フロンティア古典教室

枕草子『すさまじきもの』解説・品詞分解(3)

      2016/08/31

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

枕草子『すさまじきもの』まとめ

 

()(もく)(つかさ) 人の家。今年は必ずと聞きて、はやうあり 者どもの、ほかほかなり つる

 

得(え)=ア行下二段動詞「得(う)」の未然形。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

ほかほかなり=ナリ活用の形容動詞「外々なり(ほかほかなり)」の連用形、離れ離れだ、別々だ

 

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

 

除目(=官吏任命の儀式)に官職を得られなかった人の家(は興ざめである)。今年は必ず(任官される)と聞いて、以前に仕えていた者たちで、離れ離れになっていた者たちや、

 

 

田舎だちたる所に住む者どもなど、皆集まりて、出で入る車の(ながえ)(ひま)なく見え、

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形

 

隙なく=ク活用の形容詞「隙なし(ひまなし)」の連用形、絶え間ない、頻繁だ

 

田舎じみた所に住む者たちが、みな集まってきて、出入りする牛車の轅も絶え間なく見え、

 

 

もの(もう)する供に、我も我もと参り つかうまつり、物食ひ酒飲み、ののしり合へ に、

 

する=サ変動詞「す」の連体形、する。

 

参り=ラ行四段動詞「参る」の連用形、「行く」の謙譲語。

 

つかまつり=補助動詞ラ行四段「仕うまつる」の連用形、謙譲語。

 

ののしり合へ=ハ行四段動詞「罵り合ふ」の已然形、大声で騒ぎあう、みんなで大騒ぎする。

罵る(ののしる)=ラ行四段動詞、大声で騒ぐ、大騒ぎする。

合ふ=補助動詞ハ行四段、みんな…する、・・・しあう。

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

(主人が任官祈願のために)寺社に参拝するお供に、我も我もと参上し、物を食い酒を飲んで、騒ぎ合っていたが、

 

 

果つる(あかつき)まで門たたく音も あやしうなど、耳立てて聞け

 

果つる=タ行下二段動詞「果つ」の連体形、終わる、終わりになる

 

せ=サ変動詞「す」の未然形、する。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

あやしう=シク活用の形容詞「あやし」の連用形が音便化したもの、不思議だ、変だ。身分が低い、卑しい。見苦しい、みすぼらしい。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

(任官式の)終わる明け方まで門をたたく音もせず、妙だなと耳をすまして聞くと、

 

 

先追ふ声々などして(かん)(だち)()など皆出で(たま)

 

上達部(かんだちめ・かんだちべ)=公卿、大臣などで三位以上の人

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

(貴人の通行のための)先払いする声などがして、(任官式を終えた)上達部たちはみな退出なさってしまった。

 

 

もの聞きに、(よい)より寒がりわななき をり ける()()(おとこ)

 

宵(よい)=名詞、夜に入って間もないころ

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

わななき=カ行四段動詞「わななく」の連用形、震える

 

をり=補助動詞ラ変「居り(をり)」の連体形。動作・状態の存続を表す、「~ている」

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

下衆(げす)=名詞、身分の低い者

 

様子を聞きに、宵から(出かけて)寒がり震えていた使用人の男が、

 

 

いともの憂げに歩み来るを見る者どもは、問ひだにも問は

 

もの憂げに=ナリ活用の形容動詞「もの憂げなり」の連用形、なんとなく憂鬱そうである、つらそうだ。「もの」は接頭語であり、「なんとなく」といった意味がある。

 

来る(くる)=カ変動詞「来(く)」の連体形

 

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

 

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

ひどく憂鬱そうに歩いてくるのを見る者たちは、尋ねることさえもできず、

 

 

外より来たる者など、「殿は何に なら  給ひ たる。」など問ふに、

 

来たる=ラ行四段動詞「来たる(きたる)」の連体形

 

ぞ=強調の係助詞。結びは連体形となるが、係り結びの消滅が起こっている。本来の結びは「問ふ」の部分であるが、接続助詞「に」が来ているため、結びの部分が消滅してしまっている。これを「係り結びの消滅(流れ)」と言う。「問ふ」は連体形だが、これは「に」を受けてのものである。

 

か=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

なら=ラ行四段動詞「成る」の未然形

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっている。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

 

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

よそから来ている者などが、「ご主人は何におなりになりましたか。」などと尋ねると、

 

 

いらへには「何の(ぜん)() こそ 。」など、必ずいらふる

 

いらへ=名詞、返事、返答。

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となるが、直後に「あれ(ラ変動詞・已然形)」、「侍れ(ラ変動詞・丁寧語・已然形)」などが省略されている。係り結びの省略。

※今回のように係助詞の前に「に(断定の助動詞)」がついている時は「あり(ラ変動詞)」などが省略されている。場合によって敬語になったり、助動詞がついたりする。

「にや・にか」だと、「ある・侍る(「あり」の丁寧語)・あらむ・ありけむ」など

「にこそ」だと、「あれ・侍れ・あらめ・ありけめ」など

 

は=強調の係助詞。強調する意味があるが、訳す際に無視しても構わない。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

いらふる=ハ行下二段動詞「答ふ/応ふ(いらふ)」の連体形、答える、返事をする

 

返事には「どこそこの国の前の国司です。」などと、必ず答える。

 

 

まことに頼み ける者は、いと嘆かしと思へ

 

頼み=マ行四段動詞「頼む(たのむ)」の連用形。頼みに思う、あてにする。

※四段活用と下二段活用の両方になる動詞があり、下二段になると「使役」の意味が加わり、「頼みに思わせる、あてにさせる」といった意味になる。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

本当に(主人の任官を)あてにしていた者は、たいそう嘆かわしいと思っている。

 

 

つとめてになりて、ひまなく をり つる者ども、一人二人すべり出でて去ぬ

 

つとめて=名詞、早朝、朝早く。翌朝。

 

ひまなく=ク活用の形容詞「隙なし(ひまなし)」、絶え間ない、頻繁だ

 

をり=ラ変動詞「居り(をり)」の連用形

 

つる=過去の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

 

去ぬ=ナ変動詞「去ぬ(いぬ)」の終止形。ナ行変格活用の動詞は「死ぬ・往(い)ぬ・去(い)ぬ」

 

早朝になり、すき間なくいた者たちは、一人二人とこっそり抜け出して帰って行く。

 

 

古き者どもの、さも 行き離るまじきは、来年の国々、手を折りてうち数へなどて、

 

さ=副詞、そう、その通りに、そのように。

も=強調の係助詞

 

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

 

まじき=打消推量の助動詞「まじ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

古くから仕えている者たちで、そのように離れて行くことができそうもない者たちは、来年(国司が交代する予定)の国々を、指を折って数えたりなどして、

 

 

揺るぎありき たるも、いとをかしう すさまじげなる

 

揺るぎありき=カ行四段動詞「揺るぎ歩く」の連用形、体をゆすって歩き回る。

歩く(ありく)=カ行四段動詞、歩き回る、うろつく。動き回る。

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

をかしう=シク活用の形容詞「をかし」の連用形が音便化したもの。趣深い、趣がある、風情がある。素晴らしい。かわいらしい。こっけいだ、おかしい。カ行四段動詞「招(を)く」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。

 

すさまじげなる=ナリ活用の形容動詞「すさまじげなり」の連体形、その場にそぐわず面白くない様子、興ざめだ。もの寂しい感じだ、寒々とした感じだ。

 

体を揺すって歩き回っているのも、とても滑稽(こっけい)で興ざめな感じである。

 

 

枕草子『すさまじきもの』まとめ

 

 

 

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