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伊勢物語『筒井筒』解説・品詞分解(1)

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昔、田舎(いなか)わたらひ ける人の子ども、井のもとに()でて遊びけるを、

 

田舎わたらひしける人=田舎回りの行商人、田舎へ行商して生活する人。地方官吏。

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「ける」も同じ。

 

昔、田舎まわりの行商などをしていた人の子供達は、井戸の辺りに出て遊んでいたが、

 

 

おとなになり  けれ 、男も女も恥ぢかはしてあり けれ 

 

なり=ラ行四段動詞「成る(なる)」の連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。もう一つの「けれ」も同じ。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

大人になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれど、

 

 

男はこの女をこそ  と思ふ。

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

 

得(え)=ア行下二段動詞「得(う)」の未然形。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

 

め=意志の助動詞「む」の已然形、接続は未然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

男はこの女こそを自分の妻にしたいと思った。



 

女はこの男をと思ひつつ、親のあは すれ ども、聞か なむ あり ける

 

つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、ここでは②継続「~し続けて」の意味。

 

あは=ハ行四段動詞「会ふ・逢ふ(あふ)」の未然形、結婚する。出会う。争う。

 

すれ=使役の助動詞「す」の已然形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

女もこの男を(夫にしたいと)思い続けて、親は(他の男と)結婚させようとするけれども、聞き入れないでいた。

 

 

さて、この隣の男のもとよりかく なむ

 

さて=接続詞、(話題を変えるときに、文頭において)さて、そして、ところで、それで

 

より=格助詞、(起点)~から。(手段・用法)~で。(経過点)~を通って。(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや。

 

斯く(かく)=副詞、こう、このように

 

なむ=強調の係助詞、結びは連体形となるが、直後に「言ひ(ラ行四段動詞・連体形)/おこせ(サ行下二段動詞・連用形)/たる(完了の助動詞・連体形)」などが省略されている。係り結びの省略。

おこせ=サ行下二段動詞「遣す(おこす)」の連用形、こちらへ送ってくる、よこす

 

そして、この隣の男のところから、このように(歌を送ってきた)、

 

 

(つつ)()(づつ)  ()(づつ)にかけ  まろたけ  過ぎ   らし     ざるまに

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

麻呂・麿(まろ)=名詞、私

 

丈・長(たけ)=名詞、身長。高さ。長さ。

 

過ぎ=ガ行上二段動詞「過ぐ」の連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

け=過去の助動詞「けり」の連体形が省略されたもの。接続は体言・連体形。「けるらし」→「けらし」

 

らし=推定の助動詞「らし」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。客観的事実を根拠とする推定。

 

な=終助詞。用法は詠嘆。

 

妹(いも)=名詞、親しい女性、妻。対義語「背・兄・夫(せ)」夫、親しい男性

 

見=マ行上一動詞「見る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

ざる=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

筒井筒  井筒にかけし  まろがたけ  過ぎにけらしな  妹見ざるまに

筒型の井戸の井筒と背比べをした私の背丈も(井筒の高さを)超えてしまったようだよ。いとしいあなたに会わないうちに。



 

女、返し、

 

女は、返歌を

 

 

くらべこ   振り分け髪も  肩過ぎ  君なら して  たれ ()べき

 

くらべこ=カ変動詞「比べ来(くらべく)」の未然形

 

し=過去の助動詞「き」の連体形。接続は連用形だが、直前にカ変動詞を置くときは、例外的に未然形にする。ただし「来(き)し方」と言う時は「来」を連用形にする。「来し方」の意味は「過去、過ぎ去った時」である。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

たれ=名詞、誰

 

か=反語・疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

べき=適当の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

くらべこし  振り分け髪も  肩過ぎぬ  君ならずして  たれか上ぐべき

(あなたと長さを)比べ合って来た私の振り分け髪も、肩よりも長くなりました。あなたではなくて、誰のためにこの髪を結い上げましょうか。(いえ、あなた以外いません。)

 

 

など言ひ言ひて、つひに本意ごとく あひ  けり

 

本意(ほい)=名詞、本来の意志、かねてからの願い

 

ごとく=比況の助動詞「ごとし」の連用形

 

あひ=ハ行四段動詞「会ふ・逢ふ(あふ)」の連用形、結婚する。出会う。争う。

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

などと、互いに歌を詠んで、とうとうかねてからの願い通り結婚した。

 

 

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伊勢物語『筒井筒』まとめ

 

 

 

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