古文

枕草子『宮に初めて参りたるころ』解説・品詞分解(3)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

枕草子『宮に初めて参りたるころ』まとめ

 

昼つ方、「今日は、なほ 参れ。雪に曇りてあらはに  ある まじ。」など、

 

なほ=副詞、やはり、そのまま、依然として。さらに。それでもやはり。

 

参れ=ラ行四段動詞「参る」の命令形、「行く」の謙譲語。動作の対象(参られた人)である中宮定子を敬っている。中宮定子からの敬意。

 

あらはに=ナリ活用の形容動詞「露なり・顕なり(あらはなり)」の連用形、まる見えだ、露骨だ。明らかだ、はっきりしている。

 

も=強調の係助詞。強調する意味があるが、訳す際に無視しても構わない。

 

ある=ラ変動詞「あり」の連体形

 

まじ=打消推量の助動詞「まじ」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

 

昼ごろ、(中宮様から)「今日は、やはり(昼間にも)参上しなさい。雪で曇っていて、丸見えでもないでしょう。」などと、

 

 

たびたび召せ 、この(つぼね)のあるじも、「見苦し。

 

召せ=サ行四段動詞「召す」の已然形、尊敬語、お呼びになる、呼び寄せる。召し上がる、お食べになる。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

たびたびお呼びになるので、この局(=部屋)の主人も、「見苦しいですよ。

 

 

のみ (こも)たら する

 

さ=副詞、そう、その通りに、そのように。

 

や=疑問・反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

たら=存続の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

する=サ変動詞「す」の連体形、する。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

そのように(局に)こもってばかりいようとするのですか。(いや、そのようにこもってばかりいてはいけませんよ。)

 

 

あへなきまで()(まえ)許さ たるは、

 

あへなき=ク活用の形容詞「あへなし」の連体形、張り合いがない、あっけない。どうしようもない、仕方がない。

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。ここでは、場所の意味で使われている。

 

れ=受身の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

あっけないほど(容易に)中宮様の御前に伺候することが許されたのは、

 

 

 おぼしめすやうこそ あら 

 

さ=副詞、そう、その通りに、そのように。

 

おぼしめす=サ行四段動詞「思し召す(おぼしめす)」の連体形、「思ふ」の尊敬語。動作の主体である中宮定子を敬っている。局のあるじからの敬意。

 

こそ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

あら=ラ変動詞「あり」の未然形

 

め=推量の助動詞「む」の已然形、接続は未然形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

そうお思いになる理由があるのでしょう。



 

思ふにたがふはにくきもの。」と、

 

たがふ=ハ行四段動詞「違ふ(たがふ)」の連体形、食い違う、相違する。背く。

 

ぞ=強調の係助詞

 

ご好意に(そむ)のは腹の立つものですよ。」と言って、

 

 

ただいそがしに出だし立つれ 

 

出だし立つれ=タ行下二段動詞「出だし立つれ」の已然形

※四段と下二段の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わる。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

ひたすら急がせて出仕させるので、

 

 

あれ もあら心地すれ 参る 、いと苦しき

 

あれ(吾・我)=名詞、私

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

参る=ラ行四段動詞「参る」の連体形、「行く」の謙譲語。動作の対象(参られた人)である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

苦しき=シク活用の形容詞「苦し」の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

自分が自分でない心地がするけれど参上するのは、とてもつらい。

 

 

火焼屋の上に降り積みたるも、めづらしうをかし

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

めづらしう=シク活用の形容詞「珍し」の連用形が音便化したもの

 

をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

火焼屋の上に(雪が)積もっているのも、珍しく、趣深い。

 

 

 

枕草子『宮に初めて参りたるころ』まとめ

 

 

 

-古文

© 2024 フロンティア古典教室 Powered by AFFINGER5