君太公一曰ハク、『当下ニ/シ有二リテ聖人一適上レク周ニ。周因リテ以テ興ラント。』
「吾が先君太公より曰はく、『当に聖人有りて周に適くべし。周因りて以て興らん』と。
※当=再読文字、「当(まさ)に~べし」「~すべきである・きっと~のはずだ」
「私の先君(亡き父)の太公が言っていたことには、『きっと聖人が現れて周にやってくるだろう。周はその者によって栄えるだろう。』と。
子ハ真ニ是ナル耶。吾ガ太公望レムコト子ヲ久シト矣。」
子は真に是なるか。吾が太公、子を望むこと久し」。
※矣=置き字(断定・強調)
あなたはまさにその人ではありませんか。私の亡き父の太公は、あなたを長い間待ち望んでいました。」
故ニ号レシテ之ヲ曰二フ太公望一ト。
故にこれを号して太公望という。
そこで(西伯は)、呂尚を太公望と名づけて呼んだ。
載セテ与倶ニ帰リ、立テテ為レシ師ト、謂二フ之ヲ
師尚父一ト。
載せて与倶に帰り、立てて師と為し、これを師尚父と謂ふ。
(西伯は呂尚を)車に乗せて一緒に帰り、自分の師として立て、師尚父と呼んだ。
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