フロンティア古典教室

枕草子『宮に初めて参りたるころ』解説・品詞分解(2)

   

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

枕草子『宮に初めて参りたるころ』まとめ

 

(あかつき)にはとく下り といそがるる

 

疾く(とく)=ク活用の形容詞「疾し(とし)」の連用形、早い。速い。

 

な=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

 

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

るる=自発の助動詞「る」の連体形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

自発:「~せずにはいられない、自然と~される」

 

明け方には早く退出しようと自然と気が()く。

 

 

(かづら)()の神もしばし。」など仰せ らるるを、

 

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の未然形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。動作の主体(おっしゃる人)である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

らるる=尊敬の助動詞「らる」の連体形、接続は未然形。直前の「仰せ」と合わせて二重敬語、いずれも中宮定子を敬っている。助動詞「らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味があるが、「仰せらる」の場合の「らる」は必ず「尊敬」と思ってよい。

 

「葛城の神(のように夜明けを嫌うあなた)も、もうしばらくは(ここにいてもよいのではないですか)。」などと(中宮様は)おっしゃるが、

 

 

いかで  (すじ)かひ御覧ぜ られ とて、

 

いかで=副詞、(疑問・反語で)どうして

 

か=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

は=強調の係助詞。現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。「~か!(いや、そうじゃないだろう。)」。なので、「~やは・~かは」とあれば反語の可能性が高い。

 

御覧ぜ=サ変動詞「御覧ず」の未然形、「見る」の尊敬語。御覧になる。動作の主体である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

られ=受身の助動詞「らる」の未然形、接続は未然形。「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。

 

む=意志の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

どうして斜めからでも(私の顔を中宮様に)御覧になられようか(、いや、御覧になられたくない)と思って、

 

 

なほ伏したれ ()(こう)()参ら 

 

なほ=副詞、やはり、そのまま、依然として。さらに。それでもやはり。

 

たれ=存続の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

参ら=ラ行四段動詞「参る」の連用形、謙譲語。動作の対象である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

御格子参る=「御格子をお上げする」、「御格子をお下ろしする」などと訳す

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

そのまま伏せているので、御格子もお上げしていない。

 

 

女官ども参りて、「これ、放た 給へ。」など言ふを聞きて、

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語。動作の対象(参られた人)である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の命令形、尊敬語。

 

女官たちが参上して、「これ(=格子)をお開けください。」などと言うのを聞いて、

 

 

女房の放つを、「まな。」と仰せ らるれ 、笑ひて帰り

 

まな=感動詞、だめ、するな。

 

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の未然形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。動作の主体(おっしゃる人)である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

らるれ=尊敬の助動詞「らる」の已然形、接続は未然形。直前の「仰せ」と合わせて二重敬語、いずれも中宮定子を敬っている。助動詞「らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味があるが、「仰せらる」の場合の「らる」は必ず「尊敬」と思ってよい。

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

(他の)女房が開けるのを、「(開けては)いけません。」と(中宮様が)おっしゃるので、(女房は)笑って帰ってしまった。

 

 

ものなど問は 給ひのたまはするに、久しうなりぬれ 

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。

 

のたまはする=サ行下二段動詞「のたまはす」の連体形、「言ふ」の尊敬語。「のたまふ」より敬意が強い。おっしゃる。動作の主体である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

久しう=シク活用の形容詞「久し(ひさし)」の連用形が音便化したもの。

 

ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

(その後、中宮様は)何かと質問をなさったり、お話しなさるうちに、長いこと時間がたったので、

 

 

「下りまほしうなり たら さらば、はや。

 

まほしう=希望・願望の助動詞「まほし」の連用形が音便化したもの、接続は未然形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

たら=存続の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形

 

む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

さらば=接続語、それならば、それでは

 

「退出したくなったでしょう。それでは、早く(お下がりなさい)。

 

 

夜さりは、とく。」と仰せ らる

 

夜さり=名詞、夜、夜になる頃

 

疾く(とく)=ク活用の形容詞「疾し(とし)」の連用形、早い。速い。

 

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の未然形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。動作の主体(おっしゃる人)である中宮定子を敬っている。作者からの敬意。

 

らる=尊敬の助動詞「らる」の終止形、接続は未然形。直前の「仰せ」と合わせて二重敬語、いずれも中宮定子を敬っている。助動詞「らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の4つの意味があるが、「仰せらる」の場合の「らる」は必ず「尊敬」と思ってよい。

 

夜になる頃には、早く(来てください)。」と(中宮様が)おっしゃる。

 

 

ゐざり隠るるや遅きと、上げちらし たるに、雪降り けり

 

や遅き=(~する)やいなや、(~する)とすぐに。

や=係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

遅き=ク活用の形容詞「遅し」の連体形。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

上げちらし=サ行四段動詞「上げ散らす」の連用形、乱暴に上げる。

散らす=補助動詞サ行四段、荒々しく…する、むやみに…する。

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去、あるいは詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

(中宮様の前から)(ひざ)ついまま(後ろに下がって)隠れるやいなや、(女房たちが格子を)乱暴に上げると、(外は)雪が降っていた。

 

 

(とう)()殿(でん)()(まえ)は、(たて)(じとみ)近くてせばし。雪いとをかし

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。ここでは、場所の意味で使われている。

 

立蔀(たてじとみ)=名詞、板戸

 

せばし=ク活用の形容詞「狭し(せばし)」の終止形、狭い。

 

をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

登花殿の前のお庭は、立蔀(=板戸)が近くて狭い。(しかし、)雪景色はたいそう趣がある。

 

 

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枕草子『宮に初めて参りたるころ』まとめ

 

 

 

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