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建礼門院右京大夫集『なべて世の/悲報到来/かかる夢』解説・品詞分解

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作者:(けん)(れい)(もん)(いんの)()(きょうの)(だい)()(性別:女性)

要約:恋人であった(たいらの)(すけ)(もり)が亡くなったことを知った作者は悲しんで和歌をニ首詠んだ。

 

 

またの年の春、まことにこの世のほかに聞き果て 

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

翌年の春に、本当に(恋人の平資盛が)この世の人でなくなってしまったと聞いてしまった。

 

 

そのほどのことは、まして何と 言は

 

か=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

その時のことは、まして何と言おうか。(いや、何とも言いようがない。)

 

 

みなかねて思ひことなれ 、ただほれぼれとのみおぼゆ

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

おぼゆ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の終止形。似る、おもかげがある。感じる、思われる。思い出される。

 

みな前々から思っていたことであるけれど、ただ茫然(ぼうぜん)としていただけと思われる。

 

 

あまりにせきやら涙も、かつは見る人もつつましけれ 、何と人も思ふらめ 

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

つつましけれ=シク活用の形容詞「つつまし」の已然形。気がひける、遠慮される

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

か=疑問の係助詞。結びは連体形となるが、係り結びの消滅が起こっている。本来の結びは「けれ」の部分であるであるが、接続助詞「ども」が来ているため、結びの部分が消滅してしまっている(=文末ではなくなっている)。これを「係り結びの消滅(流れ)」と言う。

 

らめ=現在推量の助動詞「らむ」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。本来なら「か」を受けて連体形になるはずだったが、接続助詞「ど」があるために已然形となっている。係り結びの消滅(流れ)。基本的に「らむ」は文末に来ると「現在推量・現在の原因推量」、文中に来ると「現在の伝聞・現在の婉曲」

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

あまりにせき止められない涙も、一方では見ている人にも気が引けるので、どうしたのかと人も思っているだろうけど、

 

 

「心地のわびしき。」とて、引きかづき、寝暮らしてのみ、心のままに泣き過ぐす

 

わびしき=シク活用の形容詞「侘びし(わびし)」の連体形、つらい、苦しい、情けない、困ったことだ。

 

引きかづき=カ行四段動詞「引き被く(ひきかづく)」の連用形、引きかぶる。

被く(かづく)=カ行四段動詞、かぶる。もらう、(褒美などを)いただく。

※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「かぶせる。与える。」といった意味になる。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

泣き過ぐす=サ行四段動詞「泣き過ぐす」の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

「気分が悪いので。」と言って、(衣服を)引きかぶって、寝て暮らしてばかりで、思うままに泣いて過ごす。

 

 

いかでものをも忘れと思へ

 

いかで=副詞、(疑問・反語で)どうして、どのようにして、どういうわけで。どうにかして。どうであろうとも、なんとかして。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

どうにかしてあの人(=平資盛)のことを忘れようと思うけれど、

 

 

あやにくに面影は身に添ひ、言の葉ごとに聞く心地して、身を責めて、悲しきこと言ひ尽くすべき方なし。

 

あやにくに=ナリ活用の形容動詞「生憎なり(あやにくなり)」の連用形、厳しい、意地が悪い、憎らしいほどひどい。都合が悪い、あいにくだ。はなはだしい。

 

べき=可能の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

意地悪く(あの人の)面影は私の身に付き添い、言葉を一言一言聞く気持がして、私の身を責めて、その悲しさは言いつくしようがない。

 

 

ただ、限りある命にて、はかなくなど聞きことをだに こそ、悲しきことにいひ思へ

 

はかなく=ク活用の形容詞「はかなし」の連用形、頼りない、むなしい。取るに足りない、つまらない。ちょっとした。「はかなくなる」で「亡くなる」「死ぬ」という意味を表すことがあり、ここでの「はかなく」もそのような意味で用いられている。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。ここでは逆接強調法。

逆接強調法「こそ ~ 已然形、」→「~だけれど、(しかし)」

通常の係り結びは結び(文末)が已然形となるため、「こそ ~ 已然形。」となるが、

逆接強調法のときは「こそ ~ 已然形、」となり、「、(読点)」があるので特徴的で分かりやすい。

 

思へ=ハ行四段動詞「思ふ」の已然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

 

ただ、天寿をまっとうして、亡くなったなどと聞いたことでさえ、悲しいことに言ったり思ったりするけれど、

 

 

これは、何を ためしにせと、返す返すおぼえて、

 

か=疑問の係助詞、結びは連体形となっている。係り結び。

 

例(ためし)=名詞、例、先例。試み。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の連用形。感じる、思われる。思い出される。似る、おもかげがある。

 

この私の悲しみは、何に例えたらいいのだろうかと、繰り返し思われて、

 

 

 

なべて世の  はかなきことを  悲しとは  かかる夢見  人いひけむ

 

なべて(並べて)=副詞、一般に、すべて、並ひととおり、ふつう

 

はかなき=ク活用の形容詞「はかなし」の連体形、頼りない、むなしい。取るに足りない、つまらない。ちょっとした。「はかなくなる」で「亡くなる」「死ぬ」という意味を表すことがあり、ここでの「はかなく」もそのような意味で用いられている。

 

かかる=連体詞、あるいはラ変動詞「かかり」の連体形。このような、こういう。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

や=疑問の係助詞、結びは連体形となっている。係り結び。

 

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」。

 

なべて世の  はかなきことを  悲しとは  かかる夢見ぬ  人やいひけむ

世間一般の死を悲しいというのは、このような(私が見たつらい)夢を見たことのない人が言ったのだろうか。

 

 

 

ほど経て、人のもとより、「さても、このあはれいかばかり 。」と言ひたれ 

 

より=格助詞、(起点)~から。(手段・用法)~で。(経過点)~を通って。(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや。

 

さても=接続詞、それにしても、それでもやはり。副詞、そうであっても。そのまま、そうして。

 

あはれ=名詞、情愛、愛情。しみじみとした感動、情趣、風情。悲しみ。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。

 

いかばかり=副詞、どれほど、どんなに

 

か=疑問の係助詞

 

たれ=完了の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

しばらくして、ある人の所から、「それにしても、この度の悲しみ、どれほどでしょうか。」と言ってきたので、

 

 

なべてのことのやうに おぼえて、

 

なべて(並べて)=副詞、一般に、すべて、並ひととおり、ふつう

 

やうに=比況の助動詞「やうなり」の連用形

 

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の連用形。感じる、思われる。思い出される。似る、おもかげがある。

 

並一通りの(あいさつの)ことのように思われて、

 

 

悲しとも  またあはれとも  世の常に  言ふべきこと  あら こそあら

 

あはれ=名詞、情愛、愛情。しみじみとした感動、情趣、風情。悲しみ。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。

 

べき=可能の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

に=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形

 

ば=接続助詞、直前が未然形であり、④仮定条件「もし~ならば」の意味で使われている。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

め=推量の助動詞「む」の已然形、接続は未然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

悲しとも  またあはれとも  世の常に  言ふべきことに  あらばこそあらめ

悲しいともまた哀れとも世間一般に言えることならばよいのだろう(けれど、私の場合はとてもそのように世間一般の言葉で言い表せるようなものではないのです)。

 

 

建礼門院右京大夫集『なべて世の/悲報到来/かかる夢』現代語訳

 

 

 

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