解答はこちら玉勝間『師の説になづまざること』(1)問題の解答
おのれ古典を説くに、師の説と違へること多く、師の説のわろきことあるをば、わきまへ言ふことも多かるを、いとあるまじきことと思ふ人①多かめれど、これすなはちわが師の心にて、常に教へられしは、「のちによき考えの②出で来たらんには、必ずしも師の説にたがふとて、③なはばかりそ。」となむ、④教へられし。こはいと尊き教へにて、我が師の、よにすぐれ給へる一つなり。
おほかた、いにしへを考ふること、⑤さらに一人二人の力もて、ことごとくあきらめ尽くすべくもあらず。また、⑥よき人の説ならむからに、多くの中には、⑦誤りなどかなからむ。⑧必ずわろきこともまじらではえあらず。そのおのが心には、「今はいにしへの心ことごとく明らかなり。これをおきては、あるべくもあらず。」と思ひ定めたることも、思ひのほかに、また人のことなるよき考への出で来るわざなり。
⑨あまたの手を経るまにまに、先々の考えの上を、なほよく考へ究むるからに、次々に詳しく⑩なりもてゆくわざなれば、師の説なりとて、必ず⑪なづみ守るべきにもあらず。よきあしきを言はず、⑫ひたぶるに古きを守るは、学問の道には⑬言ふかひなきわざなり。
また、おのが師などのわろきことを言ひ表すは、いとも⑭かしこくはあれど、それも言はざれば、世の学者その説に惑ひて、長くよきを知る期(ご)なし。師の説なりとて、わろきを知りながら、言はず、つつみ隠して、よざまにつくろひをら⑮むは、ただ師のみを尊みて、⑯道をば思はざるなり。
問題1.⑩なりもてゆく、⑪なづみ、⑫ひたぶるに、⑭かしこく、のここでの意味を答えよ。
⑩
⑪
⑫
⑭
問題2.「⑮む」の助動詞の文法的意味として、「ア~エ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.推量 イ.意志 ウ.勧誘 エ.婉曲
⑮
問題3.①多かめれ、②出で来たらん、④教へられし、を例にならって品詞分解し、説明せよ。また「⑪さうざうしげなめり」の現代語訳も答えよ。
例:「い は/れ/ず。」
いは=動詞・四段・未然形
れ=助動詞・受身・未然形
ず=助動詞・打消・終止形
①品詞分解:「多 か め れ」
②品詞分解:「出 で 来 た ら ん」
④品詞分解:「教 へ ら れ し」
問題4.「⑯道をば思はざるなり」の「道」とは何の道であるかを明らかにして、現代語訳せよ。
⑯
問題5.「③なはばかりそ」、「⑤さらに一人二人の力もて、ことごとくあきらめ尽くすべくもあらず」、「⑥よき人の説ならむからに」、「⑦誤りなどかなからむ」、「⑧必ずわろきこともまじらではえあらず」、「⑨あまたの手を経るまにまに」、「⑬言ふかひなきわざなり」の現代語訳を答えよ。
③
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑬