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三冊子『不易と流行』解説・品詞分解

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師の風雅に万代不易あり、一時の変化あり。

 

師(である芭蕉)の俳諧には、永久に変わらない価値をもつものがあり、また時代により変化するものがある。

※風雅=「俳諧」のことを指している。

 

 

この二つにきはまり、その本一つなり

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

(師の俳諧は)この二つに尽きるのであり、その(二つの)根本は一つである。

 

 

その一といふは風雅の誠なり。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

その一つの根本というのは俳諧の誠である。

※風雅の誠=俳諧の道における真実

 

 

不易を知らざれ 、まことに知れ あら

 

ざれ=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ば=接続助詞、基本的に直前が已然形だと、①原因・理由、②偶然条件、③恒常条件、直前が未然形ならば④仮定条件である。しかし、室町時代以降は直前に已然形が来て仮定条件の意味で用いられるようになった。ここでは仮定条件「もし~ならば」である。

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

不易を知らなければ、本当に俳諧を理解したことにはならない。

※不易=永久に変わらない面



 

不易といふは新古によらず、変化流行にもかかはらず、誠によく立ちたる姿なり。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形。もう一つの「ず」も同様

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

不易というのは、新しいとか古いとかによるのでなく、(時代・作風の)変化や流行にもかかわらず、(俳諧の)誠の上にしっかり立っている(作品の)姿を言うのである。

※誠によく立ちたる姿=真実の心にもとづいて詠まれた作品の姿

 

 

代々の歌人の歌を見るに、代々その変化あり。

 

歴代の歌人の歌を見ると、時代時代で(作風などに)変化がある。

 

 

また、新古にもわたら、今見るところ昔見に変わらあはれなる歌多し。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形。もう一つの「ず」も同様

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

あはれなる=ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連体形。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。しみじみと思う、しみじみとした情趣がある

 

また、新しいか古いかということに関係なく、今の人が見ても、昔の人が(しみじみと感動して)見たのと変わらず、しみじみと感じさせる歌は多い。

 

 

これまづ不易と心得 べし

 

心得=ア行下二動詞「心得(こころう)」の終止形、事情などを理解する。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

 

べし=命令の助動詞「べし」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

これをまず不易と言うのだと心得なさい。

 

 

また、千変万化するものは、自然の理なり

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

また、万物がさまざまに変化することは、自然の道理である。

 

 

変化にうつらざれ 、風あらたまら

 

ざれ=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

 

ば=接続助詞、基本的に直前が已然形だと、①原因・理由、②偶然条件、③恒常条件、直前が未然形ならば④仮定条件である。しかし、室町時代以降は直前に已然形が来て仮定条件の意味で用いられるようになった。ここでは仮定条件「もし~ならば」である。

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

変化して行くことがなければ、俳諧の作風は改まらない。

 

 

これにおし移らといふは、一端の流行に口つき 時を得 たる ばかり て、

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

口つき=詠みぶり

 

時を得=好機を得て栄える

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

ばかり=副助詞、(限定)~だけ。(程度)~ほど・ぐらい。

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

俳諧の作風が変化して行くことがないというのは、一時的な俳風の変化において、その詠みぶりがもてはやされているだけであって、

 

 

その誠をせめ ざる ゆゑ なり

 

せめ=マ行下二段動詞「責む」の未然形、追及する、求める

 

ざる=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

故(ゆゑ)=名詞、原因、理由。、風情、趣。由来、由緒。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

俳諧の誠を追求していないためである。

 

 

せめ、心をこらさざるもの、誠の変化を知るといふことなし。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

ざる=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

(俳諧の誠を)追求せず、心を凝らさないものは、誠の排風の変化を知ることがない。

 

 

ただ人にあやかりて行くのみなり

 

あやかり=ラ行四段動詞「あやかる」の連用形、(影響を受けて)似る。模倣する。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

ただ人の影響を受けて模倣して行くだけである。



 

せむるものは、その地に足をすゑがたく、一歩自然に進む理なり

 

せむる=マ行下二段動詞「責む」の連体形、追及する、求める

 

すゑ=ワ行下二段活用の動詞「据う(すう)」の連用形。置く、据える。ワ行下二段の動詞は「植う(うう)」「飢う(うう)」「据う(すう)」の3つのみなので、覚えた方がよい。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

誠を追求するものは、自身の現在の境地に足をとどめていることができず、一歩自然に前進するのは当然の道理である。

 

 

行く末幾千変万化するとも、誠の変化は皆師の俳諧なり

 

行く末=名詞、将来、未来、行く先

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

将来の俳風がいくら変化しようとも、俳諧の誠を追求することから生まれた変化は、すべて師(である芭蕉)の俳諧である。

 

 

「かりにも古人の涎をなむる事なかれ。

 

「かりにも昔の人の真似をしてはならない。

 

 

四時のおし移るごとくものあらたまる。みなかくごとし。」とも言へ

 

ごとく=比況の助動詞「ごとし」の連用形

 

斯く(かく)=副詞、このように、こう

 

ごとく=比況・同等の助動詞「ごとし」の終止形

 

り=完了の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

四季の変化して行くように物事は変化する。(そして、俳諧も含めて)すべてこのように同じである。」とも、(師は)言った。

 

 

 

 

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