「青=現代語訳」
原文・現代語訳のみはこちら俊頼髄脳『沓冠折句の歌』現代語訳
沓冠折句(くつかぶりおりく)=名詞
の=格助詞
歌=名詞
と=格助詞
いへ=ハ行四段動詞「言ふ」の已然形
る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
もの=名詞
あり=ラ変動詞「あり」の終止形
沓冠折句の歌といへるものあり。
沓冠折句の歌といった歌の技巧がある。.
十文字=名詞
ある=ラ変動詞「あり」の連体形
こと=名詞
を=格助詞
句=名詞
の=格助詞
上下=名詞
に=格助詞
置き=カ行四段動詞「置く」の連用形
て=接続助詞
詠め=マ行四段動詞「詠む」の已然形
る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形
十文字あることを、句の上下に置きて詠めるなり。
十文字ある言葉を、句の上と下に置いて詠んだ歌である。
合はせ薫き物=名詞
すこし=副詞
と=格助詞
いへ=ハ行四段動詞「言ふ」の已然形
る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
こと=名詞
を=格助詞
据ゑ=ワ行下二段動詞「据う(すう)」の連用形、ワ行下二段活用の動詞は「植う(うう)」・「飢う(うう)」・「据う(すう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
歌=名詞
「合はせ薫き物すこし。」といへることを据ゑたる歌、
「合はせ薫き物少し。」と言った言葉を(句の上と下に)置いた歌、
逢坂=名詞
も=係助詞
果て=名詞
は=係助詞
行き来=名詞
の=格助詞
関=名詞
も=係助詞
ゐ=ワ行上一段動詞「居る(ゐる)」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形
訪ね=ナ行下二段動詞「訪ぬ」の連用形
て=接続助詞
来(こ)=カ変動詞「来(く)」の未然形
ば=接続助詞、直前が未然形だから④仮定条件「もし~ならば」である。ちなみに、直前が已然形ならば①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかである。
来(こ)=カ変動詞「来(く)」の命令形
来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形
な=完了の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形
ば=接続助詞、直前が未然形であり、④仮定条件「もし~ならば」の意味で使われている。
帰さ=サ行四段動詞「帰す」の未然形
じ=打消意志の助動詞「じ」の終止形、接続は未然形
※沓冠折句の技巧
あふさかも
はてはいききの
せきもゐず
たづねてこばこ
きなばかえさじ
句の上=あはせたき(合はせ薫き)
句の下=ものずこじ(物少し)
逢坂も 果ては行き来の 関もゐず 訪ねて来ば来 来なば帰さじ
逢坂の関も夜更けになれば、人の往来をさえぎる関守もいない。訪ねてくるのならば来なさい。もし来たら帰さないだろう。
これ=代名詞
は=係助詞
仁和の帝=名詞
の=格助詞
方々=名詞
に=格助詞
奉ら=ラ行四段動詞「奉る(たてまつる)」の未然形、「与ふ・贈る」の謙譲語。差し上げる、献上する。動作の対象である方々を敬っている。作者からの敬意。
せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である仁和の帝(=光孝天皇)を敬っている。作者からの敬意。
給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語
たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
に=接続助詞
みな=名詞
心=名詞
も=係助詞
得(え)=ア行下二段動詞「得(う)」の未然形。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。
ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形
これは、仁和の帝の、方々に奉らせ給ひたりけるに、みな心も得ず、
この歌は、光孝天皇が、宮中の方々に差し上げなさった歌であるが、誰も意図するところ(=歌の技巧)が分からず、
返しども=名詞
を=格助詞
奉ら=ラ行四段動詞「奉る(たてまつる)」の未然形、「与ふ・贈る」の謙譲語。差し上げる、献上する。動作の対象である仁和の帝(=光孝天皇)を敬っている。作者からの敬意。
せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である方々を敬っている。作者からの敬意。
給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語
たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
に=接続助詞
返しどもを奉らせ給ひたりけるに、
返歌などを差し上げなさったが、
広幡の御息所=名詞
と=格助詞
申し=サ行四段動詞「申す」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である広幡の御息所を敬っている。作者からの敬意。
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
人=名詞
の=格助詞
御返し=名詞
は=係助詞
なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形
