フロンティア古典教室

枕草子『上にさぶらふ御猫は』解説・品詞分解(1)

      2016/08/15

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳のみはこちら枕草子『上にさぶらふ御猫は』現代語訳(1)

 

(うえ)候ふ(おおん)(ねこ)は、かうぶりにて(みょう)()のおとどとて、

 

上(うえ)=名詞、天皇、主上。天皇の間、殿上の間、清涼殿

 

候ふ=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連体形、謙譲語。お仕え申し上げる、おそばにいる。動作の対象である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

※「候ふ(さぶらふ)・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

殿上にお仕えする猫は、五位の位をいただいて(名前を)「命婦のおとど」といって、

※命婦のおとど=猫の名前。長い名前なので以下現代語訳において「猫」と表記。

 

 

いみじう をかしけれ かしづか  給ふが、(はし)()でて()たるに、

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても。

 

をかしけれ=シク活用の形容詞「をかし」の已然形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

かしづか=カ行四段動詞「かしづく」の未然形、大切にする、大切に養い育てる、大切にお世話する。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連体形、尊敬語

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

たいそうかわいいので、(天皇も)大切にしていらっしゃる猫が、縁側に出て寝ていたので、

 

 

乳母(めのと)の馬の命婦、あな まさな 。入り給へ。」と呼ぶに、

 

あなまさな=「ああ、みっともない。」

あな+形容詞の語幹=感動文「ああ、~」

まさな=ク活用の形容詞「正無し(まさなし)」の語幹、良くない、みっともない

 

や=間投助詞

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の命令形、尊敬語。動作の主体である猫を敬っている。馬の命婦からの敬意。

 

(猫の)世話役の馬の命婦が、「まあ、みっともない。(部屋の中に)お入りなさい。」と呼んだところ、

 

 

日のさし入りたるに、うち眠りて たるを、おどすとて、

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「たる」も同じ。

 

居=ワ行上一段動詞「居る(ゐる)」の連用形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

日が差し込んでいる場所に、寝ているのを、驚かそうと思って、

 

 

(おきな)(まろ)いづら。命婦のおとど食へ。」と言ふに、

 

いづら=名詞、どこ。

 

食へ=ハ行四段動詞「食ふ」の命令形

 

「翁丸(=犬の名前)は、どこにいるの。命婦のおとどにかみつけ。」と言うと、

 

 

まこととて、しれもの走りかかりたれ 、おびえ惑ひて()()のうちに入り

 

か=疑問の係助詞

 

痴れ者(しれもの)=名詞、ばか者、愚か者。

 

たれ=完了の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

おびえ惑ふ=ハ行四段動詞「おびえ惑ふ」の連体形、ひどくおびえる、すっかりおびえる。

惑ふ(まどふ)=補助動詞ハ行四段、ひどく ~する、とにかく ~する。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

(翁丸は)本当かと思って、愚か者(の翁丸)は走りかかったので、(猫は)ひどくおびえて御簾の中に逃げ込んでしまった。

 

 

(あさ)(がれい)御前に、上おはしますに、御覧じいみじう 驚か  給ふ

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。ここでは、場所の意味で使われている。

 

おはします=サ行四段動詞「おはします」の連体形。「あり・居り・行く・来」の尊敬語。「おはす」より敬意が高い言い方。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

御覧じ=サ変動詞「御覧ず(ごらんず)」の連用形、ご覧になる。動作の主体である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても。

 

驚か=カ行四段動詞「驚く(おどろく)」の未然形、目を覚ます、起きる。はっと気づく。驚く。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語

 

朝餉の間に、天皇がいらっしゃる時で、(この様子を)ご覧になってたいそう驚きなさる。

※朝餉の御前(あさがれいのおまえ)=朝餉の間、天皇の食事室。

 

 

猫は御ふところに入れさせ 給ひて、をのこども召せ 蔵人(くろうど)(ただ)(たか)・なりなか参り たるに、

 

させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

 

召せ=サ行四段動詞「召す」の已然形、尊敬語、召し上がる、お食べになる。呼び寄せる。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている。

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語。動作の対象である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

猫を懐にお入れになって、男たちを呼び寄せなさると、蔵人(=現代でいう秘書)の忠隆となりなかが参上したので、

 

 

「この翁丸うち調じて、犬島につかはせ。ただいま。」

 

調じ=サ変動詞「調ず(ちょうず)」の連用形、こらしめる。(悪霊などを)追い払う、調伏する。作る。料理する。

 

つかはせ=サ行四段動詞「遣はす(つかはす)」の命令形、「遣る」・「与ふ」の尊敬語。派遣する、使いを送る。(物を)お与えになる。

 

(天皇は)「この翁丸を打ちこらしめて、犬島に行かせなさい。今すぐに。」

 

 

仰せ らるれ 、集まり狩りさわぐ。

 

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の未然形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。動作の主体(おっしゃる人)である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

らるれ=尊敬の助動詞「らる」の已然形、接続は未然形。直前の「仰せ」と合わせて二重敬語、いずれも天皇(=一条天皇)を敬っている。助動詞「らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味があるが、「仰せらる」の場合の「らる」は必ず「尊敬」と思ってよい。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

とおっしゃるので、(人々が)集まって(翁丸を)狩り立てて騒ぐ。

 

 

馬の命婦をもさいなみて、「乳母かへ 。いとうしろめたし。」

 

さいなみ=マ行四段動詞「さいなむ」の連用形、責める、叱る。

 

て=強意の助動詞「つ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる。

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

うしろめたし=ク活用の形容詞「うしろめたし」の終止形、心配だ、気がかりだ、不安だ

 

(天皇は)馬の命婦をも責めて、「(猫の)世話役を替えよう。(馬の命婦では)とても心配である。」

 

 

仰せ らるれ 御前にも出で

 

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の未然形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。動作の主体(おっしゃる人)である天皇(=一条天皇)を敬っている。作者からの敬意。

 

らるれ=尊敬の助動詞「らる」の已然形、接続は未然形。直前の「仰せ」と合わせて二重敬語、いずれも天皇(=一条天皇)を敬っている。助動詞「らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味があるが、「仰せらる」の場合の「らる」は必ず「尊敬」と思ってよい。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。ここでは、場所の意味で使われている。

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

とおっしゃっるので、(馬の命婦は恐れ多くて)天皇の御前にも出ない。

 

 

犬は狩り出でて、滝口などして 追ひつかはし 

 

して=格助詞、①共同「~とともに」、②手段・方法「~で」、③使役の対象「~に命じて」の三つの意味があるが、ここでは③使役の対象「~に命じて」の意味。

 

追ひつかはし=サ行四段動詞「追ひ遣はす」の連用形、追放してしまわれた。

 

つ=完了の助動詞「つ」の終止形、接続は連用形

 

犬は狩り出して、滝口の武士(=警護役)などに命じて追放してしまわれた。

 

 

続きはこちら枕草子『上にさぶらふ御猫は』解説・品詞分解(2)

 

枕草子『上にさぶらふ御猫は』まとめ

 

 

 

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