「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
作者:藤原定家(ふじわらのさだいえ)
春の夜の 夢の浮橋 とだえして 峰にわかるる 横雲の空
夢の浮橋=短くはかない夢。 浮橋=船を並べて簡易的に作った橋
跡絶え(とだえ)=名詞、途切れること。「わかるる」と縁語になっている。
※縁語…ある言葉と意味上の縁のある言葉。ある言葉から連想できる言葉が縁語。
例:「舟」の縁語は「漕ぐ」「沖」「海」「釣」など
し=サ変動詞「す」の連用形
わかるる=ラ行下二段動詞「分かる・別る(わかる)」の連体形
横雲の空=横にたなびいている雲が見える明け方の空
春の夜の短くはかない夢が途切れて、(起きると)峰から離れていく横にたなびく雲が見える明け方の空だよ。
※この和歌は源氏物語の最終巻の名前が「夢の浮橋」であることと、その中での薫君と浮き舟のはかない悲恋をふまえて詠まれている。