て=接続助詞
薫き物=名詞
を=格助詞
奉ら=ラ行四段動詞「奉る(たてまつる)」の未然形、「与ふ・贈る」の謙譲語。差し上げる、献上する。動作の対象である仁和の帝(=光孝天皇)を敬っている。作者からの敬意。
せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断のはずだが、ここは例外的に「尊敬」の意味となっている。動作の主体である方々を敬っている。作者からの敬意。
たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形
けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形
ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。
広幡の御息所と申しける人の、御返しはなくて、薫き物を奉らせたりければ、
(ただ一人だけ)広幡の御息所と申した人が、返歌はなくて、薫き物を差し上げなさったので、
心=名詞
ある=ラ変動詞「あり」の連体形 「心あり」=物の道理が分かる。趣や風情がある。思いやりがある。情趣を解する。思うところがある。
こと=名詞
に=格助詞
ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
思し召し=サ行四段動詞「思し召す(おぼしめす)」の連用形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である仁和の帝(=光孝天皇)を敬っている。作者からの敬意。
たり=完了の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。
と=格助詞
語り伝へ=ハ行下二段動詞「語り伝ふ」の連用形
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
心あることにぞ思し召したりけると語り伝へたる。
(光孝天皇は、広幡の御息所のことを)和歌の情趣を解する人だとお思いになったと、語り伝えている。
女郎花(おみなえし)=名詞、女性にたとえられることが多い秋に咲く花。読み方に注意。
花薄(はなすすき)=名詞
と=格助詞
いへ=ハ行四段動詞「言ふ」の已然形
る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
こと=名詞
を=格助詞
据ゑ=ワ行下二段動詞「据う(すう)」の連用形、ワ行下二段活用の動詞は「植う(うう)」・「飢う(うう)」・「据う(すう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。
て=接続助詞
詠め=マ行四段動詞「詠む」の已然形
る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
歌=名詞
「をみなへし・花薄」といへることを、据ゑて詠める歌、
「女郎花・花薄」といった言葉を、置いて詠んだ歌、
小野=名詞
の=格助詞
萩(はぎ)=名詞
見=マ行上一段動詞「見る」の連用形
し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形
秋=名詞
に=格助詞
似=ナ行上一段動詞「似る」の未然形
ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形
成り=ラ行四段動詞「成る」の連用形
ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
増す=サ行四段動詞「増す」の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。
経(へ)=ハ行下二段動詞「経(ふ)」の連用形
し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形
だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。
あやな=ク活用の形容詞「あやなし」の語幹、道理が立たない、わけがわからない。無意味だ、つまらない。
しるし=ク活用の形容詞「しるし」の終止形、きわだっている、はっきりしている、明白である。
けしき=名詞
は=係助詞
※沓冠折句の技巧
おののはぎ
みしあきににず
なりぞます
へしだにあやな
しるしけしきは
句の上=おみなへし(女郎花)
句の下(下から読む)=はなすずぎ(花薄)
小野の萩 見し秋に似ず 成りぞ増す 経しだにあやな しるしけしきは
小野の萩は、(去年の)秋に見たのとは変わって、たくさん増えている。あなたを長い間訪れなかったのは失敗だったなあ。萩でさえ一年の間にこんなに変化しているのだから。)
これ=代名詞
は=係助詞
下=名詞
の=格助詞
花薄=名詞
を=格助詞
ば=強調の係助詞。強調する意味があるが、訳す際に無視しても構わない。
逆さまに=ナリ活用の形容動詞「逆さまなり」の連用形
読む=マ行四段動詞「読む」の終止形
べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。
なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形。
これ=代名詞
も=係助詞
一つ=名詞
の=格助詞
姿=名詞
なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形。
これは、下の花薄をば、逆さまに読むべきなり。これも一つの姿なり。
これは、(句の)下の花薄を、逆さまに読むべきなのである。これも一つのよみ方である。