フロンティア古典教室

紫式部日記『日本紀の御局』解説・品詞分解(2)

      2016/07/01

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

原文・現代語訳のみはこちら紫式部日記『日本紀の御局』現代語訳(2)

 

読み書など、いひけむ物、目にもとどめ なり侍り に、

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形。もう一つの「し」も同じ。

 

けむ=過去の婉曲の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」。婉曲とは遠回しな表現。「~たような」と言った感じで訳す。

訳:「いった(ような)もの」

 

ず=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

※「候(さぶら)ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

(以前)読んだ漢籍などといったようなものには、目もとめなくなりましたのに、

 

 

いよいよ、かかること聞き侍り しか 

 

かかる=ラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

しか=過去の助動詞「き」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

ますます、このようなことを聞きましたので、

 

 

いかに人も伝へ聞きて憎むらむと、恥づかしさに、

 

いかに=副詞、どんなに、どう。「いかに」の中には係助詞「か」が含まれていて係り結びが起こる。

 

らむ=現在推量の助動詞「らむ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。基本的に「らむ」は文末に来ると「現在推量・現在の原因推量」、文中に来ると「現在の伝聞・現在の婉曲」

 

どんなふうに人が伝え聞いて(私のことを)憎んでいるだろうと恥ずかしくて、

 

 

御屏風の上に書きたることをだに読ま顔を 侍り を、

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

し=サ変動詞「す」の連用形、する。

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

御屏風の上に書いてあることさえ読まないふりをしていましたのに、

 

 

宮の御前にて、文書の所々読ま 給ひなどして、

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。ここでは、場所の意味で使われている。

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語がくると「尊敬」の意味になることが多いが、今回のように「使役」の意味になることもあるので、やはり文脈判断が必要である。直後に尊敬語が来ないときは必ず「使役」の意味である。

 

給ひ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

中宮(彰子)のおそばで、『白氏文集』のところどころを(中宮様が私に)読ませなさるなどして、

 

 

さるさまのこと知ろしめさまほしげに 思い たり しか 

 

さる=連体詞あるいはラ変動詞「然り(さり)」の連体形、そうだ、そうである。適切である、ふさわしい、しかるべきだ。

 

知ろしめさまほしげに=ナリ活用の形容動詞「知ろし召さまほしげなり」の連用形

知ろし召す=サ行四段動詞、理解なさる、知っていらっしゃる。お治めになる。

まほし=願望・希望の助動詞、接続は未然形

 

思し=サ行四段動詞「思す(おぼす)」の連用形が音便化したもの。「思ふ」の尊敬語。動作の主体である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

 

たり=存続の助動詞「たり」の連用形、接続は連用形

 

しか=過去の助動詞「き」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。

 

そういう方面のこと(=漢詩文などのこと)をお知りになりたそうにお思いになっていたので、

 

 

いと忍びて、人の候は もののひまひまに、をととしの夏ごろより

 

忍び=バ行四段動詞「忍ぶ」の連用形、人目を忍ぶ、目立たない姿になる。我慢する、こらえる。

 

候は=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の未然形、謙譲語。お仕え申し上げる、おそばにいる。動作の対象である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

※「候(さぶら)ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

ひま=名詞、すきま、油断。物と物との間。余暇。

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

たいへん人目を忍んで、(他の)人がお仕え申し上げていない合い間をぬって、おととしの夏ごろから、

 

 

楽府といふ書二卷をしどけな ながら教へたて聞こえさせ侍る、隠し侍り

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

しどけな=ク活用の形容詞「しどけなし」の語幹、乱れている、だらしがない、いいかげんだ。無造作である。

 

ながら=接続助詞、次の③の意味で使われている。

①そのままの状態「~のままで」例:「昔ながら」昔のままで

②並行「~しながら・~しつつ」例:「歩きながら」

③逆接「~でも・~けれども」 例:「敵ながら素晴らしい」

④そのまま全部「~中・~全部」例:「一年ながら」一年中

 

聞こえさせ=サ行下二動詞「聞こえさす」の連用形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

 

侍る=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連体形、丁寧語。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の終止形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

『楽府』という本二巻を、いいかげんではあるが教え申し上げてございますのも、隠しております。

 

 

忍び させ 給ひ しか 

 

宮(みや)=名詞、皇族。皇族の住居、皇居。ここでは皇后(中宮)である中宮彰子を指している。

 

忍び=バ行四段動詞「忍ぶ」の連用形、人目を忍ぶ、目立たない姿になる。我慢する、こらえる。

 

させ=尊敬の助動詞「さす」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

 

しか=過去の助動詞「き」の已然形、接続は連用形

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

中宮様も人目を忍んでいらっしゃいましたが、

 

 

殿も内裏気色を知ら 給ひて、

 

内裏(うち)=名詞、天皇。天皇の住まい、皇居。  ここでは一条天皇のことを指している。

 

気色(けしき)=名詞、様子、状態。ありさま、態度、そぶり

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である藤原道長と一条天皇を敬っている。作者からの敬意。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

 

(藤原道長)殿も帝もその様子をお知りになって、

 

 

御書どもをめでたう書か 給ひ、殿は奉ら  給ふ

 

めでたう=ク活用の形容詞「めでたし」の連用形が音便化したもの、みごとだ、すばらしい。魅力的だ、心惹かれる

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語がくると「尊敬」の意味になることが多いが、今回のように「使役」の意味になることもあるので、やはり文脈判断が必要である。直後に尊敬語が来ないときは必ず「使役」の意味である。

 

給ひ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。おそらく動作の主体である藤原道長を敬っている。作者からの敬意。

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

 

奉ら=ラ行四段動詞「奉る(たてまつる)」の未然形、「与ふ・贈る」の謙譲語。差し上げる、献上する。動作の対象である虫めづる姫君を敬っている。作者からの敬意。

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ふ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体である藤原道長を敬っている。作者からの敬意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語

 

(書家に)漢籍などを立派に書かせなさって、道長殿は(中宮様に)差し上げなさる。

 

 

まことにかう読ま 給ひなどすること、

 

斯う(かう)=副詞、こう、このように

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語がくると「尊敬」の意味になることが多いが、今回のように「使役」の意味になることもあるので、やはり文脈判断が必要である。直後に尊敬語が来ないときは必ず「使役」の意味である。

 

給ひ=補助動詞四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。おそらく動作の主体である中宮彰子を敬っている。作者からの敬意。

 

本当にこのように(中宮様が私に漢籍を)読ませなさったりなどすることは、

 

 

はたかのものいひの内侍は、聞かざる べし

 

はた=副詞、また、そのうえまた。あるいは、ひょっとしたら

 

彼の(かの)=あの、例の。「か(名詞)/の(格助詞)」と品詞分解する

 

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

 

ざる=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

 

べし=推量の助動詞「べし」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

また、例の口うるさい左衛門の内侍は、聞く事ができないだろう。

 

 

知りたら いかに そしり 侍ら と、

 

たら=完了の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が未然形なので④仮定条件「もし~ならば」の意味である。

 

いかに=副詞、どんなに、どう。「いかに」の中には係助詞「か」が含まれていて係り結びが起こる。

 

そしり=ラ行四段動詞「そしる」の連用形、人のことを悪く言う、非難する

 

侍ら=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の未然形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

 

もし知ったならば、どんなに悪く言うでございましょうかと思うと、

 

 

すべて世の中ことわざ しげく憂き物に侍り けり

 

事業(ことわざ)=名詞、(人間による)行い、仕業

 

しげく=ク活用の形容詞「繁し(しげし)」の連体形、わずらわしい。多い、たくさんある。茂っている。絶え間がない、頻繁である。

 

憂き=ク活用の形容詞「憂し」の連体形、いやだ、にくい、気に食わない、つらい

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手である読者を敬っている。作者からの敬意。

 

けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

すべて世の中の事はわずらわしく、つらいものでございますよ。

 

 

『日本紀の御局』まとめ 

 

 

 

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