フロンティア古典教室

源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(1)

      2017/11/10

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(1)(2)

 

かくて、二月の十余日に、朱雀院の姫宮、六条院へ渡り給ふ

 

かくて=副詞、このようにして、こうして

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である朱雀院の姫宮(=女三の宮)を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

こうして、二月の十日過ぎに、朱雀院の姫宮(=女三の宮)、六条院へお移りになる。

 

 

この も、御心まうけ世の常なら 

 

院=名詞、上皇・法皇・女院。または左記の者達の御所。貴族等の邸宅

 

に=格助詞、用法は主格。格助詞「に」は主格として使われることはあまりないが、直前に「場所」と「人物」の両方の意味を持つ名詞が使われている時は「主格」の用法で使われることがあるので注意。訳:「~におかれても・~が・~は・~も」

上記の「院」の他には、「内裏(天皇・皇居)」・「宮(皇族・皇族の住居)」・「御前(貴人・貴人のおそば)」などがある。

 

御心まうけ=名詞、ご準備、お心づもり

設け(まうけ)=名詞、準備、用意、備え。

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

この院(=光源氏)におかれても、ご準備は並ひととおりではない。

 

 

若菜参り 西の放ち出でに御帳立てて、そなたの一、二の対、(わた)殿(どの)かけて、女房の局々まで、こまかにしつらひ磨か 給へ 

 

参り=ラ行四段動詞「参る(まいる)」の連用形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

※「参る・奉る」は目的語に「衣(衣服)・食(食べ物、飲み物)・乗(乗り物)」が来るときは尊敬語となる。「衣(い)・食(しょく)・乗(じょう)」と覚えると良い。「衣:お召しになる、着なさる」、「食:召しあがる、お食べになる」、「乗:お乗りになる」

※「参る」は基本的に謙譲語。本動詞として「参上する、参る。差し上げる。」だったり、補助動詞として「~し申し上げる」となる。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

しつらひ=ハ行四段動詞「しつらふ」の連用形、飾り付ける、設備する

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。直後に尊敬語がくると「尊敬」の意味になることが多いが、今回のように「使役」の意味になることもあるので、やはり文脈判断が必要である。直後に尊敬語が来ないときは必ず「使役」の意味である。

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

 

り=完了の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

(光源氏が)若菜を召し上がった西の放ち出でに御帳台を立てて、そちらの一、二の対、渡殿にかけて、女房の各部屋に至るまで、念入りに飾りつけて磨かせなさった。

※放ち出で=名詞、几帳や障子などで仕切って応接用にした部屋

 

 

内裏参り 給ふ人の作法をまねびて、かの院よりも御調度など運ば

 

内裏(うち)=名詞、天皇の住まい、宮中、皇居。天皇。

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、謙譲語。動作の対象(参られた人)である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である朱雀院の姫宮(=女三の宮)を敬っている。作者からの敬意。

 

まねび=バ行四段動詞「学ぶ(まねぶ)」の連用形、ならう、まねをする

 

彼の(かの)=あの、例の。「か(名詞)/の(格助詞)」と品詞分解する

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

る=受身の助動詞「る」の終止形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

宮中に入内なさる人(=女三の宮)の儀式にならって、あちらの院(=朱雀院)からも御調度などが運ばれる。

※調度=名詞、身の回りの道具、調度品

 

 

渡り給ふ儀式、言へばさらなり

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である朱雀院の姫宮(=女三の宮)を敬っている。作者からの敬意。

 

さらなり=ナリ活用の形容動詞「さらなり」の終止形、言うまでもない、もちろんだ。言うのもいまさらな感じだ。

 

お移りになる儀式(の盛大さ)は、今さら言うまでもない。

 

 

御送りに、上達部などあまた 参り 給ふ

 

上達部(かんだちめ・かんだちべ)=公卿、大臣などで三位以上の人

 

あまた(数多)=副詞、たくさん、大勢

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、謙譲語。動作の対象(参られた人)である女三の宮を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である上達部などを敬っている。作者からの敬意。

 

お見送りに、上達部などが大勢参上なさる。

 

 

かの家司望み給ひ 大納言も、安から思ひながら候ひ 給ふ

 

彼の(かの)=あの、例の。「か(名詞)/の(格助詞)」と品詞分解する

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である大納言を敬っている。作者からの敬意。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

候ひ=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連用形、謙譲語。お仕えする、(貴人の)お側にお仕えする。動作の対象である朱雀院の姫宮(=女三の宮)を敬っている。作者からの敬意。

※「候ふ(さぶらふ)・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の終止形、尊敬語。動作の主体である大納言を敬っている。作者からの敬意。

 

あの家司をお望みになった大納言も、心中穏やかでなく思いながらも伺候なさる。



御車寄せたる所に、院渡り給ひて、おろし奉り 給ふなども、には違ひたることどもなり

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「たる」も同じ。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である院(=光源氏)を敬っている。作者からの敬意。

 

奉り=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」の連用形、謙譲語。動作の対象である女三の宮を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体である院(=光源氏)を敬っている。作者からの敬意。

 

例=名詞、通例。いつもの事、普段。当たり前の事、普通。

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

お車を寄せている所に、院(=光源氏)がいらっしゃって、お降ろし申し上げなさることなども、通例とは違っていることなどである。

 

 

ただ人におはすれ 、よろづのこと限りありて、内裏参りにも似

 

おはすれ=サ変動詞「おはす」の已然形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

(光源氏は)臣下でいらっしゃるので、あらゆることに制限があって、入内の儀式にも似ず、

 

 

婿の大君といはにもこと違ひて、めづらしき御仲のあはひども なむ

 

む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。直後に体言があると婉曲になりがち。婉曲とは遠回しな表現のこと。

訳:「いう(ような)こと」

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となるはずだが、ここでは省略されている。「ある」などが省略されていると考えられる。「訳:~である」

※今回のように係助詞の前に「に(断定の助動詞)」がついている時は「あり(ラ変動詞)」などが省略されている。場合によって敬語になったり、助動詞がついたりする。

「にや・にか」だと、「ある・侍る(「あり」の丁寧語)・あらむ・ありけむ」など

「にこそ」だと、「あれ・侍れ・あらめ・ありけめ」など

 

婿の大君というようなこととも事情が違って、珍しいご関係の間柄である。

 

 

続きはこちら源氏物語『女三の宮の降嫁』解説・品詞分解(2)

 

 源氏物語『女三の宮の降嫁』現代語訳(1)(2)

 

源氏物語『女三の宮の降嫁』まとめ

 

 

 

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