解答はこちら徒然草『これも仁和寺の法師』問題の解答
これも仁和寺の法師、童の法師になら①むとする名残とて、おのおの遊ぶ事ありけるに、酔ひて興に入るあまり、傍ら②なる足鼎を取りて、頭に③かづきたれば、詰まるやうにするを、鼻をおし平めて、顔をさし入れて舞ひ出でたるに、満座興に入る事かぎりなし。
しばし奏でて後、抜か④むとするに、⑤おほかた抜かれず。酒宴ことさめて、⑥いかがはせんと惑ひけり。とかくすれば、首のまはりかけて血たり、ただ腫れに腫れみちて、息もつまりければ、打ち割らむとすれど、たやすく割れず。⑦響きて堪へがたかりければ、かなはで、すべきやうもなくて、三足なる角の上に、帷子をうちかけて、手をひき杖をつかせて、京なる⑧医師のがり、率て行きける⑨道すがら、人のあやしみ見る事かぎりなし。
医師のもとにさし入りて、向かひゐたり⑩けむありさま、⑪さこそ異様なりけめ。ものを言ふもくぐもり声に響きて聞えず。「かかることは文にも見えず、伝へたる教へもなし。」と言へば、また仁和寺へ帰りて、親しき者、老いたる母など、枕上に寄りゐて泣き悲しめども、聞く⑫らむともおぼえず。
かかるほどに、ある者の言ふやう、「⑬たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらむ。ただ力を立てて引きたまへ。」とて、藁のしべをまはりにさし入れて、かねを隔てて、首もちぎるばかり引きたるに、耳鼻欠けうげながら抜けにけり。⑭からき命まうけて、久しく病みゐたりけり。
問題1.③かづく、⑧医師のがり、⑨道すがら、のここでの意味を答えよ。(※終止形で表記してある用言については、終止形のものとして意味を考えよ。)
③
⑧
⑨
問題2.①む、②なる、④む、⑩けむ、⑫らむ、の文法的説明として、次の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。(注:意味だけ書かれているものは全て助動詞である)
ア.推量 イ.意志 ウ.勧誘 エ.婉曲 オ.打消 カ.推定 キ.断定 ク.存在 ケ.伝聞 コ.現在推量 サ.過去推量
①
②
④
⑩
⑫
問題3.⑬の下線部における「生きざらむ」を例にならって品詞分解し、説明せよ。
例:「聞 き/し/歌。」
聞き=動詞・四段・連用形
し=助動詞・過去・連体形
歌=体言
品詞分解:「生 き ざ ら む」
問題4.「「⑬たとひ耳鼻ⓐこそ切れ失すとも、命ばかりはなどⓑか生きざらむ。ただ力を立てて引きたまへ。」におけるⓐとⓑの係助詞の用法として適切なものを次のア~ウの中から選びなさい。
ア.係り結び イ.係り結びの消滅(流れ) ウ.係り結びの省略
ⓐ
ⓑ
問題5.「⑤おほかた抜かれず」、「⑥いかがはせんと惑ひけり」、「⑦響きて堪へがたかりければ、かなはで、すべきやうもなくて」、「⑪さこそ異様なりけめ」、「⑬たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらむ。ただ力を立てて引きたまへ」、「⑭からき命まうけて」、の現代語訳を答えよ。
⑤
⑥
⑦
⑪
⑬
⑭
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