フロンティア古典教室

『赤壁の賦(せきへきのふ)』(2)原文・書き下し文・現代語訳

      2017/11/10

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

前半はこちら『赤壁の賦(せきへきのふ)』(1)原文・書き下し文・現代語訳

 

蘇子愀然トシテ、危坐シテ而問ヒテハク、「何レゾ()。」

()()(しゅう)(ぜん)として(えり)(ただ)()()して(かく)()ひて()はく、「(なん)()れぞ()(しか)るや。」と。

※「何為レゾ ~(スル)」=疑問・反語、「どうして ~か」

私(=蘇子)は悲しげな表情で襟を正し、姿勢を正して座って客人に尋ねて言うことには、「(その笛の音色は)どうしてそのよう(に悲しげ)であるのか。」と。

 

 

客曰ハク、「『月明ラカニ星稀ニシテ、烏鵲南ブトハ。』此曹孟徳()()

(かく)()はく、「()(つき)(あき)らかに(ほし)(まれ)にして、()(じゃく)(みなみ)()ぶ。』とは()(そう)(もう)(とく)()(あら)ずや。

※「 ~ や・か(哉・乎・邪など)」=疑問、「 ~ や」、「 ~ か。」

客人が言うことには、「『月が明るくて星はあまり出ておらず、かささぎが南に飛んで行く。』というのは、曹孟徳(=曹操)の詩ではないですか。

 

 

西ノカタ夏口、東ノカタメバ武昌、山川相繆、鬱乎トシテ蒼蒼タリ

西(にし)のかた()(こう)(のぞ)み、(ひがし)のかた()(しょう)(のぞ)めば、(さん)(せん)(あい)(まと)ひ、(うつ)()として(そう)(そう)たり。

 

西の方角に夏口を眺み、東の方角に武昌を眺めれば、山と川とが互いにからみ合って、草木が青々と生い茂っています。

 

 

孟徳()シメラレシ於周郞()

()(もう)(とく)(しゅう)(ろう)(くる)しめられし(ところ)(あら)ずや。

※「 ~ や・か(哉・乎・邪など)」=疑問、「 ~ や」、「 ~ か。」

ここは孟徳(=曹操)が周郞(=周瑜)に苦しめられた場所ではないですか。

 

 

タリテ荊州、下江陵ヨリ、順ヒテレニ而東スルニ()、舳艫千里、旌旗蔽

()(けい)(しゅう)(やぶ)り、(こう)(りょう)より(くだ)り、(なが)れに(したが)ひて(ひがし)するに()たりてや、(じく)()(せん)()(せい)()(そら)(おお)ふ。

 

(孟徳が)荊州を破り、江陵から下り、流れに従って東に進むまさにその時、(孟徳の)軍艦の舳先と船尾が千里までも連なり、軍旗は空を覆い隠すほどでした。

 

 

ミテ、横タヘテ、固一世()(なり)

(さけ)(した)みて(こう)(のぞ)み、(ほこ)(よこ)たへて()()す、(まこと)(いっ)(せい)(ゆう)なり。

 

(孟徳は)酒を酌んで長江に臨み、矛を横たえて詩を作った(彼は)、本当にその時代の英雄でした。

 

 

ルニ今安クニカ()

(しか)るに(いま)(いず)くにか()るや。

※「安クニカ ~(スル)」=疑問、「どこに ~か」

しかし今はどこにいるのでしょうか。



ンヤ()子、漁於江渚()、侶トシテ魚鰕而友トシ麋鹿

(いわ)んや(われ)()と、(こう)(しょ)(ほとり)(ぎょ)(しょう)し、(ぎょ)()(とも)として()鹿(ろく)(とも)とし、

※「況ンヤ乎」=抑揚、「況(いは)んやCをや」→「ましてCの場合はなおさら(B)だ。」

まして私とあなたは、長江のほとりで漁師や樵(きこり)のような生活をし、魚とエビを友として大鹿と鹿を友とし、

 

 

一葉()軽舟、挙ゲテ匏樽ツテ相属

(いち)(よう)(けい)(しゅう)()し、(ほう)(そん)()げて()(あい)(すす)め、

 

一枚の葉のような小舟に乗り、ひょうたんで作った酒器をかかげて互いに酒を酌み交わし、

 

 

蜉蝣於天地、渺タル滄海()一粟ナルヲヤ

()(ゆう)(てん)()()す、(びょう)たる(そう)(かい)(いち)(ぞく)なるをや。

 

かげろうのようにはかない人生を天地に預け、広大な青い海の中に浮かぶ一粒の粟のような存在なのだからなおさら(はかないもの)なのです。

 

 

シミ也須臾ナルヲ、羨長江()一レキヲマリ

()(せい)(しゅ)()なるを(かな)しみ、(ちょう)(こう)(きわ)まり()きを(うらや)む。

 

自分の命がほんの短いものであることを悲しみ、(それに対して)長江の流れが尽きることがないのを羨ましく思うのです。

 

 

ミテ飛仙ツテ遨遊、抱キテ明月而長ヘニヘンコトハ

()(せん)(わきばさ)みて()つて(ごう)(ゆう)し、(めい)(げつ)(いだ)きて(とこし)へに()へんことは、

 

空飛ぶ仙人を引き連れて自由気ままに遊び、明月を抱いて長生きするようなことは、

 

 

()ルヲベカラ乎驟ニハ、託スト遺響於悲風。」

(にわか)には()べからざるを()り、()(きょう)()(ふう)(たく)す。」と。

※「不カラ ~(ス)」=不可能、「 ~(す)べからず」、「(状況から見て) ~できない。/ ~してはならない。(禁止)」

すぐには手に入れることができないということを知り、洞簫の余韻を悲しげな秋風に託したのです。」と。

 

 

蘇子曰ハク、「客亦知()一レ()

()()()はく、「(かく)(また)()(みず)(つき)とを()るか。

 

私(=蘇子)が言うことには、「あなたもまたあの(長江の)水と月とを知っていますか。

 

 

(ごと)クナレドモクノ、而(いま/ざ)ダ/ル(なり)

()(もの)()のごとくなれども、(いま)(かつ)()かざるなり。

※「(いま/ざ) ~ (セ)」=再読文字、「未だ ~(せ)ず」、「まだ ~(し)ない」

流れ行くものはこの(=長江)ようなものですが、今までに(川の水全部が)流れて行ってしまったことはありません。

 

 

盈虚スル(ごと)クナレドモ、而卒消長スル(なり)

(えい)(きょ)する(もの)()のごとくなれども、(つい)(しょう)(ちょう)する()きなり。

 

満ちたり欠けたりするものはあの(月の)ようでありますが、結局消えたり大きくなったりすることはありません。

 

 

()リシテズル而観レバ、則天地()ツテ一瞬ナル

(けだ)(まさ)()(へん)ずる(もの)よりして(これ)()れば、(すなわ)(てん)()(かつ)()(いっ)(しゅん)なる(あた)はず。

※「不(スル)(コト)」=不可能、「 ~(する)(こと)(あた)はず」(能力がなくて) ~Aできない」

思うに、(川の流れや月などが)変化するという観点からこれらを見ると、天地も一瞬でも同じ状態ではありえません。

 

 

()リシテ()而観レバ、則()我皆無クル(なり)

()(へん)ぜざる(もの)よりして(これ)()れば、(すなわ)(もの)(われ)(みな)()くること()きなり。

 

変化しないという観点からこれらをみると、物も私も全部尽きるということはありません。

 

 

ルニ又何ヲカマン()。且天地()間、物各有主。

(しか)るに(また)(なに)をか(うらや)まんや。()()(てん)()(かん)(もの)(おのおの)(しゅ)()り。

※「何ヲカ ~ (セ)ン(ヤ)」=反語、「何をか ~(せ)ん(や)」、「どうして ~(する)だろうか。(いや、~ない)」

※夫れ(それ)=そもそも

それなのにまた、何を羨むのでしょうか。(いや、何も羨まない。)その上そもそも天地の間には、全ての物にそれぞれ持ち主がいます。

 

 

シクモズンバ()一レスル、雖一毫而莫ルコト

(いや)しくも(われ)(ゆう)する(ところ)(あら)ずんば、(いち)(ごう)(いえど)()ること()し。

※苟=仮定「苟シクモ」、「苟しくも~ば」、「もし~ならば」

※「莫スル(コト・モノ)」=禁止、「Aしてはならない」

もしも自分の所有する物でなければ、ほんの少しのものだとしても取ることはあってなりません。

 

 

江上()清風()ノミ山間()明月、耳得而為、目遇ヒテ而成

()(こう)(じょう)(せい)(ふう)(さん)(かん)(めい)(げつ)とのみ、(みみ)(これ)()(こえ)()し、()(これ)()ひて(いろ)()す。

 

ただ長江のほとりのさわやか風と山間の明月だけは、耳でこれ(=風)を聞いて声として感じ、目でこれ(=月)を見て美しい色だと感じるのです。

 

 

レドモズル、用ヰレドモ()

(これ)()れども(きん)ずる()(これ)(もち)ゐれど()きず。

 

これら(=風と明月)を取っても禁じられておらず、これらはいくら用いても尽きることはありません。



造物者()無尽蔵(なり)。而シテ()()ナリトスル。」

()(ぞう)(ぶつ)(しゃ)()(じん)(ぞう)なり。(しか)して(われ)()との(とも)(てき)する(ところ)なり。」と。

 

これらは万物の創造主の尽きることのない蓄えなのです。そして私とあなたとともに心にかなうものなのです。」と。

 

 

客喜ビテ而笑、洗ヒテ。肴核既キテ、杯盤狼藉タリ

(かく)(よろこ)びて(わら)ひ、(さかずき)(あら)ひて(さら)()む。(こう)(かく)(すで)()きて、(はい)(ばん)(ろう)(ぜき)たり。

 

客人は喜んで笑い、杯を洗ってさらに酒を酌んだ。酒の(さかな)はなくなり、杯や皿が散らかった

 

 

相与シテ乎舟中()東方()ムヲ

(あい)(とも)(しょう)(ちゅう)(ちん)(しゃ)して、(とう)(ほう)(すで)(しら)むを()らず。

 

舟の中で互いに寄りかかって眠り、東の空がすでに白み始めたことに気づかなかった。

 

 

『赤壁の賦(せきへきのふ)』(1)原文・書き下し文・現代語訳

 

 

 

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