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紫式部日記『和泉式部と清少納言』解説・品詞分解(2)

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原文・現代語訳のみはこちら紫式部日記『和泉式部と清少納言』現代語訳(1)(2)

 

清少納言こそしたり顔にいみじう 侍り ける人。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となるが、ここでは省略されている。係り結びの省略。「なれ(断定の助動詞・已然形)」などが文末に省略されていると考えられる。

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

 

侍り=ラ変動詞「侍り(はべり)」の連用形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

清少納言は、得意顔でとても偉そうにしておりました人(です)。

 

 

さばかり さかしだち真名(まな)書きちらして侍るほども、よく見れ、まだいと足らこと多かり

 

さばかり=副詞、それほど、そのくらい。それほどまでに。「さ」と「ばかり」がくっついたもの。「さ」は副詞で、「そう、そのように」などの意味がある。

 

さかしだち=タ行四段動詞「賢しだつ(さかしだつ)」の連用形、利口ぶっている、小賢しい。しっかりしている。利口だ、優れている。

 

侍る=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連体形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は連用形

 

多かり=ク活用の形容詞「多し」の終止形。「多かり」は活用表で判断すると連用形であり、終止形ではないはずだが、このように終止形として使うことがある。  同様の例外として「同じ(シク活用)」が存在する。例:「同じ(連体形)/顔(名詞)」

 

あれほど利口ぶって、漢字を書き散らしております(その)程度も、よく見ると、まだたいそう足りないことが多い。

 

 

かく、人に異なら と思ひ好め人は、かならず見劣りし、

 

斯く(かく)=副詞、このように、こう

 

異なら=ナリ活用の形容動詞「異なり(ことなり)」の未然形、格別だ、特別優れている。他とは違っている、相違しているさま。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

このように、人より特別優れていようと思いたがる人は、必ず見劣りし、

 

 

行く末 うたてのみ侍れ 艶になりぬる人は、

 

行く末=名詞、将来、未来、行く先。 ※対義語は「来し方(きしかた)」で、意味は「過去、過ぎ去った時」

 

うたて=副詞、いやに、不快に。事態が悪い方へ進むさま、ますます、ひどく。普通でないさま、気味悪く

 

侍れ=ラ変動詞「侍り」の已然形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

艶に=ナリ活用の形容動詞「艶なり(えんなり)」の連用形、優雅だ、優美だ、風流だ

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

将来は悪くなるだけでございますので、風流ぶるようになってしまった人は、

 

 

いとすごう すずろなる も、もののあはれにすすみ、

 

すごう=ク活用の形容詞「すごし」の連用形が音便化したもの。もの寂しい、おそろしい、恐ろしいぐらい優れている

 

すずろなる=ナリ活用の形容動詞「すずろなり」の連体形、意に反して、意に関係なく。むやみやたらである。何の関係もないさま。

 

折(おり)=名詞、時、場合、機会、季節

 

もののあはれ=名詞、物事にふれて起こるしみじみとした感情、物事についてのしみじみとした情趣

 

ひどくもの寂しくてつまらない時も、しみじみと感動しているようにふるまい、



 

をかしきことも見すぐさほどに、おのづからさる まじく あだなるさまにも侍る べし

 

をかしき=シク活用の形容詞「をかし」の連体形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

さる=ラ変動詞「然り(さり)」の連体形、そうだ、そうである。適切である、ふさわしい、しかるべきだ。

 

まじく=打消当然の助動詞「まじ」の連用形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

 

あだなる=ナリ活用の形容動詞「あだなり」の連体形、誠実でない、浮気だ。はかない、むだである、つまらない。

 

侍る=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連体形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

べし=推量の助動詞「べし」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

趣のあることも見過ごさないうちに、自然とそうあってはならない誠実でない態度にもなるのでしょう。

 

 

そのあだになりぬる人の果て、いかで   よく侍ら 

 

あだに=ナリ活用の形容動詞「あだなり」の連用形、誠実でない、浮気だ。はかない、むだである、つまらない。

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

いかで=副詞、(反語・疑問で)どうして、どのようにして、どういうわけで。どうにかして、なんとかして。

 

か=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

侍ら=ラ変動詞「侍り」の未然形、「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

その誠実でなくなってしまった人の最期は、どうしてよいことでありましょうか。(いや、よくないでしょう。)

 

 

 紫式部日記『和泉式部と清少納言』まとめ

 

 

 

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