「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
原文・現代語訳のみはこちら 竹取物語『なよ竹のかぐや姫/かぐや姫の生い立ち』現代語訳(1)(2)
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。もう一つの「けり」も同様
つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、ここでは①反復「~しては~」の意味。
今となっては昔のことであるが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入って竹を取っては、それをさまざなことに使っていた。
名をば、さかきの造となむいひける。
ば=強調の係助詞。強調する意味があるが、訳す際に無視しても構わない。
なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び。係り結びとなる係助詞は「ぞ・なむ・や・か・こそ」とあるが、「ぞ・なむ・や・か」の結びは連体形となり、「こそ」の結びは已然形となる。「ぞ・なむ・こそ」は強調の意味である時がほとんどで、訳す際には無視して訳す感じになる。「さかきの造となむいひける。」→「さかきの造といひけり。」
名を、さかきの造と言った。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び。「ぞ・なむ・こそ」は強調の意味である時がほとんどで、訳す際には無視して訳す感じになる。「もと光る竹なむ一筋ありける。」→「もと光る竹一筋ありけり。」
その竹の中に、根本の光る竹が一本あった。
あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。
たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
不思議に思って近寄って見ると、筒の中が光っていた。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐ たり。
見れ=マ行上一動詞「見る(みる)」の已然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。
なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形
うつくしう=シク形容詞「うつくし」の連用形の音便化したもの、かわいい、いとしい、かわいらしい
ゐ=ワ行上一動詞「居る(ゐる)」の連用形。すわる。とまる、とどまる。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
それを見ると、三寸ぐらいの人が、たいそうかわいらしく座っていた。
翁言ふやう、「我が朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。
おはする=サ変動詞「おはす」の連体形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
翁が言うことには、「私が毎朝毎晩見回っている竹の中にいらっしゃることで、分かった。
子となり給ふ べき人な めり。」とて、手にうち入れて家へ持ちて来 ぬ。
給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。敬語を使った翁からの敬意。
べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。
な=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形。「なるめり」→「なんめり」(音便化)→「なめり」(無表記)と変化していった。
めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。
来=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に接続が連用形である完了の助動詞「に」があることから連用形だと判断して「来(き)」と読む。
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
我が子とおなりになるはずの人であるようだ。」と言って、手のひらに入れて家へ持って帰って来た。
妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。いと幼ければ籠に入れて養ふ。
す=使役の助動詞「す」の終止形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。
うつくしき=シク形容詞「うつくし」の連体形、かわいい、いとしい、かわいらしい
ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。
妻の嫗に預けて育てさせる。かわいらしいことはこの上ない。たいそう小さいので籠に入れて育てる。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節を隔ててよごとに金ある竹を見つくること重なりぬ。
節ごとに=節と節との間ごとに
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
竹取の翁は、竹を取る際に、この子を見つけて後に竹を取ると、節を隔てて節と節との間ごとに黄金の入っている竹を見つけることがたび重なった。
かくて翁やうやう豊かになりゆく。
かくて=接続詞、(話題を変えるときに、文頭において)さて、こうして、ところで。副詞、こうして、このようにして
やうやう=副詞、だんだん、しだいに
こうして翁はだんだんと裕福になってゆく。
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