「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
作者:藤原俊成女(ふじわらのとしなりのむすめ)
下燃えに 思ひ消えなむ 煙だに跡なき雲の はてぞ悲しき
下燃え=名詞、燃え上がらず下でくすぶること。人知れず心の中で思い焦がれること。
な=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる
む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。
だに=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。
果て(はて)=名詞、遠い彼方。終わり、最後。成れの果て。
ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
悲しき=シク活用の形容詞「悲し」の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。
心の中で思い焦がれ恋い死にしてしまいそうだ。(死んだ私を焼く)煙さえも跡かたもなく消えて、雲といっしょになってしまうかと思うと悲しいことよ。
心の中で思い焦がれ、恋い死にをしてしまうだろう。そして、(我が身を火葬にする)煙さえ、跡かたもなく消えて、雲と一緒になってしまうであろう終わりを思うと、悲しいことだ。
※掛詞=同音異義を利用して、一つの語に二つ以上の意味を持たせたもの。
掛詞を探すときのポイント(いずれも例外有り)
①ひらがなの部分
②和歌に至るまでの経緯で出て来た単語
③地名などの固有名詞
この和歌では①のパターンのみが当てはまる。
「思ひ」の「ひ」が掛詞となっており、「思ひ」の「ひ」と「火(ひ)」が掛けられている